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デートをしてください~前編~


 空は青く途切れ途切れに雲が浮いている。時々太陽を隠して日差しを調節してくれているようだ。風も穏やかで今日みたいな日をデート日和というのだろう。

 かくいう奈緒美も本日はデートの約束をしていた。相手はイケメン男子ではなく幼なじみのギャル系女子、莉子であるが。

 近所のショッピングモールへ買い物へ行くだけなためデートと言えるのか分からないが莉子はデートデートとはしゃいでいた。

 デートをしてくれ、そうねだられたのはテスト勉強をしている時だった。休日に遊びに行くくらいテストの結果など関係なく歓迎なのだが莉子はテストでいい点を取ればデートが出来るとやる気になったようで悪い提案ではなかった気がする。


(莉子ちゃんのおかでで私も赤点は免れたし……)


 やる気の莉子にかっこ悪いと思われたくなくて奈緒美も莉子と一緒に真面目に勉強をした。

 そんなことを考えていると調度バスがやってくる。それに一人で乗り込んだ。休日の午前、車内はそこそこ込んでいる。

 最初、家も近いのだしわざわざ待ち合わせをしなくても直接莉子を迎えに行くと言ったのだがデートに待ち合わせは必要! と言われ現地で待ち合わせをすることになった。さらに同じバスにならないよう何時のバスに乗るかも事前に打ち合わせ済みだ。

 流れる街の景色を見ながらぼんやりしているとあっという間に目的地に到着する。周りの乗客たちも目的地が同じなのかバスか続々とバスから降りていく。

 待ち合わせの場所は奈緒美が降りたショッピングモール前のバス停だ。予定では莉子の方が先に着いているはずで辺りを見回す。


「おはよう! 奈緒美ちゃんっ」


 きょろきょろと莉子を探していると先に奈緒美に気付いたらしく後ろから声が掛けられる。


「莉子ちゃん、おは……よ、う……」


 語尾が段々と掠れていったの莉子の格好に面喰ってしまったからだ。

 これでもかというくらい短いショートパンツ。そこからはスラリと細すぎない程良く肉の着いた太ももが伸びてほんの少し素肌を見せてそれ以降はニーハイソックスで隠されている。

 足元は少しヒールのあるパンプスで普段は奈緒美の方が高い身長を少しだけ抜かしている。

 トップスは胸元まで大きく開いたTシャツにデニムのジャケットを羽織っていた。


(背伸びしたい、年頃なのかな)


「奈緒美ちゃん? どうしたの。バス酔いでもした?」

「ううん、平気っ。それより待たせてゴメンね」


 それに比べ奈緒美は薄ピンクのブラウスにカーディガン、黒のスキニーにスニーカーで莉子の隣に並ぶと地味さが際立つ。


「全然待ってないよ。今日何しようか考えてたらあっという間だった」

「ならいいんだけど。じゃあ、どうしよっか」


 今日の予定のことは何も決めていない。莉子が自分に任せろと張り切って奈緒美が知っているのは待ち合わせ場所と時間だけだった。


「あのね、映画とかどう?」

「いいね、デートっぽい! 何か見たいのあるの?」

「気になってるのが何個か。一緒に決めよ」


 そう言って映画館へ歩きだす。ショッピングモールには映画館やゲームセンター等があり自分らのような学生や家族連れで賑わっていた。

 そういえば莉子とこのように出掛けるなんていつぶりだろう。小学生のころは互いの家を行き来して遊びに行くと言っても近所の公園だった。そしてある程度のお小遣いが貰えるようになった中学時代にはそれぞれの友人と遊ぶようになっていたのでよく考えると莉子の言葉を借りると初デートということになる。


「あ、これこれあたしが見たかったやつ」


 映画館に着くなり莉子がはしゃいで指差したのはペンギンが主人公の海外CGアニメだ。


「あー知ってる。有名な監督さんだよね」

「それかあっちもデートっぽいかなって」


 次に指差したのは今が旬と言われている若手俳優たちが出演している少女漫画が原作の学園物の恋愛映画だった。ドラマなどはあまり見ないが原作が漫画ということもあり知っている作品だ。


