ゴブリンと戦う
魔力を使った索敵によると、10体ぐらいのなにかの気配が近づいてくる。俺よりは大きな何かだ。どうする?ここから出て迎撃するか?それともこのまま隠れるか?考えている間にもそいつらは近づいてくる。出ていって、コンを狙われたらどうしようもない。俺はこのまま息を潜めつつ、敵の気配を探ることにした。魔力による索敵はこれから「探知」と呼ぶことにしよう。
「グギャア」
「グギャーー」
「「「「グギャーーー」」」
外から気持ち悪い鳴き声が聞こえる。30分ほどそいつらは俺達の寝床入口周辺をうろちょろした後、元来た方角へと去っていった。岩でふさいでおいてよかった。
翌朝、外に出て確認するとたくさんの足跡が残っていた。猿、もしくは人間のような足跡だけれど、妙に小さい。小さい人型のモンスターか何かかな?ドラゴンがいるぐらいだからゴブリンもいるのかもしれない。10体もの集団で行動するってことは、もしかしたらリーダーとかがいるんだろうか。この世界においての俺の強さがまだはっきりしない以上、まだ戦いたくはない。1対1なら負けないとは思うんだけれど。
『ママ?パパ?』
コンが起きたようだ。起きて誰もいなかったから不安になったんだろう。今にも泣きだしそうな雰囲気が伝わってくる。
『おはよう』
『おはよー』
『昨日の魚が残ってるからすぐ飯にしよう』
『さかな!』
コンは食べ盛りなようで、嬉しそうに尻尾を振っている。コンの毛並みはきれいな狐色をしている。狐だから当然といえば当然である。昨日しっかり撫でてあげたので、今もきれいな艶を保っている。親狐にもきっと大事にされてきたんだろう。
俺は空間魔法で昨日の余った魚を取り出す。臭いを嗅ぐが特に変な臭いはしない。どうやら時間が止まるタイプであるようだ。これから「インベントリ」って呼ぶことにしよう。いったいどれぐらい入るものなのだろうか。あとで岩とかで試してみてもいいかもしれない。
枯れ木を集め、燃えやすいように細かい枝を下に集め、空気が通りやすいように大きな枝をその上に立てかける。
『コン、やるー』
『火をつけてくれるのか?ありがとう』
コンは魔力を操作し、小さな火を細かい枝に向けて放った。みごとに点火し、しばらくすると枯れ木全体に火が回る。
『よし、うまくできたね』
『コン、うまい!』
コンはうれしそうに尻尾を勢いよく振っている。俺はそれを見て頭を撫でてやる。ちょっと魚臭かったかもしれない。
魚をこんがりやいて、噛み砕いてコンにあげる。魚くらいだったらもう普通に食べられるのかな?後で口の中をみて、ちゃんと歯が生えていたら、小さい魚を一匹まるまる上げてみよう。
食べ終わり、火を片づけてのんびりしていると、「探知」に3体ほど反応があった。念のため常時発動しておいてよかった。昨晩の奴らと同じかな?周囲に他の反応はないので、コンに寝床に隠れるように伝え、俺は様子を見に行くことにした。
「グギャギャ」
「グギャ?」
「グギャギャーー」
醜いおっさんのような顔をした身長1mぐらいの人型のモンスターがいた。リアルにゴブリンがいたらあんな感じかな。仮にあいつらをゴブリンと呼ぶことにしよう。きっと焼いた魚の匂いにつられてやってきたんだろう。
ゴブリンといえば雑魚の定番だよな。いくら子供とはいえ、ドラゴンに勝てるとは思えない。
俺は気配を殺し、後ろから回り込む。「ストーン」を10発ぐらい連続して発動して奇襲した。握りこぶしぐらいの石が生み出され、勢いよくゴブリンに向かって発射される。ゴブリン達は石に反応すことなく打ち抜かれて絶命した。
しまったな。1体だけ残して、肉弾戦だとどんなものか試しておけばよかったか。俺は初めて人型のモンスターを殺したというのに特に動揺もしなかった。ドラゴンに生まれ変わったからだろうか。
とりあえずコンが不安がっているだろうから、早く寝床に帰ろう。
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