呉福妹の場合 08
第十五節
どうやら、チャイナドレス姿のウェイトレスというのは年齢を二十歳強くらいに設定されているらしく、武林の体型はこれまでの女学生に比べても明らかに「大人の女性」にされていた。
めくり上げられたチャイナドレスのスカートの中をモロに見てしまった橋場と斎賀は心理的なショックに打ちのめされていた。
二人とも、自分が餌食にしてきた相手のスカートをめくってパンティを拝むことを散々にやってきたのだが、これほど成熟した女体の放つ妖艶なエロスのパンティ部分を目の当たりにするのが初めてだったのだ。
…これは能力の特性上いたし方が無い。
ともあれ、二人はもんどりうってその場から退散する。
とにかく距離をとらなくては危険だ!
ウーは逃げた二人ではなく、まず武林にトドメを刺しに行った。
*検閲削除*
その場にくったりと倒れ込むブルーのチャイナドレス。
「精神的に屈服」したのは明らかだった。「メタモル・ファイト」ゲームセットである。
「どういうことなんだよ!まだ試合始まってないのに!」
「分かりません!」
テーブルの下に潜みながらひそひそ声で怒鳴り合う二人。
「メタモル能力って、敵意や害意のある相手や、試合開始を了承し合った相手にしか使えないはずだ。なのに試合が始まる前に?…どういうことなんだ」
「もしかして…」
斎賀が何かを思いついた様だった。
「これって彼女の特殊能力かもしれません」
「俺たちと違うのか?」
「ええ。きっと彼女は相手の害意が無くても触れるだけで無条件に能力が発動する特殊能力持ちなんですよ」
「馬鹿な!そんなの勝負にならんだろうが!」
「でも!その代償として、相手の能力も無条件で受けてしまうんです。だからブレザーになっちゃったんですよ」
「そんな能力意味が…そうか」
「そう、彼女は生まれつき女性です。この能力で相手に変えられたとしても精神的なショックッはゼロ。だから相打ちで問題ないんです」
「…なんてこった…最悪の組み合わせだ…」
『もしもーし!』
店の真ん中で声を出しているウー。
『どこに隠れたのか知らないけど、出て来てくれるかなー?』
落ち着き払っている。
『あんたがたの潜んでいる辺りは見当がついてるんだけどさ。勝負してよー』
顔を見合わせる橋場と斎賀。
「…どうするんだ?」
「かなりマズいです。普通は勝負に合意してないとメタモル・ファイター同士でも能力発現はしませんが、ボクらに追いすがって能力を使われたら…」
「どうなるんだよ?」
「分かりませんけど、元に戻れるのは「メタモル・ファイト」でならばという条件だから、普通に使う場合と同じで戻れなくなるかもしれません」
「っ…!じゃあ…」
「ええ。僕らもチャイナドレスのお姉さんになってそこからずっと女の人生になる可能性も」
「でも、相手もそうだよな?」
「二十代も半ばの女性が十代の少女になることと、健全な男子高校生が二十代の女性になってしまうリスクが釣り合っていると思います?」
『じゃあこんなことしちゃうよ~ん!』
その声の後、女性の喘ぎ声が聞こえてきた。
第十六節
*検閲削除*
「野郎…って女か」
「そうか…分かりました」
「何が?」
「彼女のメタモルファイターとしての目的ですよ」
「何だよそれは!?」
「さっきその会話で途切れたでしょ?」
「だからそれが何なんだって!」
「あくまで予測ですが…恐らく彼女が「メタモル・ファイト」にご執心なのは、自分のサディスティックな欲望を満足させるためです」
「…何だって?」
「彼女にとっては男を屈服させることそのものが快楽なんですよ。ましてや対戦ということで正々堂々と相手を性転換の挙句、女装させていたぶれる。彼女にとってはそれこそがメタモル・ファイトを続ける動機なんです」
「…ド変態女が…」
「とにかく、武林さんを助けないとマズいです」
「なんでだよ?ファイトの後は元に戻れるんだろうが」
「戻れなくなる条件があるって言ったでしょ?条件は完全には不明ですが、「精神が女として定着してしまった時」というのが定説です」
「つまり何だよ?」
「あのまま*検閲削除*武林さんはもう元に戻れなくなるかもしれません」
「じゃあ早く助けないと!」
「しかし、今のボクたちには決定打がありません。そもそもこちらの武器…性転換と女装が殆ど効かないんです」
「…最悪、単なる勝負なんだから降参しちまうのもありじゃ?」
「普通の相手ならキスだけで済むかもしれません。でもサドの彼女相手に降参したら…明日の朝まで女性としての快楽地獄でいたぶられ、挙句に戻れなくなるかも」
「じゃあどうするんだよ!」
真剣な表情になる斎賀。
「ボクにアイデアがあります」
(続く)