第9話 またかよ
俺は今日勉強をしに来たんだよなぁ。
それがなぜ戻ってきたら猛と金髪の子が俺らのテーブルでケンカをしているんだ。
訳がわからんし梓ちゃんと赤坂さんがかわいそうだ。
戻りずらい、本当に戻りずらい。
一旦下のトイレで時間を潰そうかなと考えてると猛に気付かれた。
「おーいけいすけっちぃ。
戻ってきてたんならさっさとこっちこいよぉ。」
行きにくくしてる本人がメチャクチャ陽気なんですけどぉ。
アイツ何なの!?バカなの!?
バカが治らないただ1人の人間なの!?
絶対怒りましちゃうよあの子。
「何なのあの眼帯した中2病みたいなやつ!
私は猛と話してるの!」
バンッとテーブルを叩いて大声をあげる。
うわぁファーストコンタクトが最悪だよぉ。
これを挽回することは不可能に近いだろう。
まぁしなくてもいいか。
とりあえず俺は速やかにそして彼女の死角になりそうな所へ座った。
全くどうしてこうなったのだろうか。
縮こまってる姿もカワイイ梓ちゃんに状況を説明してもらった。
彼女の名前は黄瀬恵子というそうな。
何でも今日は猛とデートの約束があったのに猛が忘れてしまっていたらしい。
そしてたまたま入った店に猛と女の子が一緒に居て誤解が生じたとな。
フムフムなーるほど。
他所でやってほしいなぁ。
だがここで何もしなければ彼女は永遠に怒るだろう。
猛とはいうとめんどくさそうにしている。
よし俺が一瞬で解決しようか。
やってやるデス!
梓ちゃん俺逝くよ!
俺は安い気合いで立ち上がり彼女の隣まで行き素早く土下座のモーションに入り。
「すいませんしたぁ!!」
プライドは捨てたはずなのに恥ずかしい!すごく恥ずかしい!
周りがシーンとしてから彼女が俺に強めに言い放った。
「何してんの?
私は猛に謝って欲しいのわかる?
あんたの安い土下座なんていらないんだよ!」
お、恐ろしい!
俺の神風アタックが通用しないだと?
恐すぎて席に戻れねぇ。
てかこれ猛がやれよぉ。
俺の勇気が俺かけたときに天使が舞い降りた。
「す、すみませんがもうこの辺で許してもらえませんか?」
声震えてるじゃねーか!
俺や猛がみっともなく思えるぜ。
「何であなたの言うこときかなきゃならないのよ!」
あぁやっぱりダメかぁ。
やはり猛が解決しないといけないだろう。
てか梓ちゃんにこんなことさせるとは俺は情けないぞ猛と思ったがこいつもちゃんとしていた。
「おい恵子いい加減にしろよ。
確かに俺が悪かったがあずさっちとけいすけっちにそんな言い方してんじゃねーぞ。」
低い声で威嚇するかのような感じだった。
まぁ確かに元々お前の責任だな。
「もういいだろ。
それでも許せんなら俺なんか忘れてくれ。」
マジか!?
潔過ぎて鳥肌立つほどかっこいいな。
さすがに引いてくれるだろ。
「もう猛のバカァ!!
そうやっていつもいつもズルいよ!」
まさかの大泣き。
こ、この子は情緒不安定なのだろうか。
「わりかったよ。
そんじゃみんなぁ俺こいつ送ってくっからまたなぁ。」
さすが女慣れしてるイケメンは違うな。
腕の中に優しく抱き込みナデナデをあっさりこなすとは、羨ましくも遠い存在だと思ってしまった。
しかしそれにしても嵐のような時間だったなぁ。
20分くらいなのに異様に疲れたよ。
梓ちゃんと赤坂さんもホッとして疲れがどっと出ちゃってきてるなぁ。
それでも梓ちゃんは優しかった。
「さやちゃんそれと神くん大丈夫?」
大丈夫って聞くのは俺の役割だろうが!
気を使わせてしまった。
「大丈夫大丈夫!
それより赤坂さんがヤバくない?」
そう彼女は一言も喋らなかった。
そんなに恐かったのだろうか。
「だ!大丈夫だよ!?
ただちょっと疲れたから先に帰るね。
ハハハー。」
といきなり立ち上がり逃げるように去って行った。
一体どうしたのだろうか。
「梓ちゃんも赤坂さんと帰った方がいいんじゃない?
何か様子がおかしかったような。」
「そうだね。
全然勉強出来なくてごめんね。
またね!」
「うんまたぁ。」
またね!かぁ。
またあるっていう安心感に俺は少し嬉しさを噛み締めていた。
さて、俺は少し休んでから行こうかな。
ニヤケながら俺は座ったが何か椅子がヌルヌルしてるなぁ。
ここは確か赤坂さんが座ってた場所…マジかー。
我慢してたのかなぁ。
ホントは今日の勉強会で好感度を上げる目標があったのに俺は今椅子を拭いている。
周りがまた見ている。
恥ずかしいからさっさと退店しよう。
外に出ると夕陽になりかけてた。
何か今日1日1人で期待して空回って疲れたなぁ。
切ねぇなぁ。