橋場英男の場合 34
第三十節
「あの…ここって」
「大丈夫。カードで入ったからあなたは支払いの心配なんてしなくてもいいの」
「でも、借金があるんじゃ?」
「借金はあるわ。でも同時にお金も持ってるの」
「…?えと…?」
「まあいいのよ。子供はそういうこと考えなくてもいいから大人に任せといて!…って今はあたしも子供か!あはははは!」
本当に楽しそうに笑う。セーラー服の真っ赤なスカーフが揺れ、真っ黒な髪が真っ黒な制服に溶け込んで一体化している様だ。
「でも、子供がこんなところに入って大丈夫なんですか?」
見た目が余りにも学生過ぎる二人だ。言ってみれば「子供」の記号・看板を見せびらかして歩いているに等しい。
「結構大丈夫なのよ。いいところのお坊ちゃんお嬢ちゃんって親やおじいちゃんのカードで結構ぶいぶいやってるから」
…そういうものなのか…とちょっと呆れた。
「とにかくほんっっっっっっとうに有難うね!もう、夢みたい。今も信じられないわ」
「…でしょうね。あはは」
上手く言えない橋場。
「あなたアレなの?あんな調子で日々男を女にしまくってるわけ?」
「…まあ」
「罪作りな男ねえ。どうせあなたの能力で性転換されたらもう男には戻れないんでしょ?」
「良く分かりますね」
(続く)