表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣と魔法とステンガン ――ゴスロリなショップ機能(英国面強め)で目指せ優雅なスローライフ!――  作者: 石和¥
ウォーター・アンド・ドラゴン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

317/339

農害の意地

「おう、ミーチャ。この前は大変だったみたいだな」


 エルヴァラから戻った何日か後、俺が自分の店に顔を出すと酔っ払いのオッサンと爺ちゃんたちがテキトーな感じに労ってくれた。あの水神騒ぎね。たしかに大変ではあった。日帰りだったってのに、えらく長い旅だった気がする。

 サーエルバンからエルヴァラに飛んで、マルテ湖まで戻ってまたエルヴァラ。しかも行く先々で顔つき合わせたのは農害、農害、アンド農害だ。

 おまけにこっちは水龍(ドラゴン)薙ぎ倒し&英国的悪夢(ドラゴンみたいの)が揃い踏みだったからもう、疲れたというか単純に気疲れした。

 働きたくないでござると、しばらく店を休んでしまった。そのせいで本日は大入り満員、休業してた間の分まで呑んでやろうと酒飲みたちがひっきりなしにやってきている。


「まあ、一件落着ってとこじゃな」

「じゃな……ってエインケルさん。なんでいるの?」


 ゲミュートリッヒの飲兵衛たちに混ざって、マカ領主がふつーにベロンベロンになっとる。アンタあの後ちゃんとマカ(ウチ)まで送り届けたじゃん。


「そう固いこと言うな。こやつも大変だったんじゃろ?」


 並んで飲んでた鍛冶屋のパーミルさんが、エインケル爺ちゃんの肩をぺんぺんと叩く。

 それはそうだけどさ。主に大変だったのも頑張ったのもマルテとナルエルだけどな。爺ちゃん以上になんにもしてない俺にとやかく言えた話ではないが。


「水龍の嬢ちゃんは、マルテ湖(すみか)に帰ったのか」

「マカの帰りに送ってきましたよ。アーエルの避難民がマルテ湖畔(アクアーニア)に移住することになったら、たまには顔を出すとか言ってましたが」

「それは心強いのう」


 たしかに。移住希望者は武力を持たない住民がほとんどだけど、湖畔で水龍と友好関係にあるなんて、最強の守り神みたいなもんだ。


「それより、聞いたかミーチャ」

「ん? なにを?」

「タリオは、あれをずっとつけとるそうじゃ」


 エインケル翁は、首から下げるジェスチャーを見せる。

 なんとまあ、ナルエルお手製の魔力供給用ネックレスか。装着した者が魔力を注げば、水源地の魔珠から水が出る。いままで龍脈から流れ込んでいた在外魔素(マナ)を……いわば搾取して水に変換していたエルヴァラ領主のタリオが、心を入れ替えたか。

 そんなわけねえよな。うちのドラゴンガールズの脅しが効いたか。


「人間の魔力で作った水なら、“エルヴァラ病”は起きん。さすがに前ほどの水は出せんじゃろうが、あの騒動は、そもそも己の器に合わんもんを持とうとしたせいじゃからの」


 今後エルヴァラの農業生産に影響が出たとしても、それが本来あの領地で生み出されるはずのものなのだ。いままでの状態が異常だっただけ。それを放置してきた結果が、水に溢れた領地で領民が渇き死にするなんて大惨事だ。

 やっぱり、あれは農害による人災だな。


「水龍の嬢ちゃんと、ヘイゼル嬢ちゃんと、ナルエルと。どうにもならんくらい(こじ)れておったもんを、それなりに上手いところへ落としたんじゃないかの」

「かもしれませんね」


 俺にはどうしたらいいかもわかんなかったし、それ以前に、なにがどうなってんのかも理解できてなかった。マルテとナルエルは神を祀る聖廟からの搾取を止めて、おそらくは祟りも止め、タリオ個人の問題として切り離した。

 あとは、あいつとエルヴァラの問題だ。


「あの首飾りをつけてたって、死にはしないんでしょう?」

「タリオも魔力量はそれなりにあるからのう。しかし、水を出すためにずいぶんと励んどるらしいぞ?」

「へえ」


 正直、“へえ”以上の感想はない。あいつが頑張って水資源を維持したとしても、逆に干からびて死んだとしても、それは同じだ。


「タリオだけではなくエルヴァラの部下たちのなかにも、あれを首から下げ始めたやつが出てきとるそうじゃ。どこまでやるのかも、やれるかもわからんがの」


 ウィスキーをグビッとあおったエインケル翁は、誰に言うでもなくつぶやいた。


「奇人には奇人なりの、譲れんもんがあるんじゃろ」

【作者からのお願い】

「面白かった」「続きが読みたい」と思われた方は

下記にある広告下の【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
タリオを引っ張りすぎでは。。 これまで対話できない連中は問答無用で排除してきたのにタリオ達だけ毎回執行猶予(但し執行されない)で許されるのは釈然としません
[一言] 濃い1日でしたね。 水の魔力、忠告されていたとはいえ領民に押し付けない辺り農害らしいですなあ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