魔法ってちょろい
魔法を練習した後、川の近くに咲いていた花を摘んできて、コンの親のお墓の前に供える。手を合わせて、コンのことは任せてくださいとお祈りする。コンはそれを不思議そうに見ていた。
『なに?』
『ママが早く帰ってくるようにお祈りしてたんだよ』
『コンも、おいのり』
さすがに手は合わせられないけれど、目を瞑り頭を下げてコンは早く帰ってきてねと祈っていた。いつか本当のことを言うときがくるかと思うと気が重くなるな・・・。
とりあえず雨風を凌げる場所を探したいな。昨日は運よく雨が降らなかったけれど、いつ雨が降るかも分からない。この姿じゃ町にも入れないだろうし、人間に見つかったら、討伐されてしまうかもしれない。そう簡単にやられる気はないけれど、魔法がある世界だ。化け物並みに強いやつがいてもおかしくない。
『コンはどこに住んでたの?』
『あっち』
俺はコンの後をついていく。10分ほど歩いたところに親狐が入れる程度の小さな穴があった。
『このなか』
『他に仲間は?』
『ママだけ』
『さすがに俺は入れないか。よし、もっと大きな穴を掘ろう』
『ほろうー』
俺はコンといっしょに、穴をさらに掘って広げていった。奥は入口より広かったが、それでも狭い。入口は俺がぎりぎり通れるぐらいまで広げよう。中は1m×1mぐらいまでがんばって掘った。そうだ、これって土魔法使えば楽に掘れるんじゃね?
もっと早くきづけばよかった・・・。悔しいので土魔法でさらに深く掘ってみる。魔力を操作し、穴ができていくイメージをする。そして壁を硬く硬くする。魔法で掘ると掘った土もどこかに消えてくれるらしい。でもさすがに魔力の消費が激しいのか、5mぐらい掘った所で力尽きる。
『パパ、すごい』
『コンもお手伝いありがと』
『えへへー』
さて、あとは枯草をしいて、寝床を作ればいいかな。中にいる時は入口を土魔法をつかって岩でふさいでおこう。空気穴はちゃんと開けておいたから、さすがに窒息はしないだろう。
夕飯は川で魚を捕った。釣り竿なんてないので、魔力を操作して電気をイメージ。心の中で「サンダー」と唱えると川に稲妻が走る。電気ショックで魚が気絶し、10匹ぐらいぷかぷかと浮いてきた。それをコンといっしょに集め、たき火で焼いて食べる。
『さかな、おいしー』
『骨に気をつけるんだよ』
『はーい』
残った魚はどうしよう。空間魔法とかでしまえないかなーー、「収納」って感じで。って、ほんとに魚が消えた・・・。
「取り出し」
おお、ちゃんと出てきた。魔法ってちょろいな。こんなのでほんとにいいのかな。
こうして平和な一日が終わる。寝る前にしっかりコンの毛づくろいをしてあげた。コンは気持ちよさそうに目を瞑ると、そのまま眠ってしまった。
そういえば狼とか、他のモンスターに襲われなかったなあ。平和なのはありがたいけれど、ちょっと怖い。索敵とかできるかな。魔力をこううすーーく広げる感じで・・・。お、だいたい100mぐらいの範囲が探れそう。結構広いのか、そうでもないのか分からない。あれ、こっちに向かってくる生き物がいるぞ。もしかして魚の臭いにつられたのかな・・・。
竜の子供だからか、なんだってできます。
読んでいただいてありがとうございます。