自殺観覧車
僕の名前は山田伸一、自殺志願者です。
いきなりこんな自己紹介になってしまってすまない。だがもう生きていくのに疲れたのだ。
もう死にたいのだ。
だが死ぬといっても周りに迷惑はかけられない。もちろん迷惑は必ずかけてしまうが、出来るだけ最小に抑えたい。そのためにも死ぬ場所は重要だ。家の扉で首吊りなんてしたら、家の物価価値は当然落ちる。それに人が死んだ家に住む俺の家族も嫌だろう。
しかし、そうするとどこで自殺しようか。と考えていたところいい場所があった。それが南区遊園地だ。
僕の街には北区遊園地と南区遊園地の二大大型遊園地が存在する。北区と南区、どちらも五年前に建てられた新しい遊園地で、アトラクションの規模の大きさや、種類の多さが売り。どちらの遊園地も、日々人でごった返している。
しかし、なぜ子ども達が楽しく遊ぶ遊園地で自殺なんてしようと思うのか。それは南区遊園地に存在するあるうわさが理由だ。この南区遊園地というのは都市伝説というか、変なうわさが多い。
うわさその①
南区遊園地内にあるレストランでは、ゴキブリの肉を使用している
うわさその②
遊園地内にある彫刻の一つには、男性の性器をイメージして作られたものがある
うわさその③
遊園地にある巨大観覧車では、夜な夜な人が飛び降り自殺する
どれもこれもにわかには信じられないうわさだが、案外笑いものにもできない。なぜなら、この前実際に料理の中にゴキブリが混入していたことが大きな話題となっていた。さらにインターネット上では、男性の性器を模した彫刻を映した動画まで存在する。ただ、この彫刻の動画は後々加工された物であることが判明し、実際にこの彫刻は存在しない。おそらくうわさに便乗したタチの悪いやつらがやったのであろう。
問題は三つ目のうわさである、自殺観覧車のうわさ。実際にここで自殺があったという話は聞いたことがないが、不気味さ故なのか利用者は減少している。すでにいわくつきのうわさが立ち、利用者も減っているこの観覧車ならば、自殺しても影響は少ないだろう。そう僕は考えた。
そして今僕は、その問題の観覧車の前にいる。すでに夜中で辺りは真っ黒。不気味な雰囲気が漂っている。そうだ忘れていました。さっきの観覧車のうわさには補足があります。
うわさその③ 補足
夜であるにも関わらず観覧車が勝手に動き出し、観覧車から死のメロディが聞こえてくる。
このメロディを聞くと、自殺してしまう。
「フッ、馬鹿馬鹿しい、なにが死のメロディだ!僕はそんなものなくたって死ぬ、確実にね」
ガタッ!ガチャガチャガチャ
夜中であるにも関わらず、観覧車に光が灯りゆっくりと動き出す。
「えっ・・・動いてる」
♪~♪~♪♪~♪~♪
観覧車が動き出したと同時に、不気味なメロディが周囲に響く。
「まさか・・・うわさは本当なのか」
だが、実際に目の当たりにすれば認めるしかあるまい。
「死の舞台に立てというのか?いいだろう死んでやるよ」
そう言いながら、ゴンドラの扉に手を伸ばした時だった。
「あんちゃん、なにしてるんだい?」
「!?」
振り向くと、そこにはつなぎ服を着た五十代ぐらいのおじさんが立っていた。南区遊園地の作業員だろうか?
