乗り込み
「やっぱり転生してきたのね?」
エリザベスがそう聞くと転生した男は頷いた。
「でも何で?」
「俺は前世でも暗殺家業だったからさ、まぁ、最後はある命を助けたいと思い、助けたがな……」
「で、その助けた命の相手が近くにいると?」
「!?、あ~ー、そうさ……」
男はうなだれたまま、狐を見た。
「さっ、殺すなら殺せ…… だがあいつを殺したら許さねぇ!」
「殺しはしないけど、あなた達二人、いえ、一人と一匹は私の店で働いて貰うわ♪」
「はっ?」
近くにいたケロベロスも驚き、あたふたしているがその行動はどこか可愛げである。
「マッ、マスターそれはやめた方が……」
「大丈夫だと思うよ? ほら」
エリザベスがケロベロスに暗殺者の男を見るように指を指すと……
「あっ、アイツと一緒に人を殺めずに、くっ、暮らせるのか……」
「暮らせるわよ♪ さぁ、どうする?」
男は何か言おうとしたり考えたりしたがエリザベスが微かに聞こえる小さな声でだが、「俺だけで決めてもアイツがどう思うか……」と呟いた。
エリザベスはなら連れて来ましょうかと言わんばかりに、口笛を吹くと、キナシが縄で両手を結ばれた狐を連れてきた。
「なんの用だい?」
狐は皮肉を込めて鼻で笑うかのようにエリザベスに聞いた。狐はキナシによって男の隣に座らせられた。
「あんたの隣の男、どこかで見たことない?」
「無いに決まってるでしょ?」
「言い方を変えるわ。あなたの思い人でしょ?」
狐は不思議がったが、エリザベスが言ったことが徐々に分かってきたようで、息が荒くなってきた。
「あなたはこれからその男と一緒に私の店で働いて貰おうと思うけど、どう思う?」
エリザベスがそう言うと、狐は早口でだが「働く!」と言った。
男もどこか嬉しそうだった。
「ならとりあえずこの件は済んだわね…… さて、暗殺を指示したのは誰?」
エリザベスは再開が嬉しく、場所と状況を考えずに濃厚なキスをしあっている狐と男に聞いた。男はキスをやめると「私達の拘束を解き、紙と羽筆、インクをくれ」と言った。
エリザベスは無限収集能力から言われた通りに紙と羽筆、黒インクの入ったインク瓶を取り出し、一緒に取り出した小型かナイフで縄を切り、拘束を解いた。
「あんたの店の近くの大通りのここにこう言う看板が書いてあり、部屋がこんな感じに仕切ってある。 それと警備の位置も書いとく」
「そこまで教えてくれるの?」
「根を絶てばこれから追われる心配もないからな……それに俺とこれの履歴等は任務前に隠蔽し、廃棄して来たから問題はない」
男の仕事の早さに驚いたエリザベスだったが、
「なら大丈夫ね……キナシはこの二人と一緒に店に帰っててね」
「わかりました!」
「「よろしくお願いいたします」」
キナシの後を手を繋ぎながら幸せそうな出来立てホヤホヤの『リア充』を見ながらこれからやる事を考えていた。
「キナシ帰したけど、警備にあたってる人数をこの警備位置からして少なく見積もってもケロベロスと俺だけでやるなんてなぁ……」
ケロベロスはまだ気絶している暗殺者達を見張ってる事を確認してから呟いた事だが、ケロベロスにはちゃんと聞こえていた。
「 (ちょっと口の悪いマスターも妙に似合う……) 」
ケロベロスは内容なんてどうでもいいかの様に滅多に聞かない口調に酔い浸っていたが、これからどうするかは一応考えていた。
暗殺者を人気のない太い木の下の一ヶ所にまとめ、木にキツキツに縛り直し、一日は起きれない催眠魔法を掛け、エリザベスの所に向かった。
「残りは当分起きれないようにしましたよ」
「えっ? あっ、暗殺者を縛り付けた所に私も連れて行って」
「りょっ、了解です……」
ケロベロスは自分が主人の所に使うためにした事を案内しながら恥た。
「瞬間運搬!」
エリザベスは思い浮かべた所に物や人を瞬間移動させる中級魔法を木に縛り付けられた暗殺者達と太い木を『迷えるダンジョン』に送るため使った。本来人を移動させるときは魔法壁を使うのだが、使わないと二日酔い並みに頭痛を起こしたり酔ったり、最悪キラキラしてまう。
「さてと、これから敵の本拠地に向かうけど大丈夫?」
「大丈夫ですよ!!」
エリザベスとケロベロスは、絶賛キナシに案内されている若い元暗殺者に貰った地図を頼りに本拠地に向かう。