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竜の転生

 さて、この山の中腹にとても大きな気配を感じるわけだが、他にモンスターがいるのかといえば、そうでもない。きっとこの山はそいつの領域とかになっているから、他のモンスターも寄り付かないのであろう。でもコンは、親狐といっしょに会いに来たことがあるという。この森の主と呼ばれていたものと、この山にいるものとが、交流があったということだろう。いきなり会ってすぐ攻撃されるとは思わないけれど、用心はしていかないといけない。


 一応、俺は気配を殺しつつ、その反応がある場所まで近づいていく。山の中は野兎や、リスっぽい動物、あと小鳥達がのびのびと過ごしているようにみえた。モンスターという外敵があまりいない領域だから、のんびりできているのだろうか。目的の場所まであと100mぐらいに迫った時、目の前に突然白髪の老人が現れた。


「この山になにようじゃ?」

『最近、この山の近くの森に住み付いたものです。親狐が倒れたのでこの子狐の面倒をみておりますが、この子狐がこの山に住んでいるお方に会ったことがあるといったので、事情を説明にきました』

「ふむ、その子狐には見覚えがあるな。少し大きくなったか」

『この子の親狐は人間の刃を受けて倒れたようなのです』

「なに?最近、気配を感じぬと思うておったが、そういう訳じゃったか」


 老人は驚いていたが、遠くからでも多少は親狐の存在を感じられるらしく、気配が消えたことに疑問を持っていたようだ。それにしてもこの老人、ただものではない。俺が思わず敬語を使ってしまうほどだ。


「それにしても人間があの森になあ。ゴブリンにも王が誕生し、あの森はかなり荒れてきておる。どうにかせねばと思っておったのじゃが、まさかあやつが倒れるとはのう」

『この子、私はコンと呼んでいますが、コンを人間に盾にされたようです』

「話は分かったが、その子について、儂がしてやれることはなにもないな。儂に狐が育てられるとは思わぬし。じゃが、困ったことがあれば相談ぐらいには乗ろう」

『ありがとうございます』


 老人はせっかくここまで来たのだからと、老人の棲み処へと案内してくれた。老人はこの山の大きな洞窟に住んでいるようだった。ただの人間じゃないと思っていたが、こんな所で生活していて不便はないんだろうか。と、思っていたら、洞窟に入った瞬間、老人が大きな竜の姿に変わっていった。緑色で、翼はなく、4本足で歩くとても大きなドラゴンである。人間ではないとは思っていたけれど、まさかドラゴンだっただなんて!!!


『ほっほっほ、びっくりしたかの』

『はい、あなたもドラゴンだったのですね』

『あ、おじちゃん』

『今はコンだったか?大きくなったのう。儂はアースドラゴンと呼ばれておる』

「ぴーーーー!!!」


 ピーちゃんは急に大きなドラゴンが現れたのでびっくりして気絶していた。かわいそうに。


『おまえはブラックドラゴンの幼生体じゃな。ドラゴンはな、寿命がくると転生をするのじゃ。ブラックドラゴンは100年ほどまえに転生の儀を行って卵になっておったから、ようやく孵化したのじゃな。見たところ、儂を覚えていないようじゃ。転生の際、記憶を残すか残さないかは指定できるから、あやつは残さずに卵になってしまっておったのじゃな』

『私以外にブラックドラゴンというのは存在しないのですか?』

『うむ、真にドラゴンと呼べる存在は5体しか存在しないのじゃ。儂もその1つじゃ。ブラックドラゴンの眷属とよべる種は存在するが、ブラックドラゴンそのものは常に1体だけじゃ』


 なるほど。俺はなんで生まれた時、ぼっちだったのかと思ったら、そういう理由だったのか。子供にしては力が強いと思ったら、世界に6体しかいない真のドラゴンでからというわけか。


『知らぬなら教えておこう。ブラックドラゴンは全ての魔法を操ることができる種じゃ。イメージすれば魔力をもとにどんな物でも魔法で生み出せるし、どんな事象でも起こせる。もちろん膨大な魔力は必要とするがな。今は幼生体じゃから、魔力が少ないだろうが、魔力は使えば使うほど増大する。今からしっかり魔法を使うことを意識しておくがよい』

『はい、ありがとうございます。ところで他のドラゴンはどのような力を持っているのですか?』

『それぞれの属性を司さどる力じゃ。儂なら土属性じゃな』


 教えてもらえないかと思ったけれど、あっさり教えてもらえた。俺が万能型だとしたら、アースドラゴンは土属性特化型ってことだろうか。


『それよりもお主に頼みがある、森に作られたゴブリンの集落を殲滅してくれないだろうか』

『ええ、私はまだ生まれたばかりですが、そんなことができるのでしょうか?』

『幼生体とはいえ、ブラックドラゴンじゃ。たかがゴブリンの特異個体にやられるわけがなかろう』


 たしかに、ドラゴンがゴブリンに負けたら恥ずかしいよね。でも子供達もいるし、かなり不安だ。


『なに、そいつらは儂がしばらくの間だったら面倒をみておいてやろう。幸いにもこの辺は儂を恐れて魔物も少ない。遠くにいかないように見ておれば平気じゃろうて。それに転生したばかりでまだ勘が取り戻せてないだろうが、集落1つ潰せば、それも取り戻せるじゃろう』


 なんかいいように使われてるような気がしないでもないけれど、どっちみちゴブリンを放置して迷惑を被るのは俺達のほうである。力的には楽勝と言われているし、戦闘訓練にもなるだろう。ここは素直に引き受けよう。


『わかりました。集落を殲滅してきます』


 翌朝、俺は一人でゴブリンの集落へと向かうことになった。

次回、無双?

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