呉福妹の場合 05
第九節
「義賊を気取って悪を倒すか?馬鹿馬鹿しい。確かにオレたちゃ強いよ。けど本気で国家権力なんかが出てくればイチコロさ。相手になる訳が無い」
「…そんなもんかなあ」
「体験したことは無いが、軍隊の飛び道具…鉄砲軍団と戦って勝てるのか?直接相手に触れないとどうにもならん俺たちが。幾ら素早く動けたり、強烈な打撃力があったりしたって最終的には適わないって」
「だから身内で腕試しでいいじゃねえか」
「でも、武林さんの言う形式の勝負が成立するとは思えないなあ」
「なんでだよ?」
「橋場さんの場合は、偶然カウンター気味の性質だったとしても、そうでない相手にしたって約束を守ってくれる保証はないし」
「ま、この辺にしようぜ」
新しいから揚げにがっつく橋場。
「しっかし、この能力を使える様になってからその辺の女を見ても他人だったら疑ってかかっちまう様になったのは頂けんよ」
「…?どういう意味だ?」
「例えば…」
橋場が指を指す。
「あっちのテーブルに料理を持ってきたあのチャイナドレスのウェイトレスさん」
「…が、何か?」
「実は案外メタモル能力で女に変えられて、チャイナドレスを着せられウェイトレスとして働かされてたり…なんてさ」
「まさか!そんなことある訳ありませんよ」
「全くだ!あんな綺麗な人が…」
冷たい目で同席者を流す橋場。
「あんだけセーラー服美少女になってたお前らに言われても説得力ねーぜ」
第十節
「…試合以外でそういうことを言うのはご法度ですよ」
「…そうなのか?」
「考えれば分かるでしょうが」
「ふーん…でさ、お前らに聞きたいことがあるんだけどいいか」
「どうぞ」
「お前たちは何が目的で戦ってるんだ?斎賀から」
「何が目的って…対戦ゲームのプレイヤーに同じこと聞きます?何が目的で戦ってるのかとか。戦いそれ自体が面白いからですよ」
「それは、メタモル・ファイトが面白いって意味か?」
これは武林。
「そうですけど…」
「オレは違うな」
「言ってみろよ」
「オレは、この能力者たちが発現した力と純粋に対決してみたいだけだ。だから能力は使わないし、使わせない。例外はあるが」
「なるほどねえ」
冷めたプーアル茶を飲み干す斎賀。
「かくいう橋場さんはどうなんです?」
「は?オレは戦う意思なんぞねーっての」
すると、近づいてくる人影があった。
(続く)