森の中を探検だ
今日もいい天気である。なので、コンといっしょに森の中を探索しよう。そろそろ魚とか肉だけの生活は飽きてきた。野草とか食べられるものもあるのかもしれないけど、あいにく俺にはそんな知識はない。たまにコンは草をかじったりしていたけど、あれって猫と同じで毛玉を吐くためなのかな?それとも意味はないけど、かじりたい年頃なんだろうか。毒草が混じってないか心配なので、できればやめてほしい。
迷わないように、川沿いに移動していくことにした。川の上流には山が見えている。とりあえず今日は山の麓あたりまでは行ってみたい。川辺には草がたくさん生えており、たまに風が吹いて、ゆらゆらと揺れている。ところどころ獣道に入る場所もあった。きっとそこを通って動物とかモンスターが水を飲みに来るのだろう。
たしか川って上流、中流、下流で石の大きさが違うんだっけ?石の大きさを見る限り、ここは中流あたりであろう。比較的川幅は大きく、なだらかな流れになっているけれど、水に入るとこの小さな体ではあっけなく流されてしまうだろう。
『つかれたー』
『そろそろ休憩するかな』
子狐であるコンはそろそろ疲れたらしく、川の水をごくごくと飲んでいる。俺もその隣で飲んでみた。程よく喉が渇いていたからとてもおいしい。俺は「インベントリ」から焼き魚を取り出して、コンといっしょに食べることにした。
『それにしても木の実が見つからないなあ』
『ぶどうー』
『コンはぶどうを食べたことがあるのか。じゃあこの森にもどこかに生えているんだろうなあ』
30分ほど休憩した後、さらに奥へと進んでいった。
『あ、ぶどうー』
そういってコンは走り出した。俺もそれを追いかけた。ぶどうの木まであと一歩と迫ったところで、コンに向かって蔓が勢いよく伸びてきた。コンは蔓をかわせず、蔓によって拘束された。ぐるぐる巻きになったコンは木の枝にぶらさげられる。
『くるしー』
『待ってろ、今助けるからな』
俺は大きくジャンプし、爪で蔓を切断する。すごく硬かったが、竜の爪にはさすがに及ばないようだ。落ちてくるコンを俺はキャッチして静かにおろした。
木は再び蔓を伸ばして攻撃してくる。木のモンスター、っていえばトレントだっけ。俺は蔓をかわすために大きく左によけたが、足を捕まえられてしまい、そのままぐるぐる巻きにされてしまう。硬いが力を入れたら引きちぎれなくはない気がする。でも木と言えば火に弱いはずだ。俺は、火をイメージし、心の中で「ファイヤー」と唱えた。1mぐらいの火の玉がトレントに襲い掛かる。トレントはもだえ苦しみ、俺を拘束していた蔓を緩めたので、簡単に脱出することができた。 とどめに「ストーン」を唱えた。石はトレントにむかって勢いよく飛んでいく。石が当たったトレントは根本からへし折れ、動かなくなった。
あぶなかった。「探知」に反応していたけど、木だと思って油断していた。あとは燃え広がらないように、「ウォーター」で消化しておこう。
『コン、大丈夫か?』
『だいじょぶー』
コンも少し擦り傷が付いたけど大丈夫だったらしい。トレントはどうやらぶどうを採りに来る生き物を捕食していたらしい。ぶどうのついた木は無事だったので、コンといっしょにぶどうをたくさんとって食べた。もちろん「インベントリ」に保管するもの忘れていない。
今日はちょっと油断しすぎて、コンを危険な目に合わせてしまった。いっしょに出かけるときはもっと気を付けないと。コンはまだ小さいし、もともとこの森の中では強くない種類のモンスターであろう。大きくなれば、それなりに戦えるかもしれないが、それまではしっかり俺が守らないと。
ぶどうを採取した俺達は帰路についた。帰り道、「探知」で川沿いの岩の中に微かな反応があるのに気づいた。行きもあったのかもしれないが、その時は気を抜いていたのでスルーしていた。そこをのぞいてみると、岩と岩の間に小さな卵が落ちていた。しかも1個だけである。
少しひび割れているので、大事に取り出すと卵に入っていたひびがさらに大きくなった。
「ぴよぴよぴよ」
『うわ、生まれた・・・』
『とりさんだー』
2匹目の仲間です。
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