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橋場英男の場合 26


第二十一節


「…?!」 

 突如拘束が緩んだ。

 激しく咳き込む橋場。

 ふと見ると、お姉さんが自らの身体を怪訝そうに見下ろしている。

 …よく見慣れた風景だ。

「お姉さん…ど、どいて…」

 どうにかそれだけ発音した。


 激しく咳き込む橋場。

 お姉さんはもうこちらには興味が無いと言った風に立ち上がった。上の重さが無くなった橋場はゆっくり起き上がる。

「あ…あ…あああ…」

 元々ほっそりとして綺麗な、理想的な女性的体型をしていたので、服の上からでは変化が余り分からない。だが、恐らく自らの身体の変容を全身で感じ取っているのであろう、お姉さんは何とも言えない奇声を上げ続けていた。

「ぐ…ああ…」

 これは橋場の声だ。

 先ほどまで握り潰す勢いで締められていた喉が痛い。不意を衝かれると肉体の強さもかなり緩むらしい。

 ともあれ、どうにか回復しつつある。軽く咳払いをする。


「お姉さん?」


 お姉さんが振り返った。見た目の変化は余り無い…と言いたいところだったが、ばさりと振り乱れた髪のナチュラルな挙動にドキっ!とした。

 あんなに綺麗に見えていた顔立ちや肌つやが更に一段上がっている。やはりどれほど美しい造形に生まれつき、人工的なメインテナンスを施したとしても、自然のままの思春期の少女には適わないということなのだろうか。

 お姉さんの実年齢は不明だが、恐らくは二十代の中盤…もしかしたら後半に差し掛かっていた可能性もある。

 それが十七歳の少女になったのだ。大人の女性から、少女への変化であった。



(続く)


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