武林光の場合 10
第十九節
そこには正に「今時の女子高生」と成り果てた橋場がいた。
「あ…ああ…」
脚が殆ど全部空気に晒されている。
厳重にガードされていた下腹部は、そもそもが装甲として甚だ頼りないパンティに置き換わっている上に、しゃがめば見えてしまいそうな短いスカートを履かされているのだ!
「仕上げだ。味わいな!」
スニーカーが革靴となり、ホコリまみれだった靴下も新品同様となる。
爪に何かが塗られるのが分かる…ネイルに透明な何かを塗っているのか!?
頭に尖ったものがずずっと地肌を削りながら髪の中を移動する。
ヘアピンらしかった。
橋場は、やっては駄目だと必死に言い聞かせていながら思わず十七歳の少女となってしまった脚をスカートの中で前後に動かした。
するり。
びくっ!とした。
むき出しの乙女の素肌同士がスカートの中で無防備に触れ合った。
周囲のシルク素材の肌着の冷たさと感触が感じられる。
「ふん!…オレはこんな恰好は好かんが…能力なんだから仕方が無い」
いつの間にか、肩掛けのスクールバッグみたいなものまで掛かっている。もう完全に通学中の女子高生である。
「ほれ!」
不意にただでさえ涼しかった下半身に風が吹き込んだ。
「きゃあああああーっ!」
女子高生にされてしまった橋場のスカートが思い切りめくられていた。
第二十節
身体の前から浮き上がるスカートを抑えたため、その手が発育のいい乳房を両側から押し潰す格好となる。
「あ…」
恥ずかしさやら何やらで顔が真っ赤になる橋場。
「どうだ?卑怯者にはいい仕置きだ。そう思わんか」
その場を動こうとするが、脚が動かない。精神的に操作されているのか。
「この場に鏡が無いからな。今の自分の格好を見せてやれんのが残念だ」
確かにそうではある。
橋場は携帯用全身鏡を持ち歩いてはいたが、そんなものを出してくれと頼むシチュエーションでもない。
一度女になってみたいなどという男は、その段階で目の前の男に主導権を握られている状況など想像もしていないのだろう。恐ろしくて小さな心臓が縮み上がりそうだった。
…ん?待てよ?
橋場は必死に自分の脚が動くところをイメージした。
すると、僅かながら動く気がする。
そうか!この能力は、能力者同士ならば精神で多少の相殺をすることが可能だ。つまり、相手の精神操作に対抗することだって出来るはずなんだ!
「うおりゃああああっ!」
情けないほど女声だった。演劇部の新入部員の中学生に毛が生えたみたいな女子が、「男の子の役」を無理して演じているのを見せられている様だ。
だが、気恥ずかしさを感じながらも気合を入れる女子高生…となってしまった橋場。
バキッ!…束縛から解放された!
(続く)