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プロローグ ~2~

「おねえちゃんになって!」


 しばらく揺れるおっぱいを見ていたがふと我に返る。


「えっと……どういうこと?」


 姉になってとは漫画の中の女子校で見るアレのようなものなのだろうか。兄はいるがやはり女の子は姉に憧れているのだろうか。友人から姉と買い物に行ったとか、妹と服を共有したとか聞くと羨ましくなることもあった。

 莉子とは子供の頃から仲が良くて一人っ子の奈緒美にとって妹のような存在だった。小学校低学年の頃は武夫も含めてよく3人で遊んでいた。武夫はそのうち同学年の男子と遊ぶようになったが奈緒美は同級生よりも莉子と過ごすことが多かった。

 だが中学生になりそれも減って莉子も中学生になった頃には各々クラスメイトと遊ぶ方が多くなっていた。そして奈緒美が高校に上がると顔を合わせた時に挨拶する程度の中になってしまった。さらに莉子がこんな外見になってからはほとんど口もきいていない。


「あ、急にゴメンね……」

「いや、それは平気だけど」

「あたしね奈緒美ちゃんが好きなの」


 人生で、初めて女の子に告白された。そもそも告白されること自体初めてだ。いやいやと小さく首を振る。これは告白ではない。


「私も莉子ちゃんのこと好きだよ?」


 今の茶髪姿は少し怖いけどと心の中で付け加える。見た目は変わったが莉子は莉子だ。それくらいで嫌いになることなどない。


「違うよっ! あたしは奈緒美ちゃんと手をつないでデートしたりチューがしたいの! 恋人になりたいのっ」


 どうやら本当に告白だったらしい。年下の、美少女幼なじみから告白される。漫画やラノベの世界のようだ。しかしその主人公は大体さえない男子。さえないまでは同じだが性別が違う。さえない女子が告白されるのは少女漫画の方だ。

 けれどその場合相手は俺様なイケメンだ。

 今目の前にいるのは美少女。いくら少女漫画のヒロインでも美少女に告白されたことなどないだろう。


――その点私は……。


 勝ったな、と心の中でガッツポーズをするがおそらく少女漫画のヒロインには相手にされていない。


「奈緒美ちゃん、兄ちゃんのことは好き?」

「武夫くん? もちろん好きだけど……あ……」


 好きというのはもちろん友人としてという意味だ。武夫とは今でも漫画の貸し借りをしており仲のいい友人の一人だ。

 幼なじみと恋に落ちて、さらにその妹まで絡んでくるのなんて漫画の中だけだろう。

 今は告白されたばかりなのだしいくら彼女の兄でも他の男を好きと言ってしまってデリカシーが無かっただろうか。

 莉子は胸元で両手を握りしめて震えている。


「莉子ちゃん、あのね……」

「よ……よかった!」


 どうやらいらぬ心配だったらしい。莉子は目をキラキラさせて自分が好きと言われたかのように嬉しそうだ。

 そしてまた耳を疑うような発言をしたのだ。


「じゃあ兄ちゃんと結婚も出来るねっ」

「は、はい……?」


 思わず変な声が出たしまぬけ面を晒していただろう。けれど意味が分からないのだから仕方がない。

 そんな奈緒美の気持ちを知ってか知らずか莉子を話を進める。


「奈緒美ちゃんのこと好きだけど女同士だし……。駄目だって分かってるの。でも男の人にはとられたくないし……。でもね、思いついたの」


 何を思いついたのか、そんなの聞かなくても予想できた。その言葉から始まったのだから。


「兄ちゃんと結婚したらあたしのお義姉ちゃんでしょ? それだった恋人じゃなくてもずっと一緒にいられるもん」

「で、でも結婚って……。もし私がよくても武夫くんが」

「大丈夫! 兄ちゃんモテないし。奈緒美ちゃんがお嫁さんになるのを嫌がる男なんていないよ」


 一体自分は彼女の目にどう映っているのだろう。見た目も中身も平凡でなぜこんなにも好いてくれるのか分からない。


「うーん、莉子ちゃんの言いたいことはまぁ分かったけど」


 取り合えず何が言いたいかは分かった。理解は出来ていないのだが。


「じゃあっ、兄ちゃんと結婚してくれる?」

「それとこれとは……」

「そうだよね。結婚って大事なことだし今すぐ決めなくてもいいよ」


 物分かりはいいらしい。自分の意見はあってもそれを人に強要することはない。昔と変わっていないところだ。

 だがそう言ったときの表情は少し寂しそうだった。泣き虫だった彼女がこんな顔を見せなくなったのはいつからだろう。


「あのね、いきなり武夫くんとは結婚できないし、お義姉ちゃんにもなれないけどさ……。とりあえずさ、昔みたいにまた一緒に遊んだりしない?」


 小学生の頃のように姉妹のように過ごせば気がすむかもしれない。それに平凡な部分に気付いて武夫と結婚をしろとは言わなくなるかもしれない。

 そう言って莉子の表情をチラリと伺う。


「…………」

「り、莉子ちゃん?」


 そうだ、これが彼女の本当に喜んでいるときの顔だ。

 莉子は目を開いて頬を染めてこちらを見ていた。


「いいの……? またあたしと遊んでくれるの?」

「もちろんだよ。莉子ちゃんが嫌なら無理にとは言わないけど」

「そんなことないっ。また奈緒美ちゃんの家に行ったりしたい……」


 搾り出すような声でそんなことを言われては首を縦に振るしかない。


「うん、いつでも遊びにきていいよ」

「ありがとっ、奈緒美ちゃん。大好きっ!」


 そうしてまた姉妹のような関係が始まった。





とりあえず挿入部は終わりです!

次から二人の日常が始まる予定です。

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