さようならコボルト
新しい仲間が増えてにぎやかになった我が家。トラブルもなく、穏やかな日々が続いてほしいもんだ。転生してまだ1か月も経ってないのに、結構危ないこともしたなあ。フォレストウルフ、ゴブリンキング、トレントとの闘い。コンの親の敵討ち。アースドラゴンさんとの出会い、村の調査などなど。コンもピーちゃんもまだ小さいんだから、もっと遊んであげないといけないなと思ったりしないでもない。
今度こそ、しばらくはのんびり暮らそう。そう心に決めた。
のんびり暮らすといいつつ、体は動かさないと鈍ってしまうので、近くで狩りは続けていた。フォレストウルフも当初よりは数を減らしてきている感じがする。ゴブリンの数が落ち着いてきて、餌が減ったから再び違う場所へ移動していっているのであろう。
「そろそろ拙者の仲間のところへ戻ろうと思うでござる」
『そうか。一人で大丈夫か?』
「こう見えても、コボルトの中では一番強いのでござる。通常の森であれば一人で移動できるでござるよ」
『そうか。無理するんじゃないぞ。また遊びにきてくれ』
「かたじけないでござる。この御恩は決して忘れないでござる」
『ござる、ばいばい』
「・・・元気で」
こうやってみんなに見送られて、コボルトは帰っていった。今更だけど名前聞いてなかったなあ。まあまたすぐに会えると思うけれど。
3日後の夕方。
「ただいまでござる」
「「「「「わおんっっ」」」」
『はやっ。また遊びにきてとはいったけれど早すぎ。しかも仲間も連れてきたのか』
「実は・・・」
コボルトが言うには、今度はオークがこちらに流れてきたらしい。オークは豚の顔をした2mぐらいの人型のモンスターである。食欲が旺盛であり、力も強い。そして筋肉の上にたっぷりと脂肪がついており、ダメージが通りにくい相手らしい。オーク1体を安全に倒すにはコボルト5体で戦わないといけないらしい。
「できれば、こちらに仲間も住まわせてほしいのでござる・・・」
『べつにそれはいいけれど、食料は自分達で調達するんだよ?』
「それはもちろんでござる」
食料は自分たちで調達するとのことだったが、家を建てるのはさすがに手伝ってあげないといけないだろう。「人除けの結界」の柵も広げないといけない。とりあえず大きな犬小屋を1件作って、そこで寝泊まりしてもらって、徐々に広げていくしかないか。
犬小屋といっても、某3Dクラフトゲームでいう豆腐ハウスである。雨風を凌げればいいだろう。
『それにしても、他のコボルトはしゃべれないのか?』
「そうなのでござる。拙者はどうやらコボルトの特異個体らしいのでござる」
『さらっと大事なことをいうなあ。そういえばずっと聞いてなかったけど、名前はあるのか?』
「ないでござる」
『あ、ござる。おかえり』
ちょうどコンが話に入ってきた。コンはコボルトのことをござると呼んでいるし、もうござるでいいかな。
『俺も今度からお前のことをござると呼ぶからな』
「名前を付けてくださったのでござるか?ありがとうでござる!永遠の忠誠を誓うでござる」
そう言うと、ござるは膝をつき頭を下げた。
『名前を付けたぐらいで大げさだなあ』
「名をつけるということはとても大変なことなのでござるよ」
そういえば異世界もので名前を付けると、自分の力を相手に与える、なんて設定があるやつもあったなあ。コンやピーちゃんに名前を付けた時、別に力が抜ける感覚なんてなかったし、おそらくはこの世界ではそういうことはないのだろう。ないと思いたい・・・。
まあ、そんな感じで仲間が、一気に増えた。
タイトル詐欺でした。




