鳥の雛を育てよう
鳥には「インプリンティング」という本能行動があるらしい。生まれて初めて見た、声を出し、動くものを自分の親だと思い込むのである。そう、雛が生まれた瞬間、俺は驚き、叫び声をあげ、リアクションを取ってしまった。すなわち、この鳥の雛に俺が親だと思い込まれてしまったのだ。
『とりさん、かーわいいー』
『うん、かわいいね・・・』
「ぴよぴよぴよ」
どうしよう。コンだけでも育てる自信ないのに、もう一匹増えちゃった・・・。
仕方がない。もう腹をくくってこいつを連れて帰ろう。早くしないと暗くなってしまう。俺は魔法で、ちょうど雛が首が出せるようなだっこ紐を作り、雛を首からぶら下げて家まで連れて帰ることにした。
だっこ紐で鳥の雛をぶら下げた子供のドラゴン、もし今この姿を人間に発見されたら、どういうリアクションを取られるだろうか・・・。
それにしても、鳥の雛って何を食べさせればいいんだろう。虫?ミミズ?とりあえず土でも掘ればいいだろうか。俺、鳥なんて飼ったことないからなあ。気持ち悪いけど、ミミズを捕まえてすり潰して与えてみるか・・・。
俺は土魔法ですり鉢を作り、きれいに洗った木の棒でミミズをすり潰していく。うぇ、気持ち悪い・・・。これを適度な大きさの団子にして、大きく口を開けている雛に与えてみた。お、食べた。おなか壊さないといいけど。雛が口を開けなくなるまでひたすら餌を食べさせる。5回ぐらい餌を与えたら、おとなしくなったので、魔法で巣箱を作り、枯草で寝床を作ってあげた。
さて、落ち着いたので、今度は俺とコンのご飯だ。焼き魚の残りとぶどうを食べて、ひさしぶりに豪華な夕飯を食べることができた。さて、風呂に入って寝よう。
って、眠れるわけねーじゃん。人間の赤ちゃんだって、生まれたては数時間ごとに腹が減ったと泣きわくんだぞ。鳥の雛だって、定期的に餌要求するよなあ。すっかり忘れてたよ。そんな感じで俺は仮眠をとりつつひたすら雛に餌を与える日々をしばらく過ごすことになった。
それから3日ほどたった。雛は目に見えて大きくなっている。最初は8cmぐらいの大きさだったのに、もう今は20cmぐらいにはなっている。最初は産毛のようだった羽もすっかりきれいな白い羽が生えそろった。それにしても異世界の雛、でかすぎないか。でかいだけあって、もう自分で立ち上がり、俺の後ろを着いて歩いている。
こいつはなんかのモンスターなんだろうか?それともただの鳥なのか。分からないけど、これだけでかいんだから、きっとモンスターなんだろうな。
そういえば、まだ名前付けてなかったな。最近は「ぴーぴー」鳴くようになったから、名前はピーちゃんにしよう。
『おまえの名前は「ピーちゃん」な』
「ぴー♪」
『ぴーちゃん、かーわいいー』
一応、念話は伝わってるような気がする。そのうちピーちゃんが何をいってるか分かるようになるんだろうか。
ピーちゃん、もう自分で土を掘って、ミミズを捕るようになった。あと俺たちが肉や魚を食べていると欲しそうにしているので、すり潰して与えるとおいしそうに食べる。異世界の鳥は雑食なのかな?これなら初日に無理してミミズすり潰さなくても、魚をすり潰せばよかったかもしれない。
ピーちゃんとコンはすっかり仲が良くなった。本来ならピーちゃんは狐に捕食される側のような気もするんだけど、今はよく、ピーちゃんが鬼になり、コンと鬼ごっこをしている。まだまだコンのほうが足が速いので、コンを捕まえることはできないんだけれど、ピーちゃんはあきらめず走り続けている。飛べるようになったら、きっと立場は逆転するんだろう。
しかし成長早くてよかったなあ。1か月以上、睡眠不足が続いたら辛かったと思う。世の中の母親にはほんとに頭が上がらない。そして子育てに参加してるお父さん方もすごいと思う。男性の育児休暇万歳!っと、話が逸れた。
落ち着いたら、また周辺の探索を始めないとなあ。
あくまでモンスターの雛だから、こんな方法で育ちましたが、
野鳥の雛は育てるのがすごく大変らしいです。
そもそも野鳥は飼ったらだめなんでしたっけ。
野鳥を保護したら、お近くの獣医かペットショップに相談しましょう。
決して、憶測だけで人間の食べ物を与えてはいけません。