「あぁ、これもCMとか宣伝凄くしてるよねぇ」

「あたしはどっちかがいいなかって思ったんだけど。奈緒美ちゃんは恋愛モノとか興味ないよね……」

「そんなこと……。莉子ちゃんの好きなのにしようよ」


 そんなことないと言いたかったが莉子の言う通り映画やドラマ、漫画でも少女漫画やラブコメ等の恋愛モノが苦手だった。モテないオタクのひがみかもしれないが平凡な女子がいきなり俺様イケメンにモテて実は幼なじみもヒロインのことが……なんて都合のいい話があるはずがないし主人公が男であっても同じだ。

 そもそもどんなにイケメンでも俺様なんて上から目線の我が儘男にときめくことができるとは思えない。


「あの……ああいうのの方が奈緒美ちゃんは好き……?」


 申し訳なさそうに莉子の指差す方を見るとそこには夕方の女児向けアニメのパネル立っている。


「あ……アラレちゃんとミゾレちゃん……」

「奈緒美ちゃんは右と左の子どっちが好きなの?」

「えっと、私は敵の幹部の方が……ってせっかくだから莉子ちゃんの見たいのにしようよ」


 もちろん嫌いな作品ではない。けれど部活もしていないため暇な夕方にたまたま見ているという程度だった。映画のオリジナルキャラの声優のファンなため気になってはいた作品だが莉子は楽しめないだろう。


「気使わないでよ! あたしは奈緒美ちゃんと一緒に映画を見れるだけで嬉しいから……」

「でも見たかったのあったんでしょ? 私は特になかったしさ、莉子ちゃんこそ私のこと気にしないでよ」

 

 そう言うと莉子は言いにくそうに顔を背ける。


(そんなにさっきの映画見たかったのかな……)


「あたしは、ほんとに何でもよくて……。ただ奈緒美ちゃんと一緒に映画を見て感想を言い合ったり、何て言うか同じものを共有したかったっていうか……そのっ」


 どうやらピンとくる言葉が見つからないらしくゆっくりと言葉を紡いでいく。けれど莉子が言いたいことは伝わってきた。


「えっとそれは恥ずかしくいうと私と一緒なら何だって構わない的な……?」


 そう言った瞬間莉子の顔が赤く染まった気がする。


「はぁっ!? なに言ってるのっ。ってか最初からそう言ってるじゃん! あたしは奈緒美ちゃんのこと好きなんだから一緒にいれるだけで……って何言わせるのっ!」

「あはは……ごめん……」


 後半はほぼ暴走して勝手に口走ったのでは? ということは口にしないでおいた。

 ふと好きという言葉が気に掛かる。この子の好きとはどういうことなのだろう。

 莉子の奈緒美が好きという気持ちに偽りはないと思う。一緒に居るとそのオーラがひしひしと伝わってくる。だがそれが恋愛としての好きとはやはり思えない。

 姉になってと言っていたのだし幼なじみのお姉さんに憧れているだけだろう。

 だどしたら恋愛としての好意とはどのようなものなのだろう。莉子の見たがっている映画を見れば分かるのだろうか。その前に自分たちは女同士なのだから映画を見て参考になるのかは分からないが。


「じゃあさ、間を取ってペンギンのやつにしようよ」

 

 ここで譲り合っていてもただ時間が経ってしまうだけだ。それなら莉子も見たがっていて奈緒美も興味のある『ペンギン大冒険~南極からの旅立ち~』の方がいいだろう。


「いいの? 奈緒美ちゃん」

「うん。上映時間も調度30分後みたいだしさ。それに私も莉子ちゃんと見られるならなんでもいいよ」


 これは本音だ。デートと言われた時は少々驚いたがこうして休日に遊びに誘ってくれるなんて数か月前までは考えられなかったし昔のように出掛けられるのが素直に嬉しかった。


「あ、あたしチケット買ってくるっ。奈緒美ちゃんはここで待ってて!」

 

