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冒険者にであった

ブックマーク10件うれしいです。

読んでいただき、ありがとうございます。

 おはよう。今日もいい朝だ。そういえばこの世界に来てから、雨が降ったことがないけれど、この世界の季節はどうなっているんだろう。1日の長さは24時間ぐらいのような気がする。冬と夏とかあると生活がいろいろと大変だよね。まあ、「インベントリ」があるから、冬のための食料の備蓄はたぶん大丈夫だとは思う。


 そんなことより今日は森の散策である。コンとピーちゃんを連れて、今日は川の下流に向かって歩いていく。


『おいしいものー』

『あるといいねー。ぶどう以外にもなんか見つかるといいんだけれど』

『ぴーぴー♪』


 初めての遠出ということで、ピーちゃんもご機嫌である。ピーちゃんは順調に大きくなってきている。最近だと高いところから飛び降りて、羽を動かす練習をよくしている。ほんと成長早いよなあ。そのうち、俺を持って飛んでくれそうな気すらする。まあ、まだまだ俺よりは小さいけれど。でも俺と数日しか生まれた日って変わらないんだよなあ。ピーちゃんと同い年か。とても不思議な感じがする。


 2時間ぐらい歩き進めたあたりで「探知」にゴブリン達の気配があった。どうやらなにかを襲っているらしい。5つぐらいの生き物が、ゴブリンは20体ぐらいに囲まれていた。

 俺達は様子を伺うために、その場所に近づいて行った。コンにも気配を殺すように伝える。万が一、ゴブリンがこちらを狙ってきたら大変だからだ。



「ちきしょう。いくらゴブリンとはいえ、これだけの数に囲まれたらやばい」

「包囲が一番薄い所を狙おう。そこから突破して逃げるしかねえ」


 囲まれているのは人間達だった。剣や槍、皮鎧を装備しているところを見ると、冒険者かなにかだろうか。しかし人間達の言葉が分かることが不思議だ。明らかに日本語ではない言語なんだけど、なんとなくしゃべってることが分かる。ドラゴンだから?それとも転生時になにか言葉が分かるスキルをもらってるんだろうか。ステータスってものがないのが悔やまれる。


『あのひと、みたことある』

『知り合いか?』

『おにく、くれた』

『え、じゃあいい人なのかな?』


 どうやらコンの顔見知りらしい。俺は助けることを決める。「ストーン」×20、乱れうちを発動。ゴブリンの頭をどんどん撃ちぬいていく。


「な、なにが起こったんだ?助かったのか?」

「おい、そこに誰かいるのか?助かったよ。ありがとう」


 いくら、いい人とはいえ、ドラゴンの姿を見せるのは危険だろう。姿を見せずに様子を見た。


「お礼を言いたいが、姿がみせられないなら仕方ない。ほんとにありがとう」

「討伐対象に逃げられるわ、ゴブリンに囲まれるわついてないと思ってたが、俺たちはまだまだ運に見放されてないな」

「この調子でフォレストフォックスの長も見つけられるといいんだが」




 ん、どういうことだ?コンは肉をもらったと言っていた気がするんだが、いいやつじゃないのか?


『コン、肉をもらったあとはどうなったんだ?』

『ん、おぼえてない。すごいねむくなった。おきたら、ママきずだらけ』

『・・・そうか、わかった』


 これはたぶん、コンは囮に使われたんだな。眠り薬を混ぜた肉を食わせコンを捕獲し、親狐をおびき出したんだ。親狐はコンを盾にされ、傷を負ったがどうにかコンを助けだし、逃げてる途中だったんだな。そこを血の臭いで集まってきた狼に襲われたと。


