最凶王子の手下ども
事実確認だけは直接しておきたい。それが終わったら、ということで話がまとまった。
広めの一室に、手下、いや、違った、今では部下と呼ぶべきか、でも、こんな有象無象、手下で充分だよなあ、を呼び集めてもらった。
ちなみに、人数は七十人程度。商人に乞われてそのまま護衛として残ったり、職人になったりで置いてきた者もいたからだ。
「すまねえ、頭、俺の落ち度だ。この命、好きにしてくれ」
モリナックが、入ってきてすぐにその場に膝をつき、頭を下げた。他はよけて、俺とモリナックを見守っている。
俺はつかつかと近付いて、馬鹿が床に頭を打ち付けるほどに強く、真上から拳を振り下ろした。
後頭部と額を押さえ、床の上でつぶれて悶絶している阿呆に、説教する。
「見極めが甘い!! 身包み巻き上げてどうする。カモは生かさず、殺さずが鉄則だ! スケベ心出して引き際を見誤るな。わかったか!!」
ふーっと息を吐き出すと、王子、とカルディに呼ばれた。
「なんだ」
「あんた、本当に十五歳か」
「そうだが、何か?」
「世間擦れし過ぎだろ……」
手下どもがカルディに同意するように、どいつもこいつも残念なものを見る目で俺を見ている。
ふ・ざ・け・ん・なっ。
「おまえらに高尚な騎士道だの真っ当な常識だの説いたって、通じないだろうが!!! おまえらのデキに合わせてわかりやすく説明してやっただけだ! 見くびるな!」
「はー、それは、ありがたいこって。ところで、その高尚でまっとうなご高説は、いったいどんな具合になるのか、後学のために、試しにお聞きしたいんですが」
んなもん、本当は、全然思い浮かびもしねーよ!
「やかましい! 時間の無駄だ! さっさと事の次第を説明しろ!」
クソオヤジどもの忍び笑いが漏れる中、モリナックは痛みによる生理的な涙を流しながら、ぼつぼつと語ったのだった。
大筋、ジョアキムが語ったのと、内容は変わらなかった。つまり、負けて熱くなった相手に絡まれ、危険だから借金の形に剣を頂いたというわけだ。
つい、こいつらのしでかしたことだからと思って、さっさと謝ってしまったが、謝り損だったかもしれん。
「話はわかった。これから俺も共同訓練に参加するから、まあ、なんだ、おまえらも、日頃の憂さを晴らせ」
「なあ、あんた、その回転の速い頭で、何か考えてから、モノ言ってるか……?」
カルディが生意気にも、心底呆れたという声で茶々を入れる。
「おまえこそ、鈍い頭でよく考えろ。俺が負けてどうする。カナポリの英雄が負けたら、話にならねーだろうが」
あ、という顔をした。……手下全員。先が思いやられるなあ、くそ。
「おまえたちは、最凶王子が束ねる、荒くれ者の無頼の集団でいいんだ。強ければ、それでいい。今回は名を売るいい機会だ。おまえたちも、だらしない姿だけは見せるなよ」
奴らの瞳に強さが灯り、はい、だの、おう、だの、ああ、だの、承知した、だの、中には無言で頷く奴までいて、てんでばらばらに従う意を示してくる。
それを見回し、ついでにここで言っておくか、と最近考えていたことを話すことにした。
「王の許しが出たら、次は西か北の盗賊狩りに行く。その心積もりで情報を集めて、伝手を作れ。頼んだぞ」
おん、と部屋を揺るがせ、手下たちの声が揃った。内容は相変わらず別々だったけどな。
盗賊狩りに行くってのに、なんでそんなに楽しそうにしているのやら。本当に、ろくでもない奴らだよな。
けれど、なんだか俺も心が浮き立ってくる。だから、
「野郎ども、行くぞ!」
などと、景気よく声を上げてみたのだった。




