第15話 腐女子黒薙楓現れる
黒薙楓からデートに誘われて早三日。
土曜日になってしまった。
普通デートに誘ったらその日までソワソワしたり話かけ方など照れて変わってしまうと思うのだが、黒薙楓は誘った次の日からも俺を中二病オタクと罵っていた。
だからこのデートということ事態罠なのではないかという仮定を抱いている。
現に今も時間指定したのに一時間も遅れている。
まさかこの状況がドッキリで何時間でも待ってるかどうかの賭けをしているのではないかと思っていたがその疑問は砕けてくれた。
「待たせたなぁ神!啓介ぇ!」
大きな声で向こうから歩いてきたのは痛い格好をしている黒薙楓だった。
黒のフリフリのドレスで日傘をさし、尚且つ俺と反対の方に眼帯をしていた。
正直帰りたいと思ったのは言うまでもない。
「ずいぶん…そのぉ高貴な格好をしてきたな。」
「むっ?これがデートにふさわしいとお嬢様が選んでくれたのだが。
あっ眼帯はお前とお揃いにしてみたんだ!似合うだろ。」
「あっうんとっても最高。」
服装は痛いがそれよりも今日の黒薙楓は変だ。
学校での喋り方や態度が違った。
いつもより砕けているような気がした。
「それよりさっさと行こうではないか!もうすぐ私の見たい映画が上映されるのだからな。」
「ハイハイお姫様。」
こうして俺と黒薙楓のへんてこりんなデートが始まったのだった。
それにしてもまずは映画からとはずいぶん本格的だな。
いやこれも罠かもしれん!用心はしておこう。
だがその用心も無駄だったのかもしれない。
黒薙楓が見たかったという映画の題名が魔法青年ゴリキュアという謎のコンテンツだった。
しかもサブタイトルが俺のステッキで浄化しちゃうぞなんていうおぞましさ。
「な、なぁホントにこれが見たかったのか?」
「あったり前だ!テレビ版でもギリギリの放送コードだったんだ。
劇場版ならイケるとこまでイクかもしれないというワクワク感でたまらないぞ!」
黒薙楓はいわゆる腐女子だった。
「そっか。
なら終わるまで外で待ってるから楽しんデデデデ。」
「何を言っているんだ神啓介ぇ。
貴様の分も買ってあるんだ!私と楽しもうではないか。」
「わ、わかったからその腕を俺の知らない方向に曲げようとするのはやめ、ああああああー。」
最悪の時間だった。
ゴツい男たちの熱くて暑い戦いを二時間半も見せられるとは思わなかった。
だが黒薙楓は満足してなかった。
「さぁもう一度見よう!」
「もう…許してくれ。」
そんな俺の願いは通じるわけもなかった。
昼食をとる頃にはもう3時になっていた。
映画館を出てすぐの所だ。
というより俺が疲れて歩きたくなかっただけなんだが、それを良しとしない黒薙楓だ。
「あの程度で疲れはてるとはな。
あと2回は見たかったというのに。」
黒薙楓は頬をふくらませた。
少し可愛いと思ってしまった俺はなんて節操がないんだ。
てかあのアニメは1日に何回上映してんだよ。
いや、俺が受け入れられないだけであって世間一般では面白いと思われているのだろうか。
疑問を抱いた俺に声をかけてきた人がいた。
「あれ神さんですか?
奇遇ですねこんなところで会うなんて。」
梓ちゃんではなく瓜二つの妹。
環ちゃんだった。
またあらぬ誤解が生まれたのは言うまでもない。
神よ、俺を早くしがらみから解き放ちたまへ。




