プロローグ 01
プロローグ
「おいにいちゃん。金貸してくれや」
瞬間、「彼」は逃げ出していた。
「待てやゴルァ!!」
漆黒の学ラン姿の「彼」はその声を背中に聞いた。
やがて「彼」は裏路地の行き止まりに到達する。
「彼」が振り返って何か言葉を発しようとした時だった。
「…ドルァアア!」
胸倉を掴まれる。
「!っ!!」
ドシン!と壁に叩き付けられた。
ぐいぐいと身体を壁に押し付けられる。
「おい!逃げてんじゃねえぞ!…?」
追いかけてきた男が怒鳴る。
男はよれよれのジーンズに小汚いTシャツ、原色の古風なスカイジャンパーを羽織っている。
歯は黄色く濁り、目は充血している。
薄汚い無精ひげに顔の半分が覆われている。肌はあちこちシミだらけだった。年のころは二十代後半から三十近くといったところか。
とびとびに若白髪めいたものも見受けられる。角刈りのヘアスタイルが特徴的だ。
その男が、「彼」を一方的に路地裏の行き止まりに追い込み、胸倉を掴んで吊り上げていた。
唐突にその手の束縛が緩んだ。
「…?…」
男の顔に困惑の表情が浮かぶ。
「…あ…あああ…」
「男」の短足気味のガニ股がゆっくりと閉じていく。
不格好に短かったバランスの脚が細く長く伸び始めていた。
「うわ…あああっ!」
脚の長さが伸びていく。腰の位置が上にずり上がっていく。しかし、背の高さは低くなっていく。
何の変哲もない臀部がふっくらと丸みを帯びて膨らんでいく。
同時に、太り気味の腹部はべっこりとへこみ、丸く柔らかくなったお尻とコントラストを描き始める。
「男」は、目の前に手をかざした。
むくむくと変形している真っ最中だった。
「…あ…あ…」
肌の色が透き通るように澄んでいく。
ゴリラのようだった太い指はほっそりとした白魚の様な指になっていく。
優美に縦長に伸びる長めの爪が目を引く。
肩幅が縮んでいく。
肩が落ちて「なで肩」が形成されていく。
不良ルックは瞬く間にダブダブになっていた。
自らの身体の異変を茫然とした表情で眺めるその目。
その目が細く切れ長になっていく。
濁っていた白目は純白となり、細く長いまつ毛が伸びていく。
小汚い無精ひげとシミに覆われた肌が、大理石の様な素肌へと置き換わる。
ホコリまみれでだらしなく分厚い唇は、小さく可愛らしい薄桜色となり、その形状は初々しいさくらんぼの様になる。
「あ…っ!!…あああっ!!!」
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