武林光の場合 08
第十五節
「…何の積りだ?」
「言ったろ。オレには元々戦意なんて無い。メタモル・ファイトとやらをする気も無い。純粋に力比べならと思って受けたんだ」
「約束を破ったのはお前だろうが」
「言っても仕方が無いみたいだが繰り返してやる。オレは反射として出てしまう能力の発揮をコントロールすることは出来ん。現時点ではな。つまり試合は成立しないんだ」
「オレは、メタモル・ファイトをする気は無い。お前を精神的に屈服させようとは思ってない。だから試合に能力を持ち込むのは厳禁だ。持ち込んだのはお前だ!」
「だから言ってるだろうが。オレはコントロール出来んのだ。だからメタモル・ファイトじゃない純粋な力試しはオレには無理だ。すまんが降りるぞ」
一瞬戦闘姿勢を解いた武林だったが、すぐに構え直す。
「…何だよ?戦意の無い相手をボコるのがあんたの流儀か?」
「悪いがその手には乗らん。以前騙されかけた。そうやって試合放棄したように見せかけて襲ってくるんだろ?」
首を振る橋場。
「どう言えば信じてもらえるんだ!」
「だからここからは「メタモル・ファイト」だよ。あんたも本気で掛かってきな」
「オレもあんたと同じで、必要のないメタモル・ファイトなんぞしたくない!その点一致していたはずだろ!?」
「いや、一致しないね」
「何だと?」
「お前みたいな卑怯なメタモル・ファイターを野放しにしておく訳にはいかん。どんな手段を使っても勝たせてもらう」
「…反則技でも使うってのか?」
「能力を使うって言ってるんだ!」
橋場は合点した。
こいつにとっては「どんな手段を使っても」というのは「メタモル能力」のことを指しているらしい。「男同士の戦い」の最大の武器として、「相手を女に性転換し、強制的に女装させる」能力を使うなど卑怯である!という硬派な考え方なのだ。
「反省しとけ」
第十六節
余りにも素早いフットワークだった。
目にも止まらない速度で目の前に来た武林は、落ち着いてローキックを放った。
ドカン!と重い一撃が入る。
「ぐああっ!」
太もものあたりを太い丸太で殴られた様な衝撃である。
「決まったな。味わうがいいさ」
同時に、橋場の身体が異常を感じた。
「お、お前…まさか…」
「女になるのは初めてか?ま、オレも経験ないがね」
身体の中心部分が熱い。
全身がむずむずと何かが内側から湧き上がる様な感覚に苛まれる。
「おーこりゃあ絶景かな絶景かな」
*検閲削除*橋場の身体が性転換していく模様*
(続き)