竜の魔法教室
翌朝、目が覚めるとすぐそばに子狐が寄り添うようにして寝ていた。
『ママ・・・・』
やっぱり、まだ子供だな。寝言でママなんていってやがる。
って、おい、いまこいつがしゃべってること分かったぞ?なんでだ??しゃべるっていうより、直接頭の中に語り掛けてくるような感じだった。テレパシーってやつかな。昨日はそんなもの聞こえなかったのに。
しばらくすると、子狐も起きだしてきた。俺にもテレパシーを送ることができるのか試してみよう。
『おはよう』
『・・・・おはよ。・・・・・ママ?』
おお、通じた。しかしやっぱりママか。昨日の出来事を理解できてないのかな・・・。
『ママはケガしちゃって、治すために遠くにいっちゃったんだ。戻ってくるまで俺といい子にして待てるか?』
『いい子?もどってくる??』
『ああ、戻ってくる』
『わかった』
だましてるようで悪いけれど、まだ死んだことが理解できないようだから、遠くに行ったってことにしておいた。おいおいほんとのことは教えたらいいと思う。
『おなか・・・すいた・・・』
『そうだな、なんか食べれるものとりにいくか。そういえばお前、名前はあるのか?』
『なまえ?』
『ママになんて呼ばれてた?』
『ぼうや?』
『それは名前じゃないなあ。しかたない。俺はお前のことをコンって呼ぶからな』
『コン?』
『そうだ。コンだ』
名前を付けたら、すっと自分の体から力が抜ける気がした。そしてコンが薄く光った。あれ、もしかして名づけってなんか特別な意味でもあるのか??まあ、付けちゃったものは仕方ないか。
『よし、じゃあ飯とりにいくぞ。コン』
『わかったー』
周囲を散策すると野兎が数羽いることが分かった。とりあえずそいつを朝ごはんにすることとしよう。息を殺し、野兎に近づく。素早い野兎だが、俺のスピードには敵わないようで、あっさり捕まえることができた。
昨日と同じく、皮を爪で剥ぎ、軽く火で焼いてから、噛み砕いて肉をコンに与える。
『おにく、おいしい・・・』
『よく噛んで食べろよー』
野兎をもう1匹捕まえて、俺も食べた。しかしドラゴンって普通は何を食べるものなんだろう。肉ばっかり食べてるから、野菜とか果物も食べたいな。
お腹もいっぱいになったし、次はまた自分がどういう状態なのかを考えてみよう。
異世界、ってことはきっと魔法ってのもあるんだろう。しかもドラゴン。最強の代名詞である。魔法が使えるに違いない。
しかしこの体は呪文なんて唱えられない。それに呪文だって知らない。無詠唱っていうか、イメージだけで魔法が使えないだろうか。俺の前世の知識によると、こういう場合(主にラノベからの知識)、体内に魔力を感じればいいはずだ。
魔力・・・、魔力・・・・。うーーん、わからん。とりあえず体中を巡り巡ってる血をイメージすればいいかな。それをおなかのあたりに集めるイメージをしてみる。するとお腹のあたりがほんのりと暖かくなってきた。たぶん、これが魔力だろう。
魔力が感じられるようになったとこで、とりあえずちっさい石がまっすぐ飛んでいく様子をイメージしてみた。魔力を外にだし、それを石に変換。さらにそれをまっすぐ目の前の木に向かって発射する。
ドッガアアアアアアアン
うわ、木が大破した。やべえ。魔法威力強すぎじゃね。
『パパ、すごい』
『へ、パパ?』
『うん、パパ』
コンからパパと呼ばれてしまった。すごい尊敬のまなざしで見られている。照れるな・・・。
って、現実逃避してないでちゃんと考えないと。こんな魔法怖くて逆に使えない。もうちょい魔力を調整して、ちょうどよい強さにしないと・・・。さっきは集められるだけ集めた魔力を石に変換したから、今度は100分の1ぐらいで試してみよう。
よし、威力的にはこれでちょうどいいかな。あとは石に回転つけたり、石の形を工夫すればもっと弱い魔力で高威力の魔法が作れるだろう。
そうやって練習している間に、心の中で「ストーン」と唱えれば木にめりこむ程度の威力の石が発射できるようになった。こうやっていろいろ魔法を作っていけばいいかもしれない。
その後、出来上がった魔法で野兎とか狼を狩ってみた。頭を一発で打ち抜けば楽に狩りができることが分かった。
お、あんなところにも兎が。
『コンも、やる』
『え、やるってなにを?』
返事が返ってくる前に、コンが放った石が野兎の頭に命中。みごとに一発で仕留めた。うそ、俺が1日試行錯誤してやっとできるようになったのに・・・。
『パパ、いっしょ!』
『おお、コンすごいぞ。魔法使えたんだなあ』
『パパ、まねした』
子供って飲み込み早いよね・・・。友達の子供が2歳ぐらいなのにDVDプレーヤー自分で動かしてアニメみてたって話を聞いたことがある。教えなくてもなんとなく覚えるんだね、ってそんなことあるかーーー。
まあ、でも事実は受け入れないといけない。
『コンはすごいね。でも魔法は危ないから、俺がいる前でしか使っただめだぞ』
『わかったー』
しかし不思議だ。コンがこれだけすぐ魔法を操れたってことは、あの親狐もそれなりに強かったはずである。あの狼達にやられるはずがない。そういえば背中に大きな切り傷があった。親狐にあれだけ大きな傷をつけられるぐらいのやつがこの森にいる?
いったいどんな生き物なんだ。