第34話 〜やっぱりイケメンって違うな〜
「いった……」
電車で誰かと喋るのも嫌だ。そもそも、こんなに濡れてるところ見られるのは最悪だ。
だから私は歩いて帰ることにしたけど、雨は強く、私の体は冷えどんどん気持ちがナーバスになっていく。
「花火……」
思い出されるのは花火との記憶、花火と一緒にいたこと。
何かが違っていたら結果は変わっていただろうか?
胸が痛い、そもそも断れることは検討はついていた。だけども持ち前のポジティブ思考で大丈夫だと思った。
ダメな時はとことんダメだ。今もさっきも学校を飛びしだした時に転んじゃった。
膝から血が出ている、痛い痛くて辛い。
行き交う人達は私をどう見えてるだろうか?
行き交う車に乗ってる人は私をどう見ているのだろうか?
そんなことを考えるだけで羞恥心が出てくる。私は私の知ってる限りの、車も通らず人気が無い所の道を歩くことにした。
だけど、やっぱり人は歩いてくるもんで前から兄妹かな? 2人が歩いてきている。
私は小走りでその横を通り過ぎようとしたが——
「そこのお嬢さん、大丈夫かい?」
思わず私のことを言われ性格柄立ち止まり、傘をさしながら歩いている兄妹を見て、止まってしまった。
小さい女の子と背が高く顔がかっこいい多分年上の男の人。
かっこいい男の人は声が美声で何故か落ち着くような声色、そして小さい女の子は私より断然可愛らしく心配そうな目で2人とも私を見てくる。
まあ、それはそうだよね。こんなにびしょ濡れで膝から血を出していたら親切な人は声をかけてくるもんね。
「傘を忘れてしまって歩いて帰ってるんですけど、もう少しで家に着くので大丈夫です」
「でも、膝に生々しい擦り傷があるじゃないか。僕達の家はすぐそこだし寄っていくといいよ」
優しい声色で答える、かっこいい男の人だけど……そんな急に他人の人の家に行くなんて怖いし、怪しいし、迷惑だし、そんな気持ちがいっぱい出てくるけど、この男の人の声を聞くと心が休まる気がしてくる。
優しくて、今の私の心を温めてくれる。
だけど———
「本当に大丈夫です」
断ってしまった。いや、これでいいんだ。私は今は誰とも関わりたくない。
「そうかい? そんなに言うなら大丈夫か」
「…………兄さんはそんなに心のない人だったのですか? 膝から血が出ている人を放って置くなんて……」
「うっ……まぁそれもそうだけど……。お嬢さんやはり家に来るといい家は本当にすぐそこだから」
…………ちょっと笑ってしまった私がいた。
怪しいと思った2人だけど、こんなに優しいなら行ってもいいかなとか思ってきてしまっている。
何故だろう? さっきまで人といるのが嫌で、5秒前も断ったばっかだけど、この2人にはなにか感じるものがある。
この2人の優しさに甘えたくなってしまっている。
「じゃあ遠慮なく行かせてもらいます」
「そうか、じゃあ雪。彼女に折りたたみ傘を」
◇◇◇◇◇
「ただいまです」
「ただいま」
「お帰りー。雪、兄ちゃん……と……ひっっっっ!?」
私の家より断然大きくて、家に入ってみると内装も整っている玄関。そこに私の濡れている服の水がぽとぽとと垂れるのが申し訳ない気持ちになっていた。
その時に部屋から出てきた男の人が悠長に喋ってると思ったら凄く私に驚いて奥に行ってしまった。
「あ、朱雨って人だ」
一瞬見ただけで分かったけど、ここは最近花火と仲がいい朱雨くんの家だったんだ。
だけど、こんな奇跡あるんだな〜…………
っとういうかまた花火のことを思い出しちゃって心が鬱になりかけてる。
「ごめんね、僕の弟は物凄く人見知りなんだ。それはさておき、さぁ上がってまずはお風呂に入ってきた方がいいね。傷は染みるだろうけど風邪を引いてしまうからね」
「いや! そんなに悪いですよ!」
「そうか……僕としたことが人の家のお風呂なんて嫌だよね。じゃあ雪、脱衣所からタオルを持ってきてくれるかい?」
「いや嫌なんてことはないんですけど。私ってそういうこと気にしないですけど……」
「だったら入ってきた方がいい」
◇◇◇◇◇
結局、タオルで軽く体を拭いてお風呂に入ってしまっている。でも、このお風呂全体が大理石出できていて、本物かは分からないけど……だけど、このお風呂がすごく綺麗ですごく大きくてビックリしている。
これが金持ちの家なんだな〜っと思っていると——
「波さんここに服を置いておきますね」
「う、うん! ありがと雪ちゃん!」
雪ちゃんの可愛らしい声が私の心の中を浸透してくる。この家に来てから何故か不思議で、フラれたショックはあるけど……そんなに辛くなくなっている。
やっぱり、私は人と関わる方がいいんだな〜っとか思いながらこのお風呂を満喫した。
◇◇◇◇◇
お風呂から出た私は高そうな服を着て、雪ちゃんにリビングで手当されている。この服は誰の服なのかな? ……胸の部分がブカブカなのが気になるけど、それよりもお風呂に入っていた時も思ったけど、あんなに豪華なお風呂で私の汚れを流してもよかったのかな?
