20 中高年の知恵を恋愛という共同作業に
心理学者の岸田秀は
その著書「ものぐさ精神分析」のなかで
「恋愛は共同幻想」と言っています。
彼は人間の文化や人間関係はすべて
「幻想」と解釈しているので、
「共同幻想」と言っても、
それを価値がないものとして
言っているわけではありません。
岸田はこの著書の中で、
「恋愛とは盲目的に情熱に駆りたてられたものではなくて、
恋愛という形式を守ると言う一つの決断であり、
(中略)、この決断を誠意をもって実行することであり、
相手もそうするであろうと信頼することである。」
と言っているのです。
この意味で恋愛関係は結婚関係と似ています。
つまり結婚は単なる状態ではなく
相互の意思基づく関係ですが、
恋愛もその意味では変わりがないわけです。
だから相手が心変わりをしたときに
裏切ったとか心変わりしたと騒ぐわけなのです。
この意味で片思いという単独な作業は恋愛ではありません。
従って共同幻想と言う言葉に抵抗があるならば、
一つの共同体と考えてもいいわけです。
つまり「恋愛共同体」というものを
考えることが出来るのです。
この意味で友人関係や家族関係も同じです。
人間関係には血縁家族的なものから
社会的なものまで様々でありますが、
恋愛という関係は非常に特異な関係です。
親子関係とは違い、
無償の愛というものは理想ですが、
実際には存在しにくいと言わざるを得ません。
恋愛は、「GIVEandTAKE」の関係です。
その意味では経済的な取引関係の契約と同じなのです。
単純な言い方をすれば恋愛とは、
自分が愛しているのだから
相手にも愛して欲しい欲求を相互に認め合う関係です。
その意味では恋愛は
「バーターな関係」でなければ
持続は難しくなると思います。
どちらかの愛が冷めてくれば
恋は終了とならざるを得ないのです。
しかし生身の人間が長い期間恋愛感情を
同じレベルに保つことは非常に困難です。
いわゆる恋愛の賞味期間は
それほど長くないと言われています。
そこで私は「中高年の恋を長続きさせるために」
という章でセックスフレンド的な関係に
切り替えることをお勧めしましたが、
「恋愛にはSEXの関係がないほうが長続きする」
という御意見が
特に女性側に多いことにびっくりしています。
私は心と身体を切り離すことが困難であり、
性的欲求がある以上
SEX抜きの関係は不自然であると考えていますが、
当人同士それでいいと思えるなら何も言うことはありません。
ところで岸田秀は、
恋愛の質は二人が共有する
共同幻想の質とレベルに左右されていて、
そしてそれが共同体(幻想)である限り、
二人の程度は一致しているとも言っています。
したってレベルの低い者は高くなろうとするし、
高いものは低くなって
相手のレベルに合わせるようになっていくというのです。
これはうまくいけば
お互いを高めあう恋愛ともなりうることになるわけです。
それは素晴らしい恋愛でそういう恋愛をしたいものです。
しかし残念ながら
お互いに低い方に転落しがちなのも
事実と言わざるを得ません。
そしてレベルが落ちて行くにつれて
共同体は崩壊しやすいのです。
しかし中高年は
人間関係では豊富な経験を持っていることが多いのです。
従って相手に多くを望んでも
叶えられることは少ないと学習しているわけです。
従って、中高年は恋愛という共同体維持のために
どのような努力をすればいいのかを、
これまでの社会活動で得た
知識経験を恋愛関係にも応用するべきであると思うのです。
もっとも最初から継続を断念して
「一時的な遊び」と考えるのは
それぞれの自由でありますが、
それは恋愛と似て非なるものだと考えています。




