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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
八章 静養編

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王として?

エアリー・アーサー・ラインベルド七世。

これが今の私の肩書――。


玉座に座しているだけなのに、決断と責任を求められる。

王になって初めて、父上の偉大さに気付いた。


「サルベリア……ライザルド公国の動きに変化はありますか?」


参謀サルベリアは手にした手帳に目を走らせ返答する。


「今のところ目立った動きはございませんが、相変わらず、偵察兵が西側の国境付近をうろついています。たぶん、こちらの隙を窺っているのでしょう」


「……そうですか」

他国からの侵略。血徒による殺戮。

農村の壊滅に伴う食糧難と財政への圧迫。

市井からの嘆願。


「問題は山積みですね……」


「ただ、悪い話ばかりではありません。

ライザルド公国も血徒の刃が自分たちに向くことを恐れ、今は進軍の兆しは見せておりませぬ」


「姫様、最近、根を詰め過ぎですよ。

些末な実務はわたくしめが対応致しますゆえ、本日はゆっくりと休まれて下さい」


「ありがとう。サルベリア……」


サルベリアは前王ロメオスが王位についていた際は閑職に追いやられていた。


彼はバルメトロ公が征服していた際に再び登用した参謀だ。よく気が利き、未熟な王である私をここまで支えてきてくれた。


一番の魅力は自身が全て仕切るのではなく、私に教え、導くためのアドバイスを行うことが多い。

私が自分で考えて判断できるようになるために……。


皆の前では、リョウカに対しても毅然と振る舞わないといけない。カサンドラさんの訃報を聞いた時も私は何もできなかった。


「ふぅー。考えても仕方ありませんね。

たまには市場にでも行ってゆっくりしようかな……」

最近、自然と独り言が増えてきた。



私は簡素な衣類に着替え、質素なローブを身に纏う。


念のため、王だとバレないように変装する……。


市場は毎日賑わっている。

この活気を見るだけで王都がまだ息をしていると実感させられる。


「さてと……あれ?」

少し、めまいが……。


その時ふっと背中を支えられる。


「マイレディ。大丈夫ですか?」

私は彼の顔を見て溜め息をつく。


「まったく……貴方はいつも狙ったように懐に入りますね。それもラッキースケベとやらの力ですか?」


「ははは、たまたまですよ」

リョウカは儚げな笑顔を見せた。

最近の彼はどことなく無理をして笑うことが多い。


一年前の彼は自信に満ち溢れていた。

今は現実という刃が見えてきたからか、進むことに躊躇っているように感じる。


私も同じだ……。


「たまたまも、何度も続けば怪しまれますよ。

それに貴方はたまたまが多すぎます。

まるで、歩くたまたまですよ」


「なんですかその卑猥な……いえ、失敬……」


昔の子供っぽかった彼が懐かしくもあり、寂しくもある。どこか、あの無鉄砲な姿に惹かれていたのかもしれない。


私も今は盲目的に彼に縋っていた頃の私ではない。


――でも、彼は支えてほしい時に狙いすましたかのように、現れる。

本当に偶然なのか少し疑問ね。


「リョウカ……今日は近衛兵として、私に付き添いなさい! これは命令よ!」


せっかく王になったのだ。

職権乱用しないと損でしょ。


「はいはい、陛下。仰せのままに!」


彼は基本的には拒まない。

でも、それが彼の良いところでもあり、

弱点でもある。


誰にでも優しいのは、誰かにとっては優しくない。


でも、彼の優しさに救われている人が多いのも事実だから、一概に良いとか悪いとかの話ではないのだと思う。


「……陛下、考え事ですか?」

リョウカは自分のことには鈍化だが、他人のことには敏感だ。


「ええ、ちょっといろいろと立て込んでまして……」


「王様ってやっぱり大変なんですね……」


彼は基本的に相手を責めることはしない。

だから、皆、心の拠り所を求めて彼の元に集まるのかもしれない。


人は皆、必ず弱い部分が存在するのだから。


今の私はあの頃みたいに、あなたに憧れてはいない。


……私は本当にリョウカのことが好きなのだろうか?


「エアリー陛下。また考え事ですね……仕方ない。今日はとっておきの場所に連れてってあげますよ」


「えっ、リョウカ……待ってください」

彼は強引に私の手を引くと、足早にどこかへと向かう。



リョウカに連れられるがまま、王都を出て見晴らしの良い高台に出た。


「ここは……どこです?」

崖の手前に十字の墓碑が一つだけ建てられていた。


「ロメオス・アーサー・ラインベルド六世、ここに眠る……え、父上のお墓?」


「ああ、たまたまここら辺を巡回してたら見つけたんだよ……」


「……誰が建てたのでしょう? 確か父上はバルメトロ公に処刑された後、晒し首にされました。

私が王になってから王都内に王族の墓を建てたのですが……」


「……あとこれ、花が添えられているんですよね」


「本当ですね。比較的新しい」


「それと陛下、少しお聞きしたいことが」

リョウカは改まって私を見る。


「ラインベルド王家のミドルネームと

元騎士団長のアーサーの名前が同じなのって偶然じゃないですよね?」


「え、ええ……私も詳しくは知りませんが、

アーサーは父上が名付けたはずです」


「名付けた?」


「アーサーは元々、名も無い戦争孤児だったのです。それを、父上が拾い育てました……」


「そんな、アーサーがロメオス前王を裏切ったのか……」


「ええ、彼は昔から感情の読めない人でしたから。ただ、騎士団や民からの支持は厚かったですよ。

父上も信頼してましたし……」


「アイツにまた会ったら問い詰めてやる!」


「そうですね。私も一発引っ叩いてやりたいです」


「いえ、陛下それはご褒美になります。それなら、このわたくしめを引っ叩いてください」


「ふふ……相変わらずですね、貴方は」


「それより陛下、見せたかったのはここじゃなくて、もう少し崖先に来てください」


「え、ちょっと……リョウカ!?」


彼は私を抱えると突然、肩車をする。


驚いたのも束の間、夕日に焦がされた王都が視界いっぱいに広がっている。


「わぁー、綺麗!」

月並みの言葉しか出てこないけど、本当に綺麗だった。


「どうです。陛下?」


「ええ、素晴らしいです!」


私は思い知った。守るべきモノの大きさを……。

これからも、民を守るためにもっと精進しないと。


そしていつの日か……。

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