斎賀健二の場合 19
第三十三節
「そろそろ始めたいが、俺から質問していいんだよな?」
「どうぞ?」
「この果し合い…メタモル・ファイトか?…で勝ったらどうなる。負けた方が女にされ、ついでにコスプレ衣装もプレゼントしてもらう羽目になるのは分かった。勝った側にはどんないいことがあるんだ?」
「いい質問だね」
遠くを見上げる斎賀。
「映画の『ハイランダー』って観たことはあるかい?」
「いや、無い」
「特殊な一族のバトル映画だが…ハイランダーはハイランダーを倒すと、相手の寿命を奪うことが出来る。無敗のハイランダーは理論上不老不死だ。まあ、倒す相手がいなくなれば仕方が無いんだろうが」
「…まさか…」
「勝者は相手の能力を奪う。ボクが勝てばキミはめでたくブレザーの制服の似合う女子高生だ。その後の人生のことは知らない。頑張って女子大生になるもOLになるもよし、花嫁修業して素敵な旦那さんを見つけるのもいいだろう」
睨んでいる橋場。
「ボクはブレザーに加えてセーラー服変化能力もゲットだ。楽しいよ?さっきは馬鹿にしたようなことを言ったけど、実は典型的なセーラーには憧れもあってね」
「…この変態が…」
「さっきも言ったけど、この能力は女性にも使える。ボクが勝利した暁にはブレザーが気に入らないならセーラーも着せてあげるよ。キミ自身の能力でね」
そこまで言ったところで斎賀が大爆笑を始めた。
第三十四節
「…」
橋場が渋い顔でそれをにらんでいる。
「冗談!冗談だよ!そんな便利なことあるわけないでしょうが」
「…違うのか?」
「うん。そうだよ」
「これは遊びだよ。遊び。純粋な腕試しだ。勝ったからって何も起こらない。よくゲームセンターの格闘ゲームでより強い相手を求めて遠征したりするだろ?知らんか。ともかくそういうこと」
「遊びだと?」
「うん。スポーツみたいなもんさ」
「相手への性転換させあい、女装させあいが遊び?」
「楽しいだろ?スリルあるし」
「じゃあ能力も増えないんだな?」
「キミは空手使いと戦って勝ったら空手が使える様になるのかい?ならんだろ。こんな能力振りかざして言うのもなんだけど、常識的に考えれば分かる」
「常識的…ねえ」
これには橋場も苦笑せざるをえない。
「今度こそ最後の質問だ」
「受けましょう」
「お前は今まで何人倒した?」
月が登り始めていた。
(続く)