表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/74

橋場英男の場合 13


 第八節


 繰り返すが、事件は曖昧なまま決着した。

 頭のいい犯人グループはことを荒立てず、警察関係者だけに話をしていたが、ある瞬間から犯人側からの交信が完全に途絶える。

 …橋場に踏み込まれ、抵抗虚しく全員セーラー服の女子高生にされ、もてあそばれて無力化していたからだ。

 その後、匿名の通信があり、犯人グループが煙の様に消えたとのことだった。

 すったもんだの挙句、踏み込んだ警察は、この学校のとは違う制服の美少女たちが校内のあちこちで乱交よろしくまぐわっているのを発見したのみだった。


 当然、彼女たちは事情聴取されるのだが、この内容は一切公表されなかった。

 どの程度話すことが出来たのかも分からないし、仮に包み隠さず話したところで信じてもらえるとは思えない。

 勿論橋場は、彼女たちの精神に橋場のことを決して話さない様に釘を刺しておいた。

 事件は解決した。

 幸いなことに、怪我人こそ出たものの犠牲者は出なかった。

 だが、犯人グループが煙の様に消えてしまった…実際には目の前にいるのだが…のは警察関係者にとっては痛恨の出来事だった。

 日本語を話し、身なりのきちんとしている少女たちには当然ながら該当する戸籍も存在しないはずだ。その後どうなったのか全く分からないが、まあどうにかしてるんだろう。


 正直、この能力に気が付いた橋場は使い道を迷った。

 どういう風に使っていいのか分からなかったからだ。


 それこそ、格闘家でも目指せばよかったのか?

 それも何か違う気がする。

 街の治安を守るバウンサー(用心棒)でもやるか?

 金も無いし暇も無い。ボランティアなんぞうんざり。

 結局、個人でそこまでの腕っぷしを持っていたとしても使い道などそれほどないのだ。


 思えば、幼稚園児の頃にテレビで見たことがある変身ヒーローって完全なボランティアだよな…と思った。

 「地球防衛軍」みたいな何故か数人しか隊員のいない、コスプレ好きの町内会みたいな組織に勤めている職員もいるが、変身してから後は完全なボランティアだ。

 それこそちゃんと地球の平和を守りたいなら、変身後のヒーローと正式な契約を結ぶなりするべきだろう。

 とはいうものの、もしもこの能力をしかるべき政府組織に名乗り出て、合法的に有益に使ってもらおうとしたところで恐ろしくハードルが高いことは社会人経験の無い高校生の橋場にすら容易に想像が付く。

 実験動物として解剖されるとまでは思わないが、これほど相手の人権をないがしろにするやり口の『能力』が許されるとは思えない。


 結局のところ、正体を隠してのボランティアくらいしか使い道が無い。

 そして、犯罪情報を素早く知ることが出来る情報網、移動能力も、そして割に合う報酬も入手方法を知らない一個人においては、降りかかる火の粉を振り払うくらいしか…使い道が無いんだよなあこれが。



(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