傷だらけのコボルト
ゴブリン集落を殲滅して、しばらくは平和な森だったけれど、ゴブリンキング達によって追いやられていたモンスターが徐々に森に帰ってきているようである。「人除け結界」の柵により、人間だけじゃなくモンスターも近づいてこないので、家の周囲は平和であるけれど、森の中に入ると熾烈な生存競争が起きてきているようである。
「ぴーーー!!」
『ん、どうしたの?ピーちゃん』
外を飛んでいたピーちゃんが、こちらに向かってなにか訴えかけてきたので様子を見に行くと、そこには傷だらけになった人型の柴犬みたいな生き物が倒れていた。獣人?いやコボルトかな?服も着てないし、全身毛むくじゃらである。
手負いの獣ほど危ないものはないというので、とりあえず遠くから話しかけてみる。もちろん俺はしゃべれないので念話である。
『おーい、大丈夫か?暴れないなら手当てしてやるがどうする?』
「ワオーーーン、ド、ドラゴンでござるか。拙者を食べてもおいしくないでござる」
『おい、落ち着け。聞こえてるか?暴れないなら手当てしてやるぞ』
「し、失礼した。かたじけないでござる」
なんだろう、コボルトのくせにこの口調。微妙にイラっとするなあ。俺はリアカーを「インベントリ」から取り出し、布を敷いた上にコボルトを乗せ、家に連れて帰った。
まずは汚れているから傷を洗わなくてわ。俺はコボルトをお風呂に連れていき、魔法でお湯をだして、コボルトの汚れを落としていく。清潔な布で拭いたあと、傷口がふさがっていく様子をイメージしながら魔法を使った。回復魔法は初めてだったが、どうやらうまくいったようである。
傷はふさがっても体力までは回復していないので、まずは水分を取らせ、食事を用意する。コボルトが何を食べるかはしらないけれど、犬だしきっと肉でいいだろう。
それにしても、俺って傷だらけの奴に出会う確率多いな。また子供でも連れてたりするんだろうか。
肉を食べた後、コボルトは眠ってしまった。事情を聞くのはまたあとでいいかな。
さて、予想外のことが起こったけれど、今日はコン達といっしょに遊べるおもちゃを作ろう。異世界転生といえば、リーバシとかチェスとかトランプがよく出てくるけれど、コン達と遊ぶにはまだ早い気がする。ここは体を動かせるものがいいよね。体を動かせるものといえば、フライングディスクかな?ボールでもいいんだけれど、前世でフライングディスクを投げたらキャッチする犬ってのを映像で見た記憶があるし、犬ではないけれどコン達も喜ぶんじゃないんだろうか。
さすがにプラスチック製は作れたとしてもオーバーテクノロジーな気がするので、魔法で木製のフライングディスクをイメージして作ってみた。
『なに?まるい?どうするの?』
コンは投げる前からフライングディスクに興味津々である。
『これはこうやって投げて遊ぶんだよ。コンは追いかけて取ってきて!』
『わかったー』
フライングディスクは投げる時の傾きによって、まっすぐ飛んだり、右に曲がったりする。最初なのでまっすぐ飛ぶように、地面と水平に投げた。コンは勢いよく走りだし、フライングディスクに追いつくとすかさずジャンプ、口で見事にキャッチした。
『おお、コンじょうずだね!』
『これ、たのしい!!』
「ぴーーー!!」
すごい勢いで尻尾が振られている。それを見たピーちゃんは今度は私もと言いたげに、こちらに飛んできた。しばらく捕るのを競争していたが、スピードではやはり飛んでいるピーちゃんには敵わないようなので、交互で取る約束をし、しばらく遊び続けた。マリアはあいかわらず、それをぼーっと眺めていた。少しは運動したほうがいいような気がするから、投げるのを交代してもらったりもした。
これで終わり、と投げたフライングディスクはコンでもピーちゃんでもなく、なんとコボルトがキャッチした。やはり犬はフライングディスクが好きなんだろうか。コボルトだけれど。
「拙者としたことが、思わず体が動いてしまったでござる」
『気が付いたんだね。体の具合はどう?』
「おかげさまで、このとおり元気になり申した」
俺達は家に戻り、なぜコボルトがあの場所で倒れていたのかを聞くことにした。
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