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成功の上塗り

【3】執着


 Kは仮想空間で冒険を進めていました。冒険者は大勢いて、それぞれが情報を得てそれを共有し合い、またライバルとして切磋琢磨するような関係でした。

 しかしある時から、その関係が微妙に変化しました。ライバルから、敵となってしまいました。人よりも多くの鉱石、宝を得て、人よりもいい装備を目指し、そして人よりも強くなりたい。そんな思いがどんどん先行し、ライバルより自分の方が強い事を示したい、自分の方が豊かになりたい、という思いばかりが強くなっていきました。


 Kは、既に楽しんでいませんでした。ただひたすら敵たちよりも強く、豊かになることを目指し、寝る間を惜しんで仮想空間へと出かけていきました。その事が、ついに現実生活に影響を及ぼし始めました。淡々とした、ある意味快適な日常生活が、仮想空間での時間をより得るために、常にカリカリしたものに変化してしまったのです。


 仮想空間への執着。その執着が、現実生活と仮想空間の両方を、苦へと変えてしまいました。


 「リアルは行に過ぎない。それは変わらない。言い換えれば、人生は行に過ぎないという事だ。私はそれを淡々とこなし、仮想空間を付け加えていただけであった。人生の中の淡々とした味わい、喜びもまた、心地好かった。それだけで意味があるものであったのに、私はそれ以上に、仮想空間に意味を見出だそうとして、失敗したのだ。」



【4】私達は成功の上塗りをしている


 私達は今、生きることと直接は関係のないこと、に重きを置き過ぎています。その事を血眼になって追い回し、執着し、日常生活という行を苦しいものにしているのです。であれば、生きることに直接は関係無いもの(おそらく現代人の頭の中に日常的に占めているほとんどのもの)については一度横に置き、生きる、ということに意識を集中する生き方はどうでしょうか。生きることさえしっかりとしていれば、人生は何も問題は無い。この世界に生まれて、十分に行を積んでいる=生まれてきた意味を成している、と言えます。

 敢えて苦しむ、という選択も、もちろんあります。この世界で「成功」を収める事を主目的とし、様々な人生のゲームにチャレンジします。そんな生き方も許されているのが、この世界です。たくさんの人間がそれにチャレンジしていることは、周りを見ればそれは明らかです。


 私は生きています。心臓が一回脈動する度に、行を積んでいるのです。それだけで、この世界にいる真の意味を果たしています。今、毎日の命を繋いでいるなら、それだけで十分です。

 今、何かに苦しんでいる人は、日々の命を繋いでいることを意識することで、気分を楽にし、今からの生を力強くしていけると思います。なぜなら生まれてきた大目的は、既にこの瞬間も達成しており、自分の心臓の動き、呼吸の動きに意識を集中してみればその事は全く明らかで、自信が持てるからです。だからこそ、それ以外(生きること以外)のことについては、ほとんど何の心配もなく、チャレンジできるのです。


おわり

 もう一人の私が言います。「お前がもう少し、本当に楽しんで何かを成し、実際にそれがうまくいってからそういうことを言ってはどうかね」と。つまり、ある程度成功してからそういうことは言え、と。



。。。



 はははは。生きること以外のことが人生の主目的であると、勘違いしているのは私自身ではないか?


 今、呼吸している、心臓が動いている。それでお前は大成功を収めている、だから自信を持つ、ではなかったのか?


 だから、生きる、という事以外のものについて、例えばこのテキストが言っている事がおかしな事だと(世間から)思われても、特段、気にする必要は無いではないか。


 書いている自分がそもそも勘違いしていたという、オチがついておりました。


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