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呉福妹の場合 01

第四章 呉福妹うー・ふーめいの場合


第一節


「ハイ!私が店主でーす」

 切れ長の目を持つアジアン・ビューティがそこにはいた。何かの作業をしていたらしく、薄汚れたズボンを引っ掛けている。

「おう!あんたが店長か!」

「そうですけど?」

 中年の警察官だった。

「お仕事ご苦労様です」

 機先を制す美女。

「…分かってんだろ?」

 警察官はドスの効いた声で言った。

「何の事です?」

 クールな美女はわざとなのか少女の様なリアクションを取った。

「あんたこの辺の組に金を払ってるだろ?」

「あ、みかじめ料ですか」

「それだそれ」

「結構前に『おしぼり代』に名前が変わったって聞いてましたけど」

「どっちでもいいんだよ!」

 大きな声だった。

「おー!大きな声ねー。そんな大きな声出さなくても聞こえてまーす」

「おばちゃん、最近法律が変わったのは知ってるな?そういうお金は出しちゃいけないことになってるんだよ」

「でも、出さないと怖いでーす」

「出したんだな?だったらあんたを逮捕する」

「タイホ!?それはムチャでーす。店長いなかったらお店が困りまーす」

「組に金を払ったんだろ?あぁ?」

 軽くため息をつく美女。

「ウチはただの中国料理レストランでーす。断れませーん」

「払ったからには逮捕だ。ただ…」

「ただ?」

「…誠意を見せてくれるなら、聞かなかったことにしてやってもいい」

 じっと中年警官の目を見る美女。



第二節


「それは、お金を払えいうことですか?」

「俺はそんなことは一言も言ってない。あんたがそう解釈しただけだ」

「でも、そうとしか聞こえませーん」

「勝手にするんだな」

「でも、日々やりくり大変でーす。余分なたくわえありませーん」

「水商売なんだから日銭があるだろ?」

「おー困りました。今日は月末の集金の日ねー」

「金が無いなら…別のものでもいいんだぜ?」

 いやらしい視線を美女の顔から胸に下ろす。

「さあ、どうする?」

「あなた、いわゆる「アクトクケイカン」言う奴ねー」

「何とでもいいな」

「勘弁してくださーい。あなた以外の警察呼びますよー」

 ドカン!という音と共に作業着の胸倉を掴んで壁に叩き付ける中年警官。

「おい…国家権力ナメるんじゃねえぞ…」

「ナメ…てない…離して」

 苦しそうな美女。ぶん!と乱暴に手を離す中年警官。

「こんなちっぽけな店なんぞ、適当な脱税でもでっち上げて踏み込んで二三日営業できなくしたら…どうなるかな?」

「おーそれは困りまーす」

「だったら…分かるよな?俺以外の警官にチクるなんて真似をしてみろ。どうなるか分からんぜ?」

「ふん…丁度ウチも新しいウェイトレス募集してたところね。助かりました」

「…?何の話だ」

「ウチは住み込みの寮もあるから頑張れば快適よ」

「だから何の話…」

 中年警官は、目の前で自らの髪の毛がむくむくと伸び始めているのに気が付いた。



(続く)


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