初めての戦闘
さて、これからどうしたものか。水は確保できたけれど、食料はまだ確保できていない。それに俺はまだこの森で、どれぐらい強いのかが分からない。狩る側なのか、狩られる側なのか。ドラゴンなんだし、成長すれば十分強くなるはずだと思うんだけれど、大きくなるのにどれぐらいの年月が必要なのかが分からない。
「鑑定!ステータス!メニュー!!!!!」
心の中で念じてみたけれど、当然なにも出てこない。転生なら転生らしく、神の加護とかついてないのかよ。不親切な神様だなあ。
おっと、考えてばかりいても仕方ない。とりあえず拠点でも作らないとなあ。安心して眠れる場所が欲しいし。
「グギャアアアアアア」
川の上流から、鳴き声というか、叫び声が聞こえる。逃げたほうがいいか??逃げるにしたって、まず確認してからのほうがいいか。
俺は鳴き声がしたほうへと走っていった。そこには大きな狐と3匹ほどの狼がいた。どうやら狐が狼に襲われているらしい。狼たちは狐を囲んでおり、狐は傷だらけになり丸まっている。背中には大きな切り傷が付いている。傷付きすぎてもう逃げることもできないんだろうか。
俺はなぜかその狐を助けたいと思った。弱肉強食は世の理であり、助けるなんておこがましいことである。しかし、その丸まっている狐の姿がなにかと重なり、助けなくてはと思ったのである。
俺は一番近くの狼に近づくと右手で張り倒した。狼の首は変な方向に曲がり吹っ飛ばされていく。すぐ近くにいた狼は俺に気付き、噛み付いてきた。攻撃直後ということもあり、俺はかわすこともできず、右腕を噛まれた・・・・。が、痛くない?俺は右腕を噛んでいる狼を左腕で殴り飛ばした。これまた変な形になった狼が飛んでいく。
こ、これは・・・もしかして、俺ってとんでもなく強いのか?
あと1匹いた狼は逃げていった。どうにか助かった・・・。
俺は狐に近づいて行った。しかし狐はこちらを警戒して威嚇してくる。よく見ると小さな狐を体の下に隠している。だからこいつは狼から逃げられなかったのか。出血が激しく、もうこの親狐は長くないように見える。応急処置をしたいがこの体じゃなにもできない。そもそも近づかせてもくれないだろう。それに、。
仕方がないので、俺は倒した狼を引きずってきて、親狐の前に落としてやる。これで敵意がないのが伝わったらいいのだが。食えるかどうかは分からないけれど、そもそも親狐のほうが狼たちより一回り大きかった。普段なら狼は逆に捕食される側であったはずである。
俺ももう一匹の狼を自分の爪で皮をはいで食べようとしてみた。うわ、ぐろい。内臓ってくえるのかな。川までもっていって洗ったほうがいいかなと思いつつ皮をはいだり内臓を取り出したりしてみた。慣れないことだけれど、切れ味がいい爪と狼をすんなり倒したパワーでどうにか肉だけを取り出すことができた。まあ、狼だから肉なんてほとんどないけどな。
生で食うのはさすがにあれなので、口から火をはいて、ミディアムレアで食べた。なんともいえない生臭さだった。骨もバリバリと食べた。カルシウムってドラゴンでも必要なのかな。
そうこうしてる間に親狐は狼の皮をはぎ、肉や内臓をかみ砕いて子ぎつねに与えていた。なるほど、もう乳離れはしてるからそうやって、ご飯を食べさせるわけね。
そして、ご飯を食べるわが子を見守りながら、親狐は目を閉じた。
翌朝は泣いている子狐の声で目が覚めた。親狐はもう動かなかった。
俺は昨日の肉の残りをかみ砕いて子ぎつねにあげた。さすがに生のものは口にしたくないから焼いたあとのものだけれど、子狐はちゃんと食べてくれた。子狐は親狐に甘えようとするが、もう親狐はなにもしてくれなかった。俺はそんな子狐を撫でてやった。大きくなるまではこいつの面倒は俺が見てやろうと思う。中途半端に手を出した俺のせめてもの償いである。
その後、穴を掘り、親狐を埋めた。掘り返されないようにかなり深く掘った。せっかく狼から助けたのに結局、狼に食われたらばかばかしい。子狐はそれを不思議そうに見ていた。