「そのうるさいラジカセを止めてくれ、迷惑だろうが」
おじさんが指さしたのは、僕の左手に持っている大きなラジカセ。先ほどからの不気味な音の正体。
「あんちゃん、もしかしてあれか。あの観覧車のうわさに便乗して、こんなことしてるのか?そんなバカなこと辞めちまいな。それでどれだけこっちが迷惑してると思ってんだ!あのうわさのせいで、ここの遊園地は人が減る一方なんだ・・・って、なんで観覧車が今動いてんだ?」
「あのうわさは本当ってことですよ。こんな怪現象が起きてるんだから」
「怪現象だ?バカ言ってんじゃねぇ、誰か動かしてんだろ、ちょっと俺見てくる」
「やめといた方がいいですよ。あまり詮索しない方があなたの身のためです」
「はぁ?何言って・・・」
おじさんの周りを不気味な黒服の男達が取り囲む。突然のことにおじさんは言葉を詰まらせる。
「あのうわさは本当なのですよおじさん、信じられないかもしれませんが、僕がそれを証明します」
僕はゆっくりとゴンドラに乗った。
・・・一か月前
仕事もなにもしていないニート同然の僕は、今日もコンピューターをいじっていた。生きていることに意味なんて見いだせない死にたい死にたい、そんな気持ちばかりが心を巡る。そんな時、何気なく見ていた サイトの広告欄に奇妙なものを見つけた。
~自殺志願者急集 意味のある自殺をしてみませんか~
まるでバイトの面接のようなノリで書かれた奇妙な文章に、僕の興味は大いにそそられた。
さっそくそのサイトにアクセスしサイトに明記してある電話番号にかけると、さっそく明日、〇〇という場所に来てほしいと言われた。一体何が行われるのやら
・・・翌日
指定された場所は、なんの変哲もない古い建物の入り口。ここの周辺は人通りが少なく目立たない、あまり人に知られたくないということか?
「お待ちしておりました山田様、どうぞこちらへ」
スーツ姿の女性が建物から現れ、僕を建物の奥の部屋へと案内する。
コンコン
「はい、どうぞ」
「失礼します。」
「はじめまして、君が山田さんかね」
ドアをノックし中に入ると、スーツ姿の白髪男性が僕を出迎えた。
「さっそくだが聞きたい、君は自殺志願者かね?」
「はい、そうです。もうこの世に未練はありません」
「そうかわかった。あぁ私は君を止めたりはしないよ。自殺するということは、死ぬ恐怖より現実の苦しみが凌駕するということ。そんな人間に自殺するなと言うのは、全くもって的外れだ」
「はぁ・・・」
白髪の男は淡々を話を続ける。
「さて自殺するにしても、その場所は重要だ。自殺場所によっては、人々に大きな影響を与えるからね。そこで提案したいのが、南区遊園地の観覧車だ」
「南区遊園地ですか?なぜそのような場所で」
「南区遊園地のうわさは聞いたことがあるだろう?自殺してしまう観覧車」
「はい、そのうわさは聞いたことがありますが、まさかそのうわさを本当にしようとか言いだすのでは」
「そのまさかだよ」
白髪の男はにやっと前歯をみせ笑った。
「でも夜中の遊園地なんて閉まってるでしょうし、観覧車も動いていないでしょう」
「その点は心配ない、すでに手筈は打ってある。君はうわさ通りに観覧車から飛び降りてくれればいい」
「・・・」
「もちろんタダとは言わない。君が予定通り死ねば、君の家族に多額の補助金を出そうではないか、どうだね?タダ死ぬよりもよっぽど残された家族のためになるだろう?」
「そうですね。でもなんでそんなことを」
「余計な詮索はよしてくれ、ただ君はうわさ通りに事を進めてくれればいい」
「・・・もしかして、例のうわさの根源はあなたたちではないですか?」
白髪の男の目が一瞬丸くなったかと思うと、急に笑いだした。
「ハッハッハ、なかなか鋭いね君。そうだよ、その通りさ」
「その様子だと観覧車だけではないですね。ゴキブリと彫刻のうわさも」
「ご名答、すごいね君は。さらに言おうか、うわさだけではない、ゴキブリさわぎも彫刻の動画も我々がやったことさ」
「問題の男性の性器を模した彫刻の動画は、すごい再生数でしたよね。ランキングに乗っていて僕も見ました」
「あの動画の再生数だけで、1000万近くの広告費が入ったんだ。まさに至れり尽くせりだよ」
「あなた一体何者なんですか?」
「ん?あぁー失敬。まだ自己紹介をしていなかったね。私はこういうものだ」
差し出された名刺に目を通す。
-北区遊園地株式会社 代表取締役社長 田中 渡-
「最近、南区が急激に数字を伸ばしてきてね。負ける訳にはいかないのだよ」
終わり
最近フェイクニュース多いですよね。フェイクでも一度拡散すれば永遠に残り続ける。