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呉福妹の場合 09


 第十七節


「そこまでだ!」

 甲高い声が響いた。

「あーら、やっとおでまし…って何よその恰好は?」

 橋場はまだ不満だったが、状況的に仕方が無いので堂々と胸を張った。Cカップの。

「見ての通りだ。ちょっとそこでこいつとミニゲームやってな」

 橋場のスタイルは、斎賀の能力である紺色のベストに赤いネクタイのブレザーである。スカートは太ももまで見えるミニスカート。


 …橋場は女子高生となって登場したのだ。


「相打ちになっちゃいました」


 背中まである長い黒髪と、保護色になって溶け合うほど真っ黒なセーラー服に身を包んだ斎賀健二までが登場する。無論、肉体は女子高生のそれである。


「別に変身後であっても問題ないはずだ。いざ尋常に勝負!」

「…そ、そうね…今日は興が乗らないから明日にしようかしら」

「どうして?さっきまであんなにやる気満々だったじゃねーか」

「そういうこともあんのよ」

 駆け出そうとするウー。

「追いかけろ!」

 叫ぶ紺のブレザー。

「はい!」

 闇夜のカラスの様なセーラー服がクリーム色のベストのブレザーに飛び掛かる。

「きゃあああっ!」

 たちまちセーラー服姿の斎賀に抱きつかれた「クリーム色のベストのブレザー」姿だったウーの姿が「紺色ベストのブレザー」へと変化する。

 そして、飛びついたセーラー服姿の斎賀は何も変わらない。


「やめて…離して…離しなさいよ!」



 第十八節


「やっぱり予想通りでした」

「ああ、そうだな」

 紺色ベストのブレザー女子高生スタイルで誇らしげに仁王立ちしている橋場。

「な、何よあんたたち!」

「あんたの能力は強いよ。確かに。メタモル能力者に心の準備をさせないで無条件で条件発動なんて正に盲点を衝かれた」

「しかも自分自身は生粋の女性だから相打ちでもほとんどダメージが無いんですから」

「それでいて、自分の能力で変えたことには変わりが無いからある程度相手をコントロールできる。条件は同じはずだが、やっぱり地の利を活かしたあんたの方が有利ってわけだ」

「しかし、その能力も万全じゃない」

「メタモル・ファイターがメタモル能力を食らった場合、仕掛けた本人が続けて操作をすることは可能だが、別のメタモル・ファイターがそれを上書きすることは出来ん」

「…っ!!」

「だからあらかじめ別のメタモル・ファイトをしておいて女になっておけばあんたの能力を食らわなくても済むって寸法だ」

「それでいて、自動発動だからボクたちに触られると試合が開始されていなくても勝手に発動してしまう…と。だからボクにこうやって抱きつかれて女子高生になっちゃうわけです」

「自動発動のリスクが裏目に出たな。だからこうやってオレが触ると…」

「あああっ!」

 たちまちウーの着ていたブレザーがぞろっとしたセーラー服に変化する。

「確かに女が女になっても精神的なショックは少ない…と言いたいだろうが、掛けた側のコントロール権が残ってるのを忘れていた様だな。いつもなら不意を衝いて自分の地の利を活かすところなんだろうが、最初から女になった状態で臨んだこっちが一歩有利だ」

「残念でしたね。勝負はボクたちの勝ちってことでいいですか?」

「…いいけど、あんたがたあたしをイかしてくれるんでしょうね?」

 顔を見合わせる女子高生二人。

「あんたサドでしょ?」

 睨んでくるウー。

「普段攻めの人の精神って結局男と似てるんだよね」

「だからまあ…これから一緒に色々楽しいことしましょ?」

 がっくりうなだれるウー。



(続く)


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