第5話 少し前に進めたのだろうか
俺は今ピンチに陥っている。
何故不良A、B、Cみたいな奴等にボコられているかって?
それでは30分前に戻って説明しよう。
いつもの席に座りいつものコーヒーを頼んだ。
梓ちゃんは俺の前に座ったが俺と目を合わせようとしてくれない。
それほど緊張しているのだろうか。
喋りだす前にコーヒーをイッキ飲みしてもう一杯頼んだ。
「そ、それで今日は一体どんな御用件でござそうろう。」
やはり梓ちゃんは変わらない。
この喋り方と笑顔、そして若干緊張混じりの声色。
天使とはどれをとっても最高級のかわいさなのね。
「それじゃ昨日のことを最初に謝らせてくれ。
昨日はごめんなさい。それと匠のこと悪く思わないでくれっていうのは厚かましいけど俺はアイツに世話んなってるから今回は許してほしい。」
「わかってる。
匠くんも猛くんも蓮ちゃんも、みんな神くんの事が大切なんだなぁって伝わってきて少し嫉妬するぐらいうらやましいよ。」
そんなに見ていてもらえたのか。
逆に恥ずかしくなるけど悪い気もしない。
「何だかすっきりしてトイレに行きたくなってきたよ。」
「うん。神くん行っトイレー。」
あの子は兵器だ!
俺の心が今までないくらいに高ぶっている。
少し落ち着けぇ。
スーパー賢者タイムを発動しよう!
心を落ち着けて席に戻る。
「それで梓ちゃんはこの眼帯のことどこまで知りたいの?」
「そんなにフランクに言うの?」
まぁ昨日あれだけやっといて今のは軽すぎたかな。
「確かにこの眼帯の下は簡単に見せられるものじゃないし見せても気を悪くするもんだから、できれば一生見せたくはないかな。
でも説明ならば出来る…と思う。」
「神くんのやりたいようにしてもらえればいいかな。」
やはり梓ちゃんは優しい。
俺はだからそんな。
「梓ちゃんが好きになったのかもしれない。」
「へっ?」
ハッ!心が口に飛び出すなんてラノベか漫画の世界だと思ってたけれどすごい恥ずかしいもんだ。
梓ちゃんの顔を見れねぇ。
「ごめんね神くん。
私は人に好かれるような優しい人間じゃないの。」
「そ、そっか。」
終わったぁ。
目の前が灰色に。
カランコロンという音が妙にでかく聞こえた。
「おいあそこにメチャかわいい女の子いんぞ。」
放心状態の俺の所にその声のやから達はやってきた。
いかにもという不良ABCじゃないか。
なんだってこんな日に。
「ねぇ君かわいいから俺らと遊ぼうぜぇ。」
「すみません、今大事なお話の途中ですから。」
梓ちゃんは大人だ。
俺もフラれたけど最後くらいかっこつけるか。
この程度なら俺一人でも楽勝だしな。
「おいそこの不良ABC!
梓ちゃんが困ってるじゃねーか。」
「何だぁてめー?
俺らとやろうってのか?」
俺はゆっくり立ち上がり梓ちゃんの手を取った。
「バカかお前らは。
逃げるが勝ちってなぁ!」
そう!何を隠そう俺は学校では頭脳明晰、運動神経抜群少年なのだからな。
あいつらは追い付けるはずがない。
と思っていたが以外と梓ちゃんがどんくさかった。
「よぉクソ野郎。
手間かけさせてんじゃねーぞこら!」
思いっきりボディに重い一撃を入れられた。
間髪いれずに攻撃の嵐。
ちくしょう、ダセぇな俺は。
梓ちゃんを守ろうとしてこのザマか。
「よぉーけいすけっちぃ。
何だか楽しそうなことしてんなぁ。」
猛の声が聞こえる。
もう走馬灯きちゃったかぁ。
気がついたら不良ABCは倒れていた。
猛が俺の顔を覗きこんで笑いかけた。
「これくらい一人で倒せよけいすけっち。」
「眼帯とんねーと勝てねーしそれに…。」
梓ちゃんにはこの下はみせらんねーよなぁ。
「んじゃ帰りますか。
またねあずさっち。」
猛が空気を読んだかのように言った。
梓ちゃんはちょっと泣いてた気がする。
フったのに俺のために泣いてくれたのは嬉しかった。
初めての失恋は良い思い出な気がした。
「あのその猛くん。
神くんのこと守れなくてごめんね。」
「いいってことよ。
てかあずさっち本当はけいすけっちのこと」
「ダメだよ。
もう手が届かないんだから。」
「そっか。」
「おーい猛ぅ肩かしてくれよぉ。」
「あいよ。」
また喋れなかった。
フラれたし次に時間を作るのは難しいし。
ハァァァ、ホント今日は痛ぇな。