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メロンソーダの上昇効果

作者: そらひま

やる気が起きない。

普段から別にやる気に満ち溢れているわけではないが、むしろ楽しいときすら「楽しみなよ」などと言われてしまうほどに表情筋のやる気が見当たらないわけだが、当社比やる気がない部類になる。

作業を変えてみたり、立ち上がってみたり、コーヒーを入れたり、少ない会社内での気分転換を試みるがどうにもならない。いっそ熱でも出てればよかったのにばっちり平熱。もちろん体はだるいが、この倦怠感は風邪などの類でないことくらいはわかる。特別納期が迫っているわけでもないのもよくない。やる気があろうとなかろうと関係ない、という追い込み案件でもあれば嫌々作業を始めるしかなかったのに。そんなもん作りたくないが。

納期が迫ってないからとはいえ仕事がないわけではない。暇なときに消化しておくものはそこそこにつみあがっている。これを今日捌かなければ月末の私に恨まれてしまう。とはいえ私よ、わかるだろう、気合が入らないのだ。

どうにもできないだるさを持て余しながらコーヒーを飲み続けていると、私と相反してコーヒーはしっかり仕事をしてくれる。利尿作用である。立ち上がることすら億劫になってきたが、やる気のなさで人権を無くすわけにもいかない。気合の足りないのろのろとした動きでトイレへ向かった。

せっかく立ち上がったわけだし炭酸とか刺激の強いものでも買うか。自販機へ足を向けると先客がいた。

「おつかれさまでーす」

「おう」

同じ部署の上司、久藤さんだ。直属ではないため二人きりはなかなかない。なんとも話題探しに困ってしまう距離感。

「山岸は何買うんだ?」

「なんか炭酸がほしいなーって程度できめてないです」

「ぼんやりしてんな」

「眠くて」

「あんなにコーヒー飲んどいてか」

「コーヒーは眠気を飛ばしますがやる気はくれないんですよ。やる気のなさにはカフェインも負けるみたいです」

「じゃ、これ俺のおすすめだから飲んでみろ」

ピッと勝手に何かを買ってくれた。

「わ、ごめんなさい、マジでそういうつもりじゃなかったです」

「いいよ、偶然ラッキーって思っとけ」

「ありがとうございます」

そうして手渡されたのがメロンソーダ

「なんか懐かしいもの買いましたね」

「そうか?俺よく飲むぞ」

「ドリンクバーとか、フロートとかのイメージしかないんですが」

「俺もその程度」

「え、先輩ドリンクバーメロンソーダ飲むんですか」

「おいしいじゃん」

「いやまあおいしいですけど」

20代後半の成人男性がファミレスでメロンソーダ飲むか?

「フロートもテンションあがるだろ」

「まあそりゃそうですが」

「おれは缶詰のサクランボがあるとテンション爆あがり」

「かわいいこと言いますね」

「なんだよ悪いか」

「いえ、いいと思いますよ」

意外なだけで。

「フロートがかわいい店が近くにあるんだよ。昼時間あるか?あったら奢るから行こう」

「奢っていただけるならどこでも大丈夫です」

「現金な奴だな」

えらい上機嫌な先輩と話していたら、お昼までに書類チェック終わらせよう、なんてやる気が出てきた。

時間ピッタリに席を立ってやろう。


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