表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣と魔法とステンガン ――ゴスロリなショップ機能(英国面強め)で目指せ優雅なスローライフ!――  作者: 石和¥
新たな町へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/339

ボーイズんガールズ

「エルミちゃん、前方銃座(まえ)と変わってもらえますか?」


「わかったニャ!」


 ヘイゼルは自分の身長くらいある巨大なライフルを、後部銃座から外に出すつもりのようだ。絶対ぶつけるだろうと思ったが、すぐに嬉しそうな声が聞こえてきた。


「エルミちゃーん! 見ててくださいねー! ……これぞ英国ディス・イズ・ブリテン!」


 ドゴンと、強烈な発射音が響いてバックミラーの端に青白い火花が飛び散るのが見えた。銃火の色じゃない。魔導防壁とやらが弾け飛んだ光か。さすが対戦車ライフル(A T R)(現代でいう対物ライフル(A M R))だけあって、いかにも威力がハンパない感じ。

 そこから連続して四発。銃座からムッチャ幸せそうなヘイゼルの声が聞こえてくる。


素敵です(ラブリー)♪」


 いや、なにがやん。

 運転中の俺からは、何がどうなってるのか見えん。たぶん上手いこと行ってはいるんだろう。先行するモーリスC8の銃座で、こちらを振り返っているオクルとラクルが万歳みたいなポーズをしてる。

 俺は前部銃座に登っているエルミに、外の様子を尋ねる。


「スッゴいのニャ……“ぶれん”のタマは弾かれてたのに、ヘイゼルちゃん粉々にしちゃったのニャ」


 粉々? 何が? ホントどうなってんの?


 装填が済んだのか敵の配置が変わったのか、ヘイゼルの射撃が再開される。

 ほぼ等間隔で五発。バックミラーには何も見えない。余所見をしている暇もない。

 森を抜けて道がうねり始め、緩い登り傾斜がつくと同時に石が混じってグリップが悪くなっていた。速度を緩めるわけにもいかないので、アクセルを踏み込んで無理矢理に突き進む。

 前を行く二台のモーリスも時折リアをスリップさせながら強引に走り続けている。その間にも後ろではヘイゼルの射撃が続く。


「ああ、最低(ルァビッシュ)! もうちょっとだったのに……!」


 合計二十発も放っただろうか。ヘイゼルが不満そうな声を上げる。どうやら追撃者を仕留め損ねたようだ。


「すみません、装甲馬車に逃げられました」


「え、他は倒したの?」


「はい。馬車以外は一撃で」


 ボーイス対戦車ライフルの弾丸は装甲馬車の外殻も貫通させられたらしいが、装甲内部にいる御者を仕留めきれずに最後は逃げられてしまったのだとか。

 あんだけ撃ってもなかのひとに当たらないって、箱に剣刺すマジックかなんかか。


「ヘイゼルちゃん、スゴかったのニャ……。パーンって、当たった兵士が甲冑ごとバラバラになってたニャ」


 なにそれグロい。


 対戦車ライフルの活躍シーンちょっと見たかったけど、そんなら見なくてよかったわ。

 ヘイゼルの説明によれば、.55口径(13.9×99mm)のボーイズ弾は、超ロングセラーのブローニングM2でも使われる.50口径(12.7×99mm)重機関銃弾を口径拡大したものだ。威力は.303ブリティッシュ小銃弾の八倍ほど。

 そらバラバラにもなるわな。


 坂の頂上まで行くと、視界が開けた。

 進む先の平地まで、高低差は十数メートルほどか。丘というにも微妙な高さだが、広がる森にさほど高い木がないのでかなり先まで見通せる。

 とはいえ見渡す限りの森以外、なんもないけどな。


「……じゃぁ……!」


「エルミ、いま爺ちゃん、なんて?」


「“あれがゲミュートリッヒじゃー”って、言ってたのニャ」


 あれがーって言われても俺の視力ではわからん。地平線近くに一部だけ低い、森が欠けている場所があるようだが……町がどうのというほどディテールがわかるわけもなく。


「あそこまでの距離、どのくらいかな」


「だいたい十キロ弱(六マイル)くらいでしょうか」


 思ったより近い。もう、そんなに来てたか。途中の追撃でスピードアップしてたからかな。


「直線距離ですから、道を行くとたぶん二、三倍ありますよ」


 ですよねー。

 しかも目の前の森は、王国との緩衝地帯になってるくらいで魔物の数と強度がエグいらしい。

 俺は、もうひと踏ん張りと気を引き締める。楽園まで、もう少しだ。

【作者からのお願い】

「面白かった」「続きが読みたい」と思われた方は

下記にある広告下の【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります。


参考画像:ボーイズ対戦車ライフル(手前はリー・エンフィールド小銃)

挿絵(By みてみん)

左がリー・エンフィールド小銃の弾薬で、真ん中がボーイズ対戦車ライフルの弾薬

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 物語は大変面白いのですが、ルビが多すぎるのが読み辛いです。 読み方自体の説明とか、台詞間の文章にたまに解説として付いているのならともかく。実際の人間は一度に2つの単語を発したりはしない…
[良い点] ヘイゼルちゃんがいい味出してます。 外から見た英国人のイメージというのがうまく表現できていて狂言回しにぴったり。 またちょっと距離をおいたブラックジョークっていうのも物語の世界観にあってい…
[一言] ディスイズ・ブリテン!いいですねボーイズライフル!ブレンガンとこれがあればあとはもう熱い紅茶とビスケットを手に入れるだけでどんな世界でも英国的生活を実現できるはずです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