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4 親友と会いましょう。

火曜日。

私はいつもより30分早く起きた。

二度寝したい誘惑を振り切り、シャワーを浴びる。

お気に入りのボディーローションをたっぷりと贅沢に使って、久しくお手入れをしていなかった脚をケアする。


膝に白い粉が浮いていても気にしてなかったなぁ。

ちょっとくらい色のストッキングでごまかせばOKみたいな。

自分の女のすてかげんに嫌気がさす。


時間が余ったので、簡単にネギと卵の味噌汁を作り、

昨日買ってきた納豆にたっぷりのネギを加えてサトウのご飯をレンジでチンする。

いつもなら、チンして、そのままの容器で食べちゃうけど

今日はお椀に移して納豆も唯一の小鉢に移しかえる。


うん、すてきな朝ご飯!

スープマグに入った味噌汁がちょっと気になるが。


今日は100円均一にでもいって可愛いお椀を買ってこよう。


健康的なことをしているとすごくいい気分で朝ご飯を終えた。


せっかくきれいにしたキッチンを汚したくないのでささっとお皿を洗ってから、メイクを始める。


私はいい気分のまま会社に着いた。

いつもより10分ほど遅い時間だが、いつも早く出勤している私には関係ない。


パスロックを開けて事務所にはいると、将吾がすでに出勤していた。


ののしりの言葉が喉までこみ上げる。

が、朝からのいい気分を壊したくなかった。

どおせ、ふられたんだし、しかも向こうには新しい彼女までいるんだから

怒鳴り散らしたってお互い百害あって一利なしだよなぁ。

そんな計算が頭の中でかけめぐる。


損得で感情を押さえられるようになったってことは、

私も成長したってことかな。


そう考えられたら、ちょっと気分も浮き上がってきた。

そもそも、二股かけてた彼氏に未練なんかないでしょ?

自然と笑みがこぼれる。


「おはよう!」


中途半端に動揺して、腰を浮かせている将吾を気にしないで、私はいつも以上に明るく挨拶をする。


あなたに未練はないですよーってアピール。


「お・・・はよう。」

拍子抜けしたような、何ともいえない顔で将吾は腰をかける。

いつも通り、顧客リストをチェックしていると、

ちらちらと、将吾の視線を感じる。


私はそれを完全に無視をした。


YAHOOで山手線が人身事故で遅れていることを知る。

早くでてきてよかった!とますますうれしくなる。


そんな私に、将吾が水を差す。


「何にも言ってこないんだな。元気そうでよかったよ。」


はぁぁぁぁ?

テンション以上に一気に怒りのボルテージがあがる。


「は?なにそれ。」


将吾はおもしろくなさそうにモニターに視線を移す。

自分で、喧嘩売っておいてその態度かよ。


「彼氏に二股かけられてふられた30女は

喪服でも着て、家でさめざめ泣いていろってこと?」


「なにもそこまでいってないだろ!元気でよかったって言ったけだし!別に二股かけた訳じゃ・・・」


朝の幸せな気分は30分もしない内にぶちこわされた。


「二股じゃん。私とつきあっていた期間とかぶってるじゃん!」


会社ではビジネスライクに徹していた私たち二人なので、こんなところで喧嘩をするのは初めてだった。

社員が入ってきたら噂の的になるだろう。

でも、電車が止まっているためか、まだ朝が早いためかはわからないが、幸いにも事務所には二人だけだ。


「はっ、俺はお前とはとっくに終わってると思ってたんだよ。

そんな肉の付いた体でなにが「じゃん」だよ。

おばさんがかわいこぶってるなっつーの。」


将吾の言葉が心に刺さる。

なんで、こんな酷いとを言われなくちゃならないの。

ただでさえ酷いことをされたのに。


私は、泣くもんかと目頭にぐっと力を入れる。

将吾はしまったという顔でわたしを見ている。

そんな顔するぐらいなら、酷いことを言わなきゃいいのに。


営業をなめるな!!

年がら年中酷い事を言われ慣れているんだよ!

感情のコントロールができなきゃやってられない世界なんだから!


私は大きく深呼吸をすると、言い争いをやめてパソコンのYAHOOニュースを見つめてた。


「・・・ごめん」


将吾のつぶやきも無視をした。





悔しい!悔しい!

なにが悔しいって、あんなに酷いことを言われたのに、

酒を酌み交わして、さらに太ろうとしている自分にむかつくし、悔しい!



