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橋場英男の場合 35
第三十一節
「何となくね。女のカンよ…ってこれ言ってみたかったんだ!きゃー!」
何だか盛り上がっている。
「今までは言ったことが無かったんですね」
「うんにゃ。毎日言ってたわ」
ずっこける橋場。
「まああれよ。自虐ギャグって奴。『女のカン』って言って「男じゃねえか!」っていうツッコミ待ちっていうかね」
凄い勢いで喋るお姉さん。変な話で、さっきまではニューハーフの中でも物静かなクール系美女だったのに、実際の女の子になってしまってからの方がハイテンションのオカマキャラっぽくなっている。
「とにかくありがとう。どれだけお礼を言っても足らないわ」
向かい合わせのテーブルごしにぎゅっと両手を包む様に握手して見つめてくるセーラー服美少女。
「…とりあえずなんだけど…手持ちにはこれくらいしかないの」
新聞紙にくるまったレンガの塊みたいなものをバッグから出して来る。
「…?これって」
「ゴメン。二百万しかないわ」
「ちょっ!ちょっと!!」
「いいから!」
少し大きな声を出すお姉さん。
(続く)