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暗殺者

ショッピングをしに来たエリザベスとキナシ、シンナリンは城下町の市場に来た。


「マスターは何買われます?」


キナシはそう質問した。


「私は…… う~ん……」


エリザベスが困っていると、シンナリンがキナシに後ろから近づくと、


「多分マスターは、何も買おうと思っていない……」


そうキナシの耳元で主であるエリザベスを助けようとボソボソと耳打ちした。



「あっ、いや、その~、マスター無理して言わなくていいですよ~……」


キナシは苦笑いで小声だがエリザベスに聞こえるように言った。

エリザベスはそう言われると、立ち止まった。


「別にむっ、無理なんてしてないよ!? えっと! そう、服買うよ!」

「えっ? あっ、そうですね! 服買いましょう!!」


キナシは何が何なのかわからないまま、テクテク歩くエリザベスとシンナリンについっていた。

しかし、キナシだけではない者もついてきていた。

ことは、彼女達が朝食を食べる5時間前にさかのぼる。

……、………、……………


「おい、準備は済ませたか?」

「準備しました! しかし今回の依頼は驚きですね……」


40代後半とは思えない無駄のない協力を持った体格の良い士官学校卒業の男前の少尉が20代半ばの最近軍曹に昇格した若手が話していた。


「あぁ、まったくだ…… まさか賢者以上の力を持つ『化け物』の始末とはな……」

「しかし、なぜそんな奴の始末なんかを……」

「確かにそうだな…… だがこの業界にいたら恨みや嫉妬、政治のために何人も殺ることあるぞ? 多いと業火の最大攻撃魔法で街ごと大量虐殺だ。」


少尉は苦笑いをしながら答えた。


「はぁ…… でもそうですよね……」

「でも、この業界でいいことは給料がいいことだな」

「ですね♪」


若い軍曹から返事を聞くと、軽く手を振って少尉は『狐店』と書かれた札が掛かったあまり広くないが、必要最低限の武器や装備、地図やレポート等がある部屋を後にした。部屋を出て、地下へと繋がる階段を降りるとそこには黄色のモコモコとした耳と尻尾をした和服姿の若い女が手を壁から伸びている鎖に繋がれていた。


「さて、貴様にはこれからの作戦に就いてもらう」

「作戦? 作戦なんて言うご立派な言葉じゃないでしょ? 『暗殺』でしょうに……」


少尉の事務的な命令に、まるで狐のような耳と尻尾をした女は正論を唱えた。


「あ~、そうだ…… でも、貴様の愛している元夫はこの業界では有名だぞ?」

「存じております…… あの方が猟師ではなくて『#暗殺者__アサシン__#』と言うことは…… そして、なぜあの方が殺されたかも……」

「あれは傑作だな? 従来、暗殺者は『確実に仕留める』『その場自害厳禁』、そして貴様の夫、十平が犯した『恋愛厳禁』を掲げ、暗殺依頼を受けていた。 その中でも十平はとても腕の立つ暗殺者だった。 しかし、ある日密猟者からある猟師を殺して欲しいと依頼された。 彼は、標的の猟師が猟に出た隙を突き、木の上からその猟師めかけて先端に刃渡り10センチが結ばれたロープを首に投げ刺し、ナイフが首を貫き、窒息死したことを確認すると猟師の身ぐるみを我が物顔で着た。その帰りに助けた狐が……」

「私です……」


少尉が話終わる前に、悲しい顔をしながらも人間の姿をした#狐__・__#ははっきりとした声で答えた。


「そして、私は助けられた恩を返そうと人間に化け、彼の…… いえ、殺された猟師の家に寒さをしのぐためにいた彼を訪ねました。 彼は、帰れと何度も言いましたが私は恩を返そうと決して帰りませんでした。 すると彼は、渋々家に泊まることを了承してくれました。 その日から1週間くらい二人で過ごしました。 すると彼が帰れとまた言ってきたので、私は一生あなたに付いて行きますと言ったんです…… そしたら彼は、家を出るなり走り出しました。 私は、慣れない人間の脚でよろめきながらもとにかく走りました。 そして、気が付いたらあの方におぶられていました。 それから彼は、私に暗殺者であること、ここの住人は殺したなどを聞きました…… でも、恩を返そうと必死に家事を頑張りました…… そして彼は……」

「暗殺者を辞めた」


人間の姿をした狐は、泣くのをこらえて少尉を睨んだ。


「それから我々が口封じの為に、わざわざ探し、殺した」

「そうです! あなた方が来なければ!」


少尉がことの成り行きの最後を話終えると、愛する者を殺された狐は壁から伸びる鎖をガシャガシャと音を立てながら、少尉を殴ろうとした。

しかし、当然のことながらその握られた拳は鉄格子にすら当たらない……


「で、私になにをしろと?」


狐はそう言った。


「この化け物の始末だ」


少尉はそう言うと、今回の依頼の標的の顔と名前、職業、強さ、その他を茶色の封筒から取り出し、狐に見せながら説明した。


「その女を殺れば私になにがあるんです?」

「自由だ」

「嘘じゃないですか?」


何度も狐は聞いた。


「わかりました…… やります……」


狐がそう言うと、少尉は壁から伸びる鎖を外した。

作戦開始は今から5時間後たど告げると狐を連れて、武器や装備、地図やレポート等がある部屋へと来ると、この部隊の40名全員が揃っていた。


「5時間後に作戦開始である! 異論は?」


少尉がそう言うと、長い沈黙が続いた。

長い沈黙はこの部隊では『異論なし』を意味する。


「全員配置に潜っていろ!」

「「了解!」」


狐は復唱しなかったが、この作戦が終わり次第自由だと言う嬉しい心を必死に抑えていた。

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