スライムを拾った
人の村を発見し、情報収集した後、家に戻る途中、草原でスライムを発見した。そういえば、異世界といえば定番ともいえるスライム、見るのは初めてな気がする。某有名RPGのようにきれいな水色をしたそれはとてもきれいだった。スライムといえばごみ処理に利用するのが、WEB小説のテンプレである。俺はスライムに近づき、拾って帰ることにした。
素手でもって自分が溶かされたらやばいので、少し厚めの土器を作る。土なら溶かさないかなと思ってのことである。まあ最悪、穴が開いて逃げたとしても、また今度探しにくればいい。
俺は、スライムに近づき、指で突いてみる。もちろんダメージは与えないようにそっとだ。
「ぷよよん」
俺の指は溶かされることもなく、程よい弾力で揺れた。これはいいものだ。おれはやさしく抱きかかえ、土器にいれる。試しに、「イベントリ」に入れてあったフォレストウルフの肉を与えてみる。スライムは10分ぐらいで肉を完全に溶かした。
「ぷよよん♪」
心なしか、スライムはうれしそうである。まあたぶん気のせいだろうけれど。
『ただいまー』
『おかえりー』
「ぴーー」
「・・・おかえり」
「おかえりでござる」
『特になにもなかった?』
「異常なしでござる!」
『いいこにしてたー』
『よしよし、コンはえらいなー』
「ぴーーー!」
『うん、ピーちゃんもえらいぞ』
「・・・おなかすいた」
『あはは・・・、なんか作るね・・・』
急に疲れを感じてしまった。
『ねえねえ、これなに?』
『ああ、スライムを拾ってきたんだよ。ゴミの処理をしてもらおうかなと思って』
『すらいむ?』
『うん、なんでもとかしてくれるんだよ』
『わー、すごーい』
「スライムでござるか。気づけば食料を勝手に食べるので拙者は苦手でござる」
『こんなにかわいいのに?』
「動きは遅いでござるが、気が付けば食料を貯めてある場所に潜り込むのでござる」
『なるほどなあ。うちは「インベントリ」に入れてるからいいけど、それはやっかいだろうな』
スライムを入れる穴作りは後にして、俺は魔法でハンバーガーを人数分作った。俺はチーズが2枚、ミートパティが2枚挟まったやつが好きである。でも照り焼きも捨てがたいけれど、あれちょっと食べにくいんだよね。
「・・・ピクルスいらない」
『はーい、マリアのは抜いておくね』
そういえば村に行ったのに、人間の食生活までは見なかったな。テンプレだと生きるのに精いっぱいで食文化は進んでないことが多いんだけど、この世界はどうなんだろう。マリアは俺の作った食べ物をおいしそうに食べるし、それほどおいしいものがある世界ではない気もするけれども。
ついでにスライムにもあげてみる。
「ぷよよん♪」
やはりうれしそうだ。ああ、癒されるなあ。普通にペットにしてしまいたい。でもきっと閉じ込めないと逃げちゃうんだろうな。
食事が終わった後、直径1m、深さ2mぐらいの穴を掘り、そこにスライムを放した。みんなが誤って落ちないよう、柵も設置した。
その翌日、目が覚めるといつもとは違う感触を感じた。この肌触り、ひんやりとした冷たさ、ほどよい弾力、うん、これはスライムだね。2mの深さの穴でも出てきちゃうのかあ。これはどうしたものかなあ。
それにしても、どうして俺のところに来たんだろう?もしかして俺を捕食しにきたのか??だとしたら恐ろしいぞ。俺はともかく、起きたらピーちゃんとかコンが食べられてたらしゃれにならない。
あれ、こいつ少し大きくなってないか?それに色も少し濃くなってる。
『あにき~。おはよう~』
『ええ、スライムが念話??』
『さっきつかえるようになった~』
『ええ、進化したってことか??』
『わからない~。あにきのまりょく~。おいしい~』
寝てる間に俺の魔力を吸われてたのか?でも体がだるいわけでもないし、俺にはおそらく害はなさそうだ。ドラゴンの魔力を取り込んだせいで、スライムが進化したと考えたらいいのかな。スライムは最弱だからこそ、たった一晩俺の魔力を吸っただけで進化したのか。
『おまえ、体に違和感とかないか?』
『ぜっこうちょ~~』
強すぎる魔力は体を壊しそうなもんだが、だいじょうぶだろうか。これもまたしばらく様子を見るしかないか。念話が使えるなら食べていいもの、ダメなものを教えやすいし、これはこれでいいのかもしれない。
『これからは今日みたいに勝手に魔力食べちゃだめだぞ。あと俺が食べていいといったものだけ食べるんだ』
『え~~』
『ちゃんということ聞けたら、毎日俺の魔力をあげるからな」
『わかった~』
こうして、また一匹、仲間が増えた。
スライムが強くなるテンプレ、大好きです。




