第12話 砕け散る覚悟
月曜日、いつもなら梓ちゃんに会えると思えてウキウキしていたがあの絶望をまだ引きずっていた俺は全く眠れなかった。
やべぇよどうやって顔合わせよう。
梓ちゃんはテストで手がいっぱいだろうし。
この絶望ループの解決策が見つからない。
いやもうフラレているのは確定事項だろう。
しかし、まだ諦められない自分がいる。
やはり自分で確かめて砕け散ろう!
そう決意して今は金曜日の朝。
何やってんだよ!これじゃ絶望ゲージがカンストしてしまうじゃないか!
とはいっても初恋は男の人生をなんとやらって言うから慎重になってしまう。
この4日間も緊張しすぎて。
「おはよう神くん!今日のテスト範囲なんだけど
。」
「おおおおはよう梓さんちゃん。
あれれ?何言ってるんだろテヘヘ!まっまた後で。」
とこのように逃げて今日に至るのである。
自分から聞く勇気を出そうとしても顔を見た瞬間にかわいい!……じゃなくて砕け散るのがよしとしない自分が邪魔をする。
なんてうっとうしい自分なんだ!
頭を抱えてる俺に天使が話しかけてきた。
「ねぇ神くん。
最近悩んでるみたいだけどどうしたの?」
「ああああ梓さん!?
いやまぁ悩んでるというよりそのあのただ絶望してるだけぇなぁんて。」
「何か無理してるっぽいからその…相談くらいには乗ろうかなぁとか思っちゃったり。」
神はまだ俺を見捨ててはいなかった!いやもう敗れさってはいるが正式に敗れ去るチャンスを与えてもらったのだ。
この好機見逃すほど俺は甘くないぜ。
「うん悩んでる!超悩んでる!」
「あっその神くん?
手を握られると恥ずかしいよぉ。」
つい嬉しすぎて手を握っていた。
もう握れないかもしれないからこの温もりを覚えておこう。
そして放課後にいつもの喫茶店で話をしようということになった。
最後のテストが終わった瞬間に俺は教室を飛び出した。
「フウィー終わったぁぁぁ!そんじゃ遊びに行こうぜ!」
「啓介くんならダッシュで出ていったよ猛くん。」
「どうせあのビッチとまたなにか約束でもしたのでしょう。」
教室を出るときに猛に話しかけられたような気がしたがそんなことはどうだっていい!今は目の前の壁にただ砕け散るだけだ。
いらぬ誤解を招かぬように待ち合わせ場所は喫茶店にした。
先に着いていつものコーヒーを頼んで梓ちゃんを待った。
待ってる間は地獄だった。
いつも以上に心と体がソワソワしているのに梓ちゃんが来ることを拒んでいるかのようだ。
聞いてしまえば今まで通りに接する自信がないしだからといって諦めるには俺は時間をようするだろう。
だが男として一区切りつけるべきだろう。
やってやる!やってやるぞ!
決意を固めた瞬間にイチャイチャ声とともにドアがカランコロンと開いた。
カップルはイチャイチャしながら俺の隣の席に座った。
あぁうらやましい!妬ましい!うざってぇ!心を落ち着かせるためにコーヒーを口に流し込んだ。
だが同時に気になってチラ見したらコーヒーを吹き出してしまった。
隣には梓ちゃんと茶髪の男が楽しそうにじゃれあってるではないか。
一体どういうことなんだ!?それとも俺の悩みに気づいてハメられたのか?
どちらにせよこんな感じで思い知らされるとは思っていなかった。
ある程度覚悟していたが耐えきれない衝動だった。
そしてまたドアがカランコロンと開いた。
入って来たのは梓ちゃんだった。
「お待たせ神くん!」
えっ?俺の目の前に梓ちゃんがいて隣の席にも梓ちゃん?一体どういうことだ。
頭の中が絶望から混乱に変わった。
しかし解は直ぐに出た。
「あれ?梓お姉ちゃん?
偶然だねこんなところで会うなんて!」
「あっ!環ちゃんと修ちゃんも!ホントに偶然だね。」
「そうだ神くん!紹介するね。
こっちの私に似てる子が私の双子の妹の環ちゃん。
んでこっちの強面な男の子は私たちの兄の修ちゃん。」
「よろしく!」
なるほどねぇ。
確かによく見れば制服も違う。
どんだけテンパってたんだよ俺は。
謎は全て解けた!俺にはまだ希望は残されてるってことか。
なんだったんだろうかこの1週間。
砕け散る覚悟とか全てが徒労に終わったのか。
それと同時に違う絶望が俺を襲う。
もう悩みないんですけどぉ。
だが梓ちゃんは逃がしてくれなかった。
「今日は神くんの悩みを全部聞いてあげるね!」
めちゃくちゃキラキラした目で俺を見てきている。
ええいどうにでもなれぇ!!