生活レベルを向上させたい
『ただいまー』
『おかえり』
『ゴブリンがいたから追っ払ってきたよ』
『ゴブリン、いっぱい?』
『3体ぐらいかな?そんなに多くはなかったよ』
『パパ、つよーい』
『そんなことないよ。ありがと』
寝床に帰るとコンは丸くなっていた。やっぱり寂しかったようで、僕を見つけるとものすごい勢いで尻尾を振ってくれる。きっと甘えたい盛りだろうし、今日はしっかり遊んであげよう。
『よし、それじゃあこれからいっしょに遊ぼう』
『あそぶー♪』
『なにがいいかな』
『コン、かくれる』
『かくれんぼか。じゃあ、しばらくしたら探しにいくから、隠れてきて』
『あい!』
「探知」を使えばすぐに見つかるけれど、さすがにそれをするとずるいので「探知」を解除する。今のところ周囲にモンスターの気配はないから大丈夫だろう。
100を数えた後、外に出て探し始める。周囲を探すが見当たらない。さすがに慣れてるのかな。パパって呼ばれてるけどよく考えたら俺のほうが生まれたの遅いよな。転生したから、知識はあるけれど、年下のパパっていいんだろうか。
とりあえず木の上に登って周囲を見回してみる。10mぐらい先の大きな木の陰から、かわいい尻尾が見えた。まさに頭隠して尻隠さずである。僕は気づいてないふりをしてゆっくりと近づいていく。コンは近付いてくるのに気づいて、僕から見えないように木の裏を移動しようとしたので、僕は反対側へ回り込んだ。
『コン、みーつけたー』
『まけたー』
悔しいのか、耳をぺたんとしている。そうやってしばらくかくれんぼを続けたが、だいたいコンは尻尾を隠し忘れているので、まだまだ「探知」なしでも負けることはないだろう。
コンが満足するまでしっかり遊んだあと、コンはお昼寝を始めたので、俺は魔法の練習をすることにした。まずは土魔法の練習。昨日は穴を掘ったけれど、壁を作ったり、床を固めたりして、家を作れないだろうかと試してみた。屋根とかうまい作り方は分からないので、サイコロみたいな家になった。某3Dクラフトゲームだときっと豆腐って馬鹿にされるだろう。でも俺は気にしない。簡単で丈夫だし、住み心地だって悪くない。豆腐は最高だと思う。
でもまあ、その分、内装には気を使いたい。テーブルや椅子を作ってみた。でもよく考えたらドラゴンと狐に椅子はいらないか。それよりもクッションが欲しい。
クッション・・・といえば布と綿だよね。布と綿といえば糸、糸と言えば植物。植物を育てる魔法ってできないのかなー、と魔力でイメージをしてみるとなんかよくわからない草がいっぱい生えてきた。縦に葉脈が走ってる原始的な葉っぱだ。それをさらに糸にして、さらに布にできないかと試行錯誤すること1時間ほど。見事にきれいな布ができた。
この世界の魔法ってなんでもありだな・・・。あとは綿をイメージして、土魔法で針を作り、チクチクと布を縫い合わせていく。俺は裁縫もできる系の男子だったらしい。よく考えたらこれも魔法でできるんじゃないか?むしろ最初からクッションをイメージして、クッションを生成できないかと試してみたらよかった。1つ完成した後に、クッションを直接魔法で出せるかを試してみた。あっけなくできた。でもそれで魔力を使い果たしてしまう。やっぱり複雑なものを作ると魔力の消費が激しいらしい。
魔力が回復するまで、コンといっしょにお昼寝をした。
コンは先に目が覚めたらしく、俺が目が覚めると既に、家の中を探検していた。クッションも気に入ったようで、気持ちよさそうにその上に乗っていた。
夕飯の時間になっていたので、今日もまた電気ショックでお魚を捕った。食べる分を残して全て「インベントリ」にしまう。「サンダー」は便利だけれど、魚が捕れすぎてしまうのが難点かもしれない。
家の中で魚を焼くために、家に煙突を追加し、その下にコンロを作る。コンロと言っても薪が使えるタイプのやつである。魔法で金串を作り、魚をさして焼いて食べた。
魚はおいしいけど、さすがに飽きてきたなー。明日、別の食べ物を探しに行きたい。
そういえばこっちに来てから風呂に入ってないな。寝る前にさっぱりしたいし、もう魔力も十分回復していたので、外に入浴用のスペースを作り、深さ50cmぐらいのたらいを魔法で作成した。そこに40度ぐらいのお湯を注ぐ。やっぱり日本人ならお風呂に入りたいよね。もう人じゃないけど。
『これ、なに?』
『お風呂だよ。体がきれいになって、きもちいいんだよ。いっしょに入る?』
『うん、はいるー』
狐って水は怖がらないんだろうか、とか思いつつ、本人が入るというのでいっしょに入る。まずは魔法でお湯をだして、コンの体を洗ってあげる。石鹸も魔法で出せるのかなー、でもまあ今日はお湯で流すだけでいいかなと自分で納得する。自分の体も洗い終わったらいよいよ入浴である。
『あったかい、きもちいい』
『お風呂はいいだろ、これから毎日入れるぞ』
『おふろ、すきー』
十分あったまったところで風呂を出る。魔法で暖かい風を出して乾かす。コンの毛は昨日よりさらにきれいに、モフモフになった。