表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣と魔法とステンガン ――ゴスロリなショップ機能(英国面強め)で目指せ優雅なスローライフ!――  作者: 石和¥
新たな町へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/339

岐路

「騎兵? 正面から?」


「はい。見えませんか」


 見えん。騎兵どころか影も形も。

 いま見えているのは、ふたつ目の丘までだ。あの丘の向こうとかじゃないだろうな。東に折れる道で大軍が待ち構えているとしたら厄介だ。


「彼我の距離は……一・四マイルといったところです」


「何キロ?」


「約二・二五」


「見えるか!」


 地平線に向けて緩やかに波打つ道は見えていても、そんな遥か彼方にいるとしても視認できるわけがない。二キロ超って、ほぼ地平線じゃねえか。


「どうされますか」


「どうもしない。相手の射程に入るまでにモーリスが分岐点を抜けられれば良い。あとは俺たちが……」


「ミーチャさん」


 潜められたヘイゼルの声に気付いて振り返ると孤児院組が涙目で震えていた。子供たちを宥めようと必死なシスターふたりも顔は青褪めている。


「あ、ごめん。わかんないよな、この乗り物は丈夫で……」


「「「きゃああああぁ……ッ!」」」


 悲鳴を上げた子供らが指差す先に視線を戻すと、山なりで飛んできた何かが車体を掠め派手に土を撒き散らした。


「お?」


 余所見してる場合じゃなかったようだ。危ない状況ならヘイゼルが警告してくれると思って気を抜いてた。


「すまん」


「問題ありませんよ。超長距離の攻撃魔法です。土魔法の砲弾を風魔法で飛ばしている混成魔法(ハイブリッド)


「魔法って、二キロ以上先から届くのか」


「ええ、届くだけなら。減衰がひどいので威嚇以上の意味はありませんね。狙いだけなら悪くない腕ですが……」


 ヘイゼルがヴィッカース重機関銃を短く二連射すると、空中にある魔法の砲弾が弾けて火花を散らす。


「そのくらいの曲芸(パフォーム)ならば、こちらでもできます」


「助かる。可能なら事前に防いでくれ」


 俺はサラセンを加速させる。この際、乗り心地は二の次だ。敵が見える前に曲がり角まで到達してやる。

 ふたつ目の丘を登り、頂上まできたところで停車する。少し傾斜のある坂の先に大岩があった。犬に似てるかといわれるとリアクションに困るが、そこはどうでもいい。

 岩の陰に、東へと伸びる道がある。それ以外のことはスルーだ。


「爺ちゃんたちに、先行するように伝えてくれ」


「了解です」


 後部座席の孤児院組に少しでも安心感を与えようと、岩陰に車体後部を隠す形で停車。銃座からはヘイゼルが身振りで伝えているのが見えた。


「そのままー! 行ってくださーい!」


 二台のモーリスC8が分岐を通過した。南側から迫っているらしい騎兵の姿は未だに見えん。最初の攻撃を凌いで以降、敵からの追撃はなかった。


「距離は詰めてきてる?」


「いえ、一キロ半ほどのところで足を止めました。こちらの武装と防御が難物とわかったのかもしれません」


「エルミ!」


「はいニャ?」


「これから俺たちも東に向かう。後ろから追ってくる敵がいたら教えてくれ。攻撃魔法が来る可能性もある」


 車体を回して分かれ道に向かおうとしている俺を、エルミとヘイゼルが不思議そうに見る。銃座から車内を覗き込むほどのこと、いったか?


「教えるのは、わかったニャ。でもこの……“さらせん”なら、騎兵が持てるくらいの武器じゃ効かないのニャ」


「エルミちゃんの言う通りですね。タイヤ以外なら攻城兵器でも耐えられますから」


 さいですか。俺はともかく、孤児院組がホッとしたみたいなので良かった。


「あいつらの討伐対象はエーデルバーデンだろ? こっちへの追撃はあると思うか?」


「理屈で言えばノー、ですが……こちらの権力者や支配層は理屈で動かないです。上は王から下は末端兵士まで、自分の権威や暴力の及ばない相手には執拗に向かってきます」


「十中八九、追われるって感じか」


 溜め息まじりな俺の笑いに合わせて、ヘイゼルは楽しそうに笑った。


「残り約百キロ(六十二マイル)の一本道、逃げ切ればこちらの勝ちです」

【作者からのお願い】

テンプレベースで恐縮ですが、「面白かった」「続きが読みたい」と思われた方は

下記にある広告下の【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります。

そして、並行してる拙作数本のどれが求められているのか知る指針にもなります。


お手数ですが、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 時速48km 馬のほぼ全速なら出るけど 多分、すぐに息上がりそう… よく騎馬で迂回して奇襲なんて表現あるけど 替え馬ないと基本は出来ないのよねぇ… ましてや 燃料さえあれば延々と走れるのを…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