武林光の場合 06
第十一章
「…っ!だよな!」
「*検閲削除*」
「ん…ああ」
一応相槌を打っておく。
「だから女にしたりされたりはしたくないんだ!。純粋にスポーツ、いやケンカだよ」
「…賛成だ。正にそれを言おうとしていたんだよ」
「と言う訳で純粋にケンカだ。始めよう」
「…ちょっと待て!」
青くなって橋場は叫んだ。
「何だよ?怖気づいたか?」
「いやすまん…その趣旨には大賛成なんだが…」
「けど何だ?」
「オレの能力はその…相手の攻撃の意思に反射的に反応しちまう傾向が強いみたいなんだ。だからその…」
ふん!…と鼻を鳴らす武林。
「下らん駆け引きでオレの腰を引かせようちゅう作戦か?」
「違う!違うんだって!」
「それはあんたがまだ能力の使い方が未熟っってことだ!」
「…そうなのか?」
「わかってるだろうが、間違って能力を使わない約束を破って能力を遣ったりする卑怯者にはこっちも容赦せん。それは忘れるなよ」
やれやれ…と首をふる橋場。
「警告はしたぜ」
「その前に殴り倒すから問題ない」
一瞬の間があった。
両者が腰を落として構える。
第十二節
武林が一歩踏み込んで正面からパンチを見舞ってくる。
「うわっ!」
反射的にかわしきれず、両手を身体の前に出してブロックし、更にバックステップで間合いを取る橋場。
「…いいガードだ」
「…」
ドキドキしながら待ったが、身体の変化は無い。
普通はあの「害意をもった状態での接触」で変身させられていても不思議ではない。
どうやら武林とやらは約束を守ってくれている様だった。
…それとも何か?もしかしてしっかりと相手の攻撃をガード、ブロックした場合はメタモル能力は発動しないのか?
いや、そんなことは無いだろう。手の甲や膝などの部分とそれ以外で何が違うとも思えない。
「オラオラどうしたあ!」
大きなモーションの蹴りを放って来る。
しゃがんでかわす橋場。
間髪入れずにパンチが来る。必死にかわしたが、かなりいい感じで顔面に入った。
「ぐわっ!」
倒れ込む橋場。
腰を落とし、伏せの姿勢で構える武林。
「何だなんだ!どうした!そんなもんか!?」
追撃をして来ようとはしてこなかった。
橋場が立ち上がるのを待つ。
(続く)