っがん!


「っとかって、ありえなくない?」


私はビールを一気に飲み干し、テーブルに盛大におく。

思い切りいい音がして、割った?と一瞬不安になる。

小心者なんです。意外と。


店長と三浦が苦笑いしながら同意してくれる。

そういう風にあからさまに慰められるとちょっと愚痴りづらいんですけど。


三浦はかつての同僚で、将吾と一緒に営業管理部を立ち上げた人間だった。

サバサバと話をする彼女とは同期の中でも特に気があっていて、私の姉御敵存在である。

もっとも、彼女は5年も前に退職してしまい、今は2児のママだ。


行きつけの居酒屋の店長は気のいいおっさんで、家から近いため、将吾とよく通っていた。

居酒屋おくむらの店長のため、愛情を込めてみんなおっさんと彼を呼ぶ。


おっさんは焼き鳥を焼きながら垂れた目をさらに垂らして、悲しいねぇとつぶやいた。


「意外だなぁ。将吾がそんなことするなんて。」

三浦は授乳中のため、ウーロン茶を飲みながらちょこちょこと軟骨揚げを摘んで食べている。


「なによ!将吾の味方をするの?!」

私はおっさんから新しいビールを受け取りながら、三浦に絡む。

「そうは言っていないわよ。女の敵よ!将吾は。

ただ、あいつ、草食系じゃん?ってかむしろ草じゃん。

二股かける度胸があったことにびっくり。」


なにげに酷いことをいっている。


確かに、豪快でざっくりしている私に比べると、将吾は繊細で慎重派だ。

職場でも、絶対につきあっていることをばれないように気を使っていた。

まぁ、それは私もだが。


「そんなに、私が太ったことが許せなかったのかなぁ。それならそうと、はっきり言えばよかったのに。」

急にビールがまずく感じ始めた。


「まぁ、将吾さんの気持ちも男としてはわかるんだけど。」

おっさんが将吾の肩を持つ。


「俺としては、別に彼女が太ったって問題ないんだよね。

むしろ、自分を男として見ていないことがイヤって言うか。

難しいんだけど、俺と会うんだからちょっとはおしゃれしてよっては思うかもね。

あとさ、太っちゃったってダイエットを一生懸命しようとしてる娘なら、

別に太っていてもいいんだよね。むしろほほえましいというか。」


私は自分の手に持っているビールのグラスに罪悪感が募ってきた。


「あーね。確かに太ってても可愛い子いるし。私、柳原とか、アジアンの馬場園とか好きだよ。」

三浦は子持ちとは思えない見事なプロポーションでいかの一夜干しを追加注文している。

こんなに食べても太らないなんて、詐欺だ。母乳マジックだ。


「えー、でも実際つきあうとして、あれはありなの?」


おっさんは一夜干しの端っこに、七味マヨネーズを乗っけながらありだなぁーと答える。


「別に太っててもおしゃれな娘なら、それが個性なんだなって思うよ。

ただ、まぁお仕事柄もあるんだろうけど、俺この店初めてからスーツ意外の松森ちゃんをみたことないや。」


脇で、三浦も、うんうんと頷いている。


「そうそう。あんたはいきなり、12キロやせることより、今よりましに見せること考えた方が現実的だって。で、今よりましに見せようと思ったら自然とやせるから。」


最初っからやせていた三浦にいわれてもと思わず疑ってしまう。


「まぁぶっちゃけ、やせたから美人ってわけでもないじゃん。そりゃ10キロも20キロもやせて綺麗になって、モデルとかになっちゃう人もいるけど、大多数が、デブでブスがただのブスに変わったって感じだろうしね。

やせてる人がみんな綺麗とは限らないじゃん。ただ、私だってやせれば綺麗なのよって考えながらやせる努力をしないのはあんまり宜しいことじゃないよね。」


おっさんは優しい顔で、将吾以上に私に致命傷を負わせた。言い返す言葉が見つからないんですけど。

ただ、慰めではなく至らない点の指摘を容赦なくしてくれた二人に、私は酷く感謝した。



私はその晩、真っ裸で鏡の前にいた。

こんな事をするのは、生まれて初めてだった。


生まれて初めて、自分の体と向き合った。





なんか中途半端なところで切れちゃった。

続きは日曜日かな。


八雲課長が出てこない。

余計な描写が多すぎるかも。

読みにくかったらごめんなさい。

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