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剣と魔法とステンガン ――ゴスロリなショップ機能(英国面強め)で目指せ優雅なスローライフ!――  作者: 石和¥
ダンジョンズ&ハンマーズ

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エスケープ

「魔力雲て、なに?」


 俺がヘイゼルに訊くと、ティカ隊長が首を傾げた。なんで知らんのだ、みたいな顔をされて説明に苦慮していたところ、優しいエルミがフォローを入れてくれた。


「ミーチャは遠いとこから来たから、こっちのことあまり知らないのニャ」


「ええと……ああ、そうなんだよ。うん、かなり遠くから流れ流れてな」


「道理で色々と変わったもんを出してくるわけだ」


「ヘイゼルちゃんと同じ、“ぷりぺん”ていう魔界みたいなとこの出身ニャ」


 ええと……俺の出身は、ちょっとだけ違うけど、まあ似たようなもんだ。

 ここで日本の話をしても混乱を広げるだけなので、微妙な笑顔で続きを促す。


「まあ、いいや。魔力雲ってのは、赤黒い雲だ。なんかの理由で尋常じゃない量の魔素が発生して、それが空に上がってできるらしい。狭い範囲の嵐みたいな暴風雨が起きて、その雨が降ったところでは変な草が生えたり、魔物が凶暴化したりする」


 そこまで話して、ティカ隊長はこめかみを指で押さえる。記憶を辿っているのだろうけれども、指鉄砲でロシアンルーレットでもしてるようにしか見えない。


「ああ、ヘイゼルが言ってた通り……二、三ヶ月ほど前か、この辺りの山に魔力雲は掛かったな。ゲミュートリッヒにも雨風は届いた。大した被害もなかったから、忘れかけてたが」


「その後に、おかしな人物が現れたりは?」


「ん? ……いや。アンタらを除けば、特にいないぞ? そんな報告も噂も耳にしてない」


「ハズレでしたか」


 魔素の大量放出はあったが、召喚によるものではなかったということか。雲を見ただけじゃ“外在魔素(マナ)”か“体内魔素(オド)”かの判別はできないらしいしな。さっきのダンジョンから溢れたマナによるものだとしたら、説明はつくような気はする。なんで溢れたかは不明のままだけれども。


「外に出た魔物どもが討伐されるか、おとなしくダンジョンに戻ってくれりゃ、あたしらが気にする話じゃないんだけどな」


「ここの状況は、大体わかったんだろ? いっぺん町に帰ろう。対策が必要なら手を貸すし、ギルドに行くなら送るよ」


「そこまでしてもらう必要はないぞ。衛兵隊の仕事だ。あたしか部下が馬で行くよ」


「最寄りのギルドは、サーベイさんの戻ってった町?」


「ああ。サーエルバンだ。小さい支部だけど、連絡用の魔道具があるからアイルヘルンの中央に伝言は頼める」


 親切心というよりも、ちゃんとした冒険者ギルドを見てみたかっただけなのだ。そこは口に出さず鷹揚に頷く。


「たぶん、エーデルバーデンのギルドと変わんないと思うニャ」


「え」


「ミーチャ、“ちゃんとしたギルド見たい”って顔に書いてるニャ。でもギルドは、どこも似た感じらしいニャ?」


 おう、バレてましたか。ガッカリした気持ちを隠して、とりあえず車を出す。

 ここは専門家の判断に任せて様子見だな。魔力雲が出て数ヶ月は経ってるってことなので、いますぐ大問題が発生するってこともなさそうだし。


「外堀と外壁を作って正解だったな。ミーチャたちがいなかったら、朽ちかけた木柵で守るしかなかったとこだったぞ」


「やっぱり、魔物は来るニャ?」


「そりゃあ、頂上からの景色を見たらな。あたしが魔物でも、ゲミュートリッヒは美味そうな餌場だと思う」


 ティカ隊長も、俺と同じ感想を抱いたようだ。

 町から見るこの山は遠くにある背景、地平線近くに広がる山脈の一部でしかなかった。でも空から見る魔物の視点では、町との距離はあまりにも近いのだ。


「冒険者ギルドに捻じ込んで、せめてレイジヴァルチャだけでも討伐報酬の支出を呑ませないとな。ゲミュートリッヒは、カネにもならん危険を延々と背負わされることになるぞ」


 話しているうちに、サーエルバンのある東部行きルートとの二叉路まで戻ってきていた。

 ティカ隊長がチラッと見て、顔を戻す。そうな。ゲミュートリッヒに戻って隊長が馬で出直して俺たちお留守番、て流れに大した意味はないのだ。


「行っちゃおうか」


「え」


「ヘイゼル、サーエルバンまでの距離はわかるか?」


「いえ、正確には。馬で三日、と聞きましたから……魔物の出る山道だと一日に二十マイルほどでしょう」


「概算で、三十の……九十と、六キロか。百キロないなら、陽のあるうちに行って戻ってこれる」


 俺はモーリスを東行きの道へと乗り入れた。

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