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剣と魔法とステンガン ――ゴスロリなショップ機能(英国面強め)で目指せ優雅なスローライフ!――  作者: 石和¥
ブリリアントな日々

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波乱含みの平常運転

 非常事態解除の鐘が鳴った。幸いにも、死者も怪我人も出さずに済んだ。避難していたひとたちも、無事それぞれの家や店に戻ったそうな。


「この町は、ずっと馬不足でな。助かった」


 王国軍から奪った馬車と軍馬は、衛兵隊長兼町長代理のティカ隊長に買い取られた。俺とヘイゼルに渡されたのは金貨二十枚。馬の確保は俺の功績ではないんだけどな。

 “報酬は参加者全員で平等に分配”がゲミュートリッヒの原則だそうなので、ありがたく受け取っておく。


「それとミーチャ、こっちは町の防衛に協力してもらった謝礼だ。すまん、前払いと言っておいて、そのまま戦闘になってしまった」


 追加で金貨十枚。金貨はすべてヘイゼルに渡す。DSDに入金すると計三十枚で百六十七万円強(一万二千ポンド)ほどになった。現在は総額一千万円強(七万二千ポンド)といったところか。

 ずいぶん増えたな。しばらく資金の心配はしなくて済みそうだ。


「アイルヘルンの金貨は、少し換金比率が高いですね。王国金貨は約四万六千円(三百五十ポンド)から約五万円(三百八十ポンド)でしたが、こちらの金貨は約五万六千円(四百ポンド)ほどです」


「混ぜ物が少ないのか」


「おそらく、これが本来の比率ですね。王国が傾くまでは、同一通貨として流通していたようですから」


 店の賃貸料は月に銀貨十枚。こちらの貨幣価値では金貨半分、現地感覚としては一万円ほどか。商業誘致のためだろう、えらく安い。

 ちなみに一般人が日常使用するのは銀貨が中心らしい。DSDで約五百四十円(四ポンド)にしかならない銀貨は大量に持て余していたので、こちらとしてもありがたい。


「さて、孤児院組の様子を見てから、エルミを拾ってもう少し店を回るか」


「手土産にクマパンさんを覗いてみましょう」


「いいな」


 最初に来たときは気付かなかったけど、ワーフリさんの雑貨屋の向かいに、こじんまりしたパン屋があった。看板は読めないが、たしかにクマの絵は描いてある。いまの時間は営業ピークなのか、店の周囲には焼きたてパンの良い匂いがしていた。


「こんちはー」


「いらっしゃい」


 五人も入ればいっぱいという感じの店内では、福々しい感じのクマ獣人女性が出迎えてくれた。ワーフリさんの母親だけあって、穏やかそうな笑顔がよく似てる。

 カウンターの向こう側に、いろんな種類のパンが彩りよく並んでいた。細長くて大きいバゲットみたいのと、惣菜パンのように見えるものが十種類ほど。サンドウィッチ的なものが何種類か。日本でよくあるトングとトレイ方式ではなく、お店のひとに頼んで取ってもらうようだ。


「美味しそうですね。少し多めにいただきましょうか」


「その大きなのひとつと、あとは全部ふたつ……いや、三つずつください。あと、この乳脂も」


「あら、たくさんありがとうね」


 お金を払うまでの世間話で、娘さんの店を訪ねたこと、八百屋さんの食堂で食べたここのパンが美味しかったことを伝える。

 これから集会所で暮らす孤児院組を訪ねると言ったら、手作りジャムをふたつおまけしてくれた。


「自分たちも商売を始めるつもりなんです。決まったら、ご挨拶に来ますね」


「それは良いねえ。新しいひとたちがいっぱい来てくれて、町の者はみーんな喜んでたんだよ。これから賑やかになるよ、ってね。町に子供が増えるのは、とっても良いことだよ」


 話してみると、ワーフリさんのお母さんはやんわり朴訥な感じのひとだった。

 ただ、なんかこう……ヘイゼルと俺が夫婦の前提で話している雰囲気を感じないでもない。失礼のない範囲での子作り推奨、みたいな。

 そんなん俺に言われてもな、って話でしかないのだが。だって、ホラ……アレだし。


「……たぶん、大丈夫です」


 店を出てすぐ、ヘイゼルがポソッと言った。

 いや、ナニが大丈夫やねん⁉︎

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