表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

04 警告

「さっ、三郎?!」

 おばの声は裏返り、顔は青ざめていた。

 なぜなら、三郎が血だらけで倒れていたからである。

 そこには、血だまりもできていた。

 臆せずさやは近づき、三郎の首に手を当てる。

「残念だが、もう死んでいる……」

「そんな!」

「なんてこと……もしかしたら、次は私かもしれないわ」

 小さな声で、おばが呟いた。

 それを聞き逃さなかったさやは、足早におばに近づいた。

「『次は私』とは、どういうことですか?」

「なっ、なんでもないわ!」

「私も、部屋に戻らねば……」

 おばは焦ったように、その場を後にした。

 主人も、目をそらしたまま行ってしまう。

「冷たいな。使用人がひとり亡くなっているというのに」

 さやはため息をつき、三郎の死体に目をやる。

 すると、ゆりが震える声で聞いてきた。

「あの、三郎さんは……」

「このままにしておけないから、大きめの布を持ってきてくれるかい?」

「はっ、はい!」

 それから、ゆりが持ってきた布を、三郎の死体にかける。

 さやは目を閉じ、お経を唱え始めた。

 ゆりも、静かに手を合わせている。

 やがてお経が終わり、さやは錫杖を鳴らした。

 すると、ゆりが小さく呟いた。

「なんで、こんなことに……」

「これは、警告なのかもしれないな」

「警告?」

「目的は、この屋敷にいる者たちの始末だ」

「そんな……」

「彼女の憎しみは、相当なものらしい」

「彼女って……」

 ゆりが首を傾げていると、さやはもう一度錫杖を鳴らした。

「それは、本人に聞いてみようか!」

 さやが空を見上げると、黒い雲が広がっていく。

「邪気が強くなっているな……」

「えっ、空が……」

「どうやら、親玉のおでましみたいだね」

 錫杖を構え、さやは空を睨みつける。

 やがて、ゴロゴロと雷が鳴り始めた。

 そして、その音とともに、巨大な化け猫が降りてくる。

「シャーっ!」

 化け猫は威嚇するように、さやたちを睨みつけた。

「なっ、なんですかあれ!」

「あれは『あやかし』だよ。怪異とでも言うのかな」

「怪異?」

「三郎殿の体には、いくつも切り裂かれた跡があった」

「それって、もしかして……」

「恐らく、あの化け猫にやられたんだろうね」

「なっ、なんだあの生物は!」

 二人が話していると、主人が慌てて出てきた。

「突然暗くなったと思ったら、何事ですか!」

「おば上、あれを!」

「っ?!」

 おばも出てきたが、化け猫に驚き口を押える。

 すると、主人はさやに駆け寄ってきた。

「払い屋、早く退治してくれ!」

 主人は血相を変え、さやに怒鳴った。

 しかし、さやは冷たく、主人を見つめていた。

「あなたはまだ、私に伝えていないことがありますね」

「なに?」

「それを話してもらわないと、私も退治できません」

「私は、なにも隠してなどいない!」

「さくらのことですよ」

「姉のこと?」

 わけがわからず、ゆりは首を傾げていた。

 しかし、主人は違った。

 明らかに、顔が引きつっていたのだ。

「あなたはさくらと、なにかあったのではないですか?」

「しっ、知らん!」

 首を振る主人に、さやはため息をついた。

 そして、化け猫を指さす。

「あれは、さくらの怨念です」

「なっ……!」

「姉の怨念?!」

 さやの発言に、その場にいた全員が驚いた。

 すると、主人が頭を抱えてうずくまる。

「さくらが悪いんだ、私の求婚を拒んだから……」

「……」

「私は、なにも悪くない!」

「あぁ、もう終わりね……」

 わめく主人に、おばは大きく肩を落とした。

 その様子を、さやは無表情で見つめる。

「あなたは、ご主人から相談されたんですね」

「えぇ……」

「そして、三郎殿と共謀して、さくらの命を奪った」

「……私はやっていないわよ」

「そうですね。実際手を下したのは、三郎殿でしょう」

「あの女がいけないのよ……すべて、あの女が!」

 おばは怒鳴ったが、さやは動じなかった。

 ゆりは、真実を受け入れられずにいた。

 だが、涙があふれ、その場に膝をついた。

 さやは主人に近づき、冷たく見下ろす。

「あなた方のしたことは、許されることではありません」

「うぅ……」

「あとで、裁きを受けてもらいます」

 さやは錫杖をひとつ鳴らし、化け猫の前に立つ。

「ここからは、私の仕事です」

「さや様……」

「ゆり、そこの二人を連れて、少し離れていなさい」

「はっ、はい!」

 ゆりたちが離れたのを見届け、さやは化け猫を睨みつける。

『憎い……』

 突然、女の声が響いた。

 そして、化け猫の前に、さくらが現れる。

 しかし、その顔は怒りに満ちていた。

『憎い、すべてが憎い!』

「かわいそうに……今、楽にしてやるから」

 さやは錫杖をひとつ鳴らし、それをさくらと化け猫に向けた。

「私は、さや。今からお前たちを払う者だ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