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呉福妹の場合 04


第七節


「そ、そんな訳があるか!ここは安くて美味いから来てるんだ!たまたまだたまたま!」

「そんなにムキにならなくていいのに…」

 斎賀がクールにスープをすする。

「でも…魅力的なのは間違いないですね。橋場さん?」

「ん?ああ…」

 橋場は考えることが多くなっていた。

 初めて出来た彼女のことを考えると気分がウキウキしてくる。

 だが、時期を同じくして重大な秘密を抱え込んでしまった。


 望んだ訳でも何でもないのだが、橋場は日々お互いに性転換したりされたり、お互いに女装したりさせられたりする「熾烈な」戦いを演じる「メタモル・ファイター」となってしまったのである。

「見たかったなー。橋場さんの女子高生姿」

「お前のセーラー服ほどは似合ってないさ」

 チャーハンをかきこむ橋場。確かに美味い。


 それにしてもきわどいくらいにセクシーなウェイトレスの制服である。露出度だけでいえば都内の女子高生などはもっと高いのに、ちらちら見せられることで余計にいやらしく見えるのだから大変な発明だ。

「しかし…」

 から揚げをぺろりと一つ平らげたところで武林が言った。



第八節


「実際問題、相手を探すのには骨が折れる。斎賀とやらも、後で相手になってほしいところだが?」

 ぶるぶると顔を振る斎賀。

「ボクは武闘派じゃないんで遠慮します」

「よく言うぜ。五勝一敗の勝ち越しなんだろうが」

「でも一回負けちゃうとね…怖気づくっていうか」

「じゃあ情報交換だ。今まで戦った相手を紹介してくれ」

 橋場は目の前の中華が余りにも美味しいので夢中で食らった。

「どんなところに潜んでいるのか分からないんですよ。お互いに対戦ネットワークを作って内部でひっそりとやっている人たちもいると言われてます」

「ふーん、そうなのか」

「一説にはメタモル能力は人類の大半が本来なら持っているけど、ごく一部の人間しか目覚めないなんてことも言われているそうです」

「そんなに古くからあるのか」

「最初に確認されたのは二十年は前だとか…これも有志の独自研究ですけどね」

 また新たな料理が届く。

「多くの大人は、気が付いても余りにも影響力が強いので自分で封印して死ぬまで使わないなんて説もあります」

「なんてもったいない…」

 これは武林。

「出来れば封印したいね。こんな冗談みたいな能力」

「正しく使えばいいんでは?」



(続く)


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