 つまり、こいつらはコンの敵だ・・・。


 俺はどうするか考えた。俺はもともと人間だ。今はドラゴンだが、人間を殺すことに忌避感がある。しかし、コンの親を罠にはめたこいつらを許せそうにない。


『コン、ママを傷つけたのはこいつらだ。助けたが、このまま帰らせるわけにはいかなくなった。ちょっと待っててくれ』

『わるいひと?わるいひと、やっつけないと』

『おう、まかせとけ』

「ぴー?」


 ピーちゃんだけ蚊帳の外であるが、それはさておき。俺は気づかれないように冒険者達に近づき、背中に向けて爪で攻撃する。まずは一人。


「ぎゃああああああ、いてええ。いったいなんだ??」

「おい、どうした。なんだ、黒くて小さいものが襲ってきたぞ」

「早く倒せ。かなり傷が深いぞ」

「痛い、痛いよおおお」


 親狐には大きな切り傷が一つだけあった。それが致命傷になったのは間違いないだろう。だから俺もこいつらに一つずつ、大きな切り傷をつけてやることにした。

 親狐に深い切り傷を付けただけあり、こいつらは力はそれなりにあるようだ。しかし俺のスピードについてこれるやつは誰もいなかった。当たらなければどうとでもないってやつだ。さすがドラゴン、子供でもチートである。

 俺は冒険者の背後に回り続け、一人ずつ背中を切り裂いていく。異世界だし、回復ポーションなんてものもあるかもしれない。全員の背中を切り裂きおわったら、そいつらのアイテムバッグを破壊し、魔法で燃やしてしまう。その後、すばやく撤退した。


「ちきしょう、なんだったんだ」

「いてえ、早く止血しないと死んでしまう」

「アイテムバッグが黒焦げだぞ。緊急時用ポーションも使えねーじゃねえか」

「それにしても黒くて小さいトカゲ?羽も生えてたぞ。もしかしてドラゴンの幼生体か?」

「しかも黒っていえば・・・」


 冒険者の会話はそこまでしか聞こえなかった。まだ死にはしない。しかしこの森の中で血だらけになれば、臭いに釣られて、肉食のモンスターがやってくるであろう。おそらくあの冒険者達は生きてこの森を出ることはできない。元日本人の俺としては、ここまでしかできなかった。


『パパ、わるいひと、やっつけた、すごーい』

『おう、敵はとったぞ』

『ママ、あんしん』

『ああ、ママも安心してると思うぞ。もうコン達を狙ってくる人間はいないからな』


 そう簡単な話ではないとは思うが、コンを安心させるため、俺はそう答えた。

 しかし、ドラゴンに生まれ変わったんだから、やはり人間と敵対する運命なんだろうか。いずれ、俺達の身を守るために人間を殺さないといけないこともあるかもしれない。その時のための覚悟を今からしておかないといけないな。










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 冒険者達のその後(ちょっとだけグロ注意)


「ちきしょう、血が止まらねえ」

「服を破いて傷口を縛れ。他のモンスターが来る前に町に戻るぞ」


 冒険者達は、町に向かって移動を始める。しかし出血のため体力が落ち、なかなか町にはたどりつかない。


「やばい、目がかすんできやがった」

「血が流れすぎたか。あと少しで町につく。がんばれ」





「おい、向こうになにかの気配を感じるぞ」

「しまった。血の臭いになにかが集まってきてるのか」

「囲まれる前に逃げないと」

「だめだ、もうそんな体力は俺たちにない」

「ちきしょう、あと少しで大金持ちってとこだったのに・・・」


 冒険者は逃げるのをあきらめ、武器を構えてモンスターに備えた。襲ってきたのはフォレストウルフの群れだった。1対1ならばまだどうにかなったであろうが、体力も残り少ない冒険者達にとってできることは、フォレストウルフ2、3体を道連れにすることぐらいであった。


 数分後、その場には食い散らかされた肉の破片だけが残った。



親狐がフォレストウルフにも負けそうだったのは、

傷を負っていたのと、コンを守っていたからです。

なんでフォレストウルフに負けそうになってたのかと思ってた方に納得いただけたなら幸いです。

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