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斎賀健二の場合 17


 第二十九節


 橋場と斎賀は近くの電車の駅周辺に河原があることを発見し、そこで向かい合った。

「質問はしていいのか?」

「ボクが答えられる範囲ならね」

「女が相手の女を男にする能力は存在してるのか?」

「ボクが知る限り存在しない」

「何故だ?」

 首をすくめる斎賀。

「神ならぬ身で答え様が無い。ただ…」

「ただ…何だ?」

「元々人間はメスだ。母親の胎内ではね」

「そうなのか?」

「ああ。繁殖に必要なのは妊娠、出産する能力だからね。そして半数が遺伝子操作されてオスとなって産まれてくる。オスの形質というのは進化の課程の中で後から獲得したものだ」

「どうしてそうなる?」

「生物学の講義をするつもりはないが、性別という概念を持ち込み、進化に多様性を持たせることで結果として人類という種全体が生き残る可能性を高めるんだ」

「良く分からん」

「例えば人類が病原体「甲」に極端に弱かったとする。人類が単一の種族だったならそこで全滅してしまうだろう。だが、「性別」にわざわざ一度分岐させ、交配を繰り返すことで多様性を持たせ、病原体「甲」が流行しても一定数が生き残り、「乙」が流行してもやはり一定数が生き残れる様にする…性別の生まれた理由ってのはそれだ」

「…それで?」

「分からんが、生物学的に女を男にするよりも、男を本来の女の姿にする方が簡単なんだろうさ。それ以上の詳しい理屈など知らんよ」

「…服はどうなんだ?どうして女装まで出来るんだ」

「それこそ神のみぞ知る…だね。衣類なんてのはせんじ詰めれば単なる布きれだ。文化的に滑稽(こっけい)だったり変態的だったりを後から感じる様に仕向けられているに過ぎない。肉体的変化の方がよっぽど大事さ。それに比べれば女装なんて大したことは無い」

 黙って聞いている橋場。

「ま、とはいっても、明日女子の制服で登校しろと言われれば遠慮したいけどね」

 一陣の風が吹き抜けた。



 第三十章


「能書きは分かった。で、俺に何の用だ?」

 ポキポキと指を鳴らす橋場。

「…キミはこの能力を今までどう使ったね?」

「テメエに話す必要があるのか?」

「興味があるから教えてくれ」

「俺は変態じゃねえ。好色でもねえ。襲い掛かられたら自衛のために使ってる。…それだけだ」

「…嘘を言ってる感じじゃないね。多分僕もキミと同じだよ」

 腕時計を見る斎賀。

「あと…困っている女性を助ける義賊ってところか?」

「…テメエの知ったことじゃねえよ」

「ボクも同じと言ったろ?キミが踏み込むのが遅かったらボクが連中を成敗していたところだ」

「へっ!全員ブレザーにしてか?」

「セーラー服を量産してるキミに言われたくないな…まあ、必要とあらばね」

「で?だから何なんだよ?お前の話はオチが見えねえよ」

 ふう、とため息をつく斎賀。

「仕方ない。本題と行こうか」

「来いや」

「戦ってほしい」



(続く)


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