 そんなことを考えながら言うと莉子は逃げるように列が出来ているチケット売り場の券売機へ走って行った。


「あっ莉子ちゃんっ……」


 チケット売り場にはそこそこ列が出来ていて莉子は奈緒美を並ばせないように気を使ってくれたのだろう。

 しかし莉子が1人で並んでいる時間イコール奈緒美も1人で時間を持て余すことになってしまう。


(2人で並べばお喋り出来て待ち時間も気にならないと思うのに)


 追いかけようとも思ったがせっかくの莉子の思いを踏みにじってしまいそうで申し訳ない。それよりも素直に待っていて「私のために並んでくれてありがとう」と言ってあげた方が莉子は喜んでくれるだろう。

 いや、それとも1人で並びたかったのはこんな地味な女と友達と思われたくなかっただけなのでは……。今こんな所で1人で突っ立って周りからぼっちだと思われてる……? なんて嫌な妄想ばかり浮かび上がる。


(莉子ちゃん……まだかな……)


「奈緒美ちゃん、お待たせっ。見やすい席取れたよ」

「莉子ちゃぁん……全然待ってないよぉ……」


 まるでテレパシーが通じたかのようなタイミングで莉子が戻ってくる。何か莉子にかっこよく言いたいことが合った気がしたが戻ってきてくれて力が抜けそんなことすっかり忘れてしまった。


「え? 何、どうしたの? あ、人多いもんね。疲れちゃった?」

「ゴメン、何でもないよ。あ、お金後でいいかな」

「ううんっあたしが誘ったんだからチケット代くらい気にしないで」

「ええっダメだよ。そんなの」


 もし自分たちが社会人で莉子がバリバリ稼いでいるのなら素直に奢られていたのかもしれない。だがまだ学生で莉子のお金は莉子の親のお金だ。


「ち、違うの。今日奈緒美ちゃんと遊ぶって言ったらママがこれで遊びなさいってお小遣いくれて……。ママも奈緒美ちゃんが大好きだからあたしたちが仲良くするの嬉しいみたい」

「うーん……そういうことなら……。今度おばさんにお礼しに莉子ちゃんの家に遊びにいかなきゃね」

「うんっ。ママも喜ぶよ。だからね、兄ちゃんと結婚して義理の娘になったらもっと喜ぶと思う!」


 そうだった。好き好き言ってくるため忘れていたが決して恋人になってほしいわけではないのだ。莉子は奈緒美と兄が結婚して義理の姉になるのを望んでいる。


「あはは……そうかな。そんなことより飲み物とか買う?」

「うんっあたしメロンソーダ!」

「じゃあ今度は私がお金払うよ。買ってくるから莉子ちゃんは待ってて」


 何とか話を逸らして先程とは逆に奈緒美が莉子を置いて売店の列へ駆け込んだ。

 

(そもそもなんで莉子ちゃんは私にお義姉ちゃんになってほしいんだろう)


 今のままでも幼なじみで近所に住むお姉さんなのに。莉子は義姉になった奈緒美に何を望むのだろう。好きだから他の男には渡したくないと言っていた。義理ではあるが姉と妹という肩書がもらえれば満足なのだろうか。

 そんなことを考えながらメロンソーダと自分の分のカフェラテを買って莉子の元へと戻っていった。

 

 変な事を考えていたせいかその後見た映画はあまり頭に入ってこなかった。




かなり久々の更新ですみません……。


2人がデートしているショッピングモールはイ○ンです。

後編ではお買いものしたりご飯を食べたりする予定です。


早くこの2人をくっつけたいという思いもあるのですがじりじりと焦らしたいという思いもあり、奈緒美の同級生の親友を莉子のライバルにしたいという気持ちもあり……。


とにかく次は早めに更新出来るよう頑張ります!

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