ドラゴンずクエスト
「これがやりたいのニャ」
「うム、ワタシもだ」
「えええ……」
せっかく冒険者になったんだから、ひとつくらいクエスト受けてみようか……という流れには、なったけどさ。
よりによって“ダンジョンでの魔物討伐”、討伐対象がマーダーキャサワリって。君ら、なんでいきなりそんな高難度クエストを受注する。
「エルミちゃんが二級だから、パーティでの受注に問題はないですが……」
「問題あるよ。なんだその無理ゲー」
「むりげ?」
アマノラさんは困惑しつつ止める気はなさそう。
ふつうは死を覚悟するようなアンデッドの群れを、俺たちが砲撃で木っ端微塵にしたせいで誤解してる。
俺たち個人の戦闘能力は、アマノラさんより下だってことを。彼女は、引退したとはいえ元冒険者の人狼だ。格闘はもちろん索敵や討伐の能力も、少なくとも俺は彼女より完全に劣る。
銃を持ったら攻撃力こそなんとか上回るけれども。防御も移動も回避も、この世界じゃ雑魚オブザ雑魚だ。
「俺は留守番してるよ」
「「「ええぇー!?」」」
「いや待て、エルミとマチルダはともかく、なんでアマノラさんまで不満そうなん!?」
「そりゃそうです、ゲミュートリッヒの陰の実力者と噂されるミーチャさんの実力も見たいじゃないですか」
「どこ発の噂だよそれ!?」
俺はただの酒場店主だっつうの。できれば働きたくないし、戦うのなんてもっとイヤだわ。
「マーダーキャサワリって、馬鹿デカいヒクイドリだろ。人喰いの。あれ自体も群れるから危ないし、あいつの生息域にはワイバーンもいるんだよ!」
「詳しいですね」
「ミーチャはワイバーン仕留めたのニャ」
「うム、二頭もだナ。そレも、ひトりでダ」
「素晴らしいです♪」
お前ら、余計なこと言うな! アマノラさん超ワクテカ顔になってんじゃねえか!
「じゃあ大丈夫ですね」
「大丈夫じゃねえよ、あんときムッチャ死にかけたんだぞ!?」
「いまでしたらギルド開設記念で素材も高価買取となっております」
「スルー!?」
高価買取なのはアイルヘルンの中央がゴタゴタしてるせいで、戦需物資である魔物素材が高騰してるからじゃないかと思うんだけど……そこはツッコまんでおこう。
半分以上は俺たちが原因でもあるしな。
「大丈夫ですよ、ミーチャさんなら」
ずっと黙って聞いてたヘイゼルが、穏やかな微笑みを浮かべる。
うん。その自信満々な感じ。逆にまったく大丈夫な気がしない。
「今回はみんなで行くのですから、問題などありません」
まあ、最悪ヘイゼルがいれば、どうにかなるような気が……しないでもない。その結果がどういうものになるのかが不安だけど、それはいまから考えてもしょうがない。
なんにしろダンジョンの魔物を溢れないように調整する必要はあるんだしな。そのための冒険者ギルド誘致だ。ゲミュートリッヒの住民も魔物の討伐には慣れているだろうが、ほとんどのひとがダンジョンの経験はない。早い段階で、いっぺん危険性を調査しとくのもアリかもな。
「……わかった。そんじゃ、受けるよ」
「ありがとうございます♪」
始まる前からホクホク顔のアマノラさんに受注の手続きをしてもらって、俺たちはダンジョンに向かうことになった。
「みんな、行くからには万全の態勢で挑むぞ。俺は飛べないし、走るの遅いし、防御もペラッペラの紙装甲だしな」
「問題ありません」
だから、あなたの不敵な微笑みが逆に不安を誘うねんて!
「賢明なる先人も言っています。“何よりも優先すべきは武装である”と!」
ヘイゼルさん、シレッと誤訳してるけど違うよね!? マキャベリのそれ、Be Armedは“軍備を整えましょう”だよね?
【作者からのお願い】
週末はエラい多くの方に読んでもらったみたいで、ありがとうございます。
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