うーーん、今度お菓子でも持ってこよう!
「年下に手当されるなんてなんか変な気分、妹ができたみたい」
「それはこちらも一緒です。私もこんな可愛い姉が欲しかったです」
「あはは、そんなこと言われると照れるな〜」
雪ちゃんは本当に丁寧に傷を手当してくれている。しかも、私をお姉ちゃんって……抱きつきたい!
うん、ずっと思ってたけどこんな可愛くて、小さいぬいぐるみみたいな子を抱きつきたいと思うのは不自然ではない!
しかも、私より器用で……多分、勉強も出来て学校では人気者なんだろうな〜。
ってかそもそも、この家のリビングがすごい広い! しかも、私の座ってるソファーがふわふわずすぎる!?
「終わりました、完璧に手当できたと思います」
「ありがとー、雪ちゃんー」
「いえいえ、当たり前のことをしたまでです」
何から何までお世話をしてもらってなんかちょっぴり……いや大分嬉しい私がいる。
あんなに鬱になって気持ちだったけど凄い和らいだ。
普通だったら泣いて喜ぶけど涙は枯れているからもう出ないや。
「波さん、少し話してもいいかな?」
一息ついたとき、雪ちゃんのお兄さんがリビングに入ってきて私が座っているL字のソファーに座る。
こう見るとお兄さんはすごくかっこいいけど、なんか衰弱している気がする……。頭に帽子も被ってるし、なんかの病気を患っているのかな?
「では、私は朱雨お兄ちゃんを見に行ってきますね」
雪ちゃんはお兄さんの気持ちを汲み取ったのか気を利かせてリビングを出ていってくれた。こんなにかっこいい人に何を喋られるのか少しドキドキしてお兄さんの顔を見る。
「さっきの僕の弟のことは知っているかい?」
「あ、はい。知ってます、最近花火……私の親友と仲良くしてる男の子っていう認識でしかないんですけど……」
「知っているのかい、なら話が早い」
お兄さんは私の瞳を見る。お兄さんの綺麗な白色の目を見て私は緊張で心臓が飛び跳ねる。
「弟の恋のサポートをしてくれないかい?」
「へ?」
◇◇◇◇◇
「本当にありがとうございました」
「今度は転ばないようにね」
「はい! 雪ちゃんもバイバイ」
「はい、またいつか」
波と”朱雨”が一緒に家を出て行った。その後ろ姿を見て僕は笑みを零してしまう。
「どうやって波さんを説得したんですか?」
「簡単だよ、朱雨と一緒に居ることで得るものを教えてあげただけだよ」
「おもしろいですか?」
「面白い、実に面白い」
「はぁ、何が面白いか全く分かりかねます」
波さんという不確定要素の多い天真爛漫の子を朱雨の恋愛へ参加するということで過激なスパイスとなるか、それとも……
「あー面白いな〜」
ブックマークとかを頂いたら犬三郎ってやつは喜びます。
例えるなら、ブックマークが1つ増えたらここに一発芸を1つ披露する
ってぐらい喜びます。
まあそんなことはどうでもいい
この文字数で毎日投稿したいなって思ってるんですけど……きついな〜。
今年は自分を追い込むという枷を付けたんで。